――これからの時代、産業発展の鍵となるのは合理化だ。 大河内正敏がその信念に到達したのは、明治の末期、私費で挑んだドイツ・オーストリア留学が寄与するところ大という。 本人の口から語られている、 「工業用アルコールの値段ひとつ比較してもわかることだ」 と。 (Wikipediaより、大河内正敏) 当時の日本で最も廉価にアルコールを醸造(つく)っていたのは台湾であり、これは彼の地が「砂糖の島」であったのと無関係では有り得ない。つまり製糖作業の副産物たる糖蜜を原料にとっているからであり、この糖蜜というもの、製糖業者にしてみれば碌すっぽ使い道のないくせに放っておくと腐敗して、悪臭を放ち胸をむかつかせる…