「逢はぬ夜を 隔つる中の衣手《ころもで》に 重ねていとど 身も沁《し》みよとや」 〜幾夜も会わずにいて隔たってしまった私たちの仲ですが、 独り寝をする衣の袖に、さらに 衣の袖を重ねて より疎遠になれとおっしゃるのですか 【第6帖 末摘花】 翌日命婦が清涼殿に出ていると、 その台盤所《だいばんどころ》を源氏がのぞいて、 「さあ返事だよ。どうも晴れがましくて堅くなってしまったよ」 と手紙を投げた。 おおぜいいた女官たちは源氏の手紙の内容をいろいろに想像した。 「たたらめの花のごと、三笠《みかさ》の山の少女《をとめ》をば棄てて」 という歌詞を歌いながら源氏は行ってしまった。 また赤い花の歌であると思…