政治学は経験科学である。これは古代ギリシアの時代、アリストテレスの頃から言われていることで、本を読み、頭の中で論理的に考え出すことよりも先に、現実の政治をつぶさに観察しなければならないということである。 学者にも二つのタイプがある。書斎派と路上派である。書斎派は文字通り、そこに閉じこもって学識を深めるのに対し、路上派はそこに行き交う人々に取材して知見を得る。どちらが優れているという訳ではない。しかし、最後に断片的な情報を総合するのは、その人自身の経験である。南原繁は「政治学に先生はない。……おのがデモンに聞け1」と言った。経験とはデーモンのように、善悪をないまぜにした、言葉にしがたい、欲望、希…