前稿(1)で,「四又」で「まっ白な貝細工のやうな百合の十の花のついた茎」に相当する百合の花は自然界には存在しないということを報告した。では,〈はだしの子供〉あるいは国王が〈正徧知(しょうへんち)〉に渡そうとした1茎の「四又」で「十の花のついた百合の花」とは何だろうか。最近,賢治研究家である朴(2021)は,この「十の花のついた百合の花」とは,百合が純粋,純白,潔白,真実,誠実を象徴していることかから,「奇麗な心」の象徴であり,この「奇麗な心」を形にしたものだとした。私も朴のこの解釈に賛同する。ただ,朴は「奇麗な心」を形にすると,なぜ「四又」で「十の花」のついた百合の花になるのかについて十分には…