ああ!気の毒な青年よ。きみの蔵書を火に投じ、絵をさき、塑像をくだき、ラファエルやホメロスやフィディアスを忘れてしまいたまえ。おろかしいきみの情熱はどういう効果をもたらすのだ。謙虚な心をもって、きみの愛するものを愛したまえ。 ゴーチエの短篇小説。題名はギリシア神話の『イアソンの金羊毛』とでもすべきところであるが大胆な翻譯である。アントワープの大伽藍。ルーベンスの「十字架の降下」に描かれたブロンドの美女、マグダラのマリアに惚れてしまった審美的な男。彼はある時、マリアと同じ金髪を持った町人の娘を見つける。 アントワープ(仏語読みすればアルヴェルス)の地名が出てきた時、すぐさま『フランダースの犬』が浮…