③ 父の死後、近代日本に不適応な兄たちの人生と自身の将来― 母の死後、故郷金沢を離れて上京する 母が亡くなって九ヶ月後の1891(明治24)年1月、貞太郎(満20歳)は家を売り払って借金を返し、金沢を離れます。一時、神戸にいた次兄の亨太郎を頼りましたが、この年5月に上京しました。 上京は、生活を立てるための実学(実際に世の中に役立つ学問)を学ぶのが目的で、亨太郎の紹介で本郷駒込西片町の旧加賀藩の学生寮・久徴館に落ち着きました。 6月からは英語をさらに勉強するつもりで、東京専門学校(後の早稲田大学)に入学しました。ところが、教師の坪内逍遥の英語が貞太郎には不満でした。 (この年の六月には前年四高…