水晶の座:牧逸馬 1927年(昭2)7月~12月 雑誌「女性」連載。 1933年(昭8)非凡閣、新選大衆小説全集 第3巻 牧逸馬集 所収。 牧逸馬(1900~1935)は林不忘や谷譲次の筆名でもそのジャンル別に分けて作品を書いた。タイトルの「水晶の座」とは、豪州の砂漠の僻地に住む部族に伝わる美と若さを保つ秘法を記した書付のことだという。世界的な探検家で理学博士でもある山岸氏は満場の講演会場で猛毒の吹き矢で殺害される。目の前で見ていた探偵作家の串戸が現場に駆け寄り、その犯人探しに加わる。その場にいた夫人の洋子もその後の行動を共にするのも珍しい。情景描写に昭和初期に流行した「新感覚派」的な表現が顔…