🌺【源氏物語 26 第2帖 箒木15】 「違うわけがないじゃありませんか。 恋する人の直覚であなただと思って来たのに、 あなたは知らぬ顔をなさるのだ。 普通の好色者がするような失礼を私はしません。 少しだけ私の心を聞いていただけばそれでよいのです」 と言って、 小柄な人であったから、 片手で抱いて以前の襖子《からかみ》の所へ出て来ると、 さっき呼ばれていた中将らしい女房が向こうから来た。 「ちょいと」 と源氏が言ったので、不思議がって探り寄って来る時に、 薫《た》き込めた源氏の衣服の香が顔に吹き寄ってきた。 中将は、これがだれであるかも、何であるかもわかった。 情けなくて、どうなることかと心配…