源氏は瘧病《わらわやみ》にかかっていた。 いろいろとまじないもし、 僧の加持《かじ》も受けていたが効験《ききめ》がなくて、 この病の特徴で発作的にたびたび起こってくるのをある人が、 「北山の某《なにがし》という寺に非常に上手な修験僧がおります。 去年の夏この病気がはやりました時など、 まじないも効果《ききめ》がなく困っていた人が ずいぶん救われました。 病気をこじらせますと癒《なお》りにくくなりますから、 早くためしてごらんになったらいいでしょう」 こんなことを言って勧めたので、 源氏はその山から修験者を自邸へ招こうとした。 「老体になっておりまして、 岩窟を一歩出ることもむずかしいのですから…