今年もお盆がやってきた。といっても、数馬は帰る故郷が令和であるし、お盆だからといって、特に何があるわけではない。ということで、道場で稽古をしている。門弟の御小人目付(おこびとめつけ)の真鍋平九郎が道場にやってきた。彼にもお盆はないようである。「先生、拙者の話を聞いてくださいよ」と、真鍋は言う。他に門弟が来ていないので、数馬を独占である。「拙者はいま、さる大目付の監視をしているのですが…」「ほう」「この大目付は諸国を歩き回っているんですが、特に上役に報告する行状がないのです。なので報告書には“特に何も無し”と書くのですが、上役がこれが気に入らないようで…“真鍋! この報告書の山を見よ! みんなこ…