先日、原尞の新作『それまでの明日』と奥泉光の新作『雪の階』を読んだ。どちらも殿山泰司風にいえば「クイクイと読ませる」現代ミステリだったが、正確にいえばミステリというよりも作者一流の「ファンタジー小説」として楽しんだように思うし、どちらもかなり難しいところに突っ込んできた作品だなぁ、とも思った。特に印象に残るのは「人称」による語りの効果。なるべくネタバレにならぬ程度に感想をメモしておきたい。 原尞『それまでの明日』(早川書房刊) 原尞といえばレイモンド・チャンドラーのフォロワーであり、14年ぶりの新作『それまでの明日』はシリーズキャラクターの探偵・沢崎が「私」として語る一人称で書かれている。チャ…