小雨だ。 空は泣くほどでもなく、笑うほどでもない。 それでも地面は、確かに暗い色に変わりはじめている。 人の足取りは、途端に速くなる。 濡れているわけでもないのに、 濡れる未来を避けるように、人は急ぐ。 まだ何も起きていないうちから、 起きるかもしれない不快を先回りして嫌うのが、 人間らしい。 傘を三本も持って歩く人。 一本しかないのに、使わない人。 畳んだまま振り回す人もいれば、 さした瞬間から濡れている人もいる。 色んな人が行きかう。 肩をすぼめる人、 足元ばかりを見る人、 空を睨んで、ため息をつく人。 小雨は、人間の癖をよく映す。 ほんの数滴で、こんなにも忙しくなるのだから。 通りの向こ…