就寝を促してみても聞かぬ人を置いて、 歎息《たんそく》をしながら源氏は枕についていたというのも、 夫人を動かすことにそう骨を折る気にはなれなかったのかもしれない。 ただくたびれて眠いというふうを見せながらも いろいろな物思いをしていた。 若草と祖母に歌われていた 兵部卿の宮の小王女の登場する未来の舞台が しきりに思われる。 年の不つりあいから先方の人たちが 自分の提議を問題にしようとしなかったのも道理である。 先方がそうでは積極的には出られない。 しかし何らかの手段で自邸へ入れて、 あの愛らしい人を物思いの慰めにながめていたい。 兵部卿の宮は上品な艶《えん》なお顔ではあるが はなやかな美しさな…