北海道の比羅夫という駅には、駅舎を用いた民宿が実際にあるらしい。 駅舎といっても廃駅ではなく、JR函館本線の現役の駅で当然列車も停車する。「駅の宿いらふ」という。 さて、本書である。最初はタイトルを見て、終電が去った駅で野宿しながら旅をする話かと思ったが、その比羅夫駅の宿を舞台にした小説である。 あとがきのよれば、作者も実際にこの宿に泊まったことがあるらしく、駅の宿の描写は旅のガイドブックのように正確らしい。ただし登場人物は完全にフィクションで、そこで起こる物語も、肩の凝らないかわいらしいお話だ。 作者は「電車でGO!」というゲームの制作に関り、その後小説家に転身。代表作に、少年向けの鉄道小説…