村上春樹の作品は私の高校時代のすべてです。高校時代に味わうべき感情のほどんどを村上春樹の小説で味わったと行ってもいいほどに。当時『ノルウェーの森』は大ベストセラーだったけど,私はどちらかというと初期の三部作の中の、主人公の不完全な偏りのあるキャラクターが好きだった。 そして一番何度も読んだのが『ダンスダンスダンス』。主人公の「ぼく」は,やはり不完全で偏狭な性格。世間と距離をおき,自分の生き方だけを守っているようにも思える。適切な距離を保って運転しているみたいに。 けれど,「ぼく」はだれにも指図したりしないのに,私をぐいぐいひきつけてやみまなかった。 「物事の良い面だけを見て,良いことだけを考え…