✿学生時代、先輩に勧められて初めて高見順を読んだ。小説「胸より胸に」。今やあらすじさえ覚えていない有り様だが、ただ、この高見順という人には「悲しみ」が関係していると思った…ことだけは覚えている。小説は他に2つ読んだだけだったが、大学の図書館にあった「高見順全集」で詩を読むようになった。「詩」なるものをちゃんと読んだことのなかった私には誰とどう比較してということはなかったが、その詩はその後も私の中に残っていた。大学時代、気に入った言葉を書き留めるノートに「胸より胸に」の一節と、詩のいくつかを書き写している。しばらく遠ざかっていたが、30代になってからだろうか、コンパクトにまとめられた詩集を買って…