侍従は名残《なごり》を惜しむ間もなくて、 泣く泣く女王《にょおう》に、 「それでは、今日はあんなにおっしゃいますから、 お送りにだけついてまいります。 あちらがああおっしゃるのももっともですし、 あなた様が行きたく思召《おぼしめ》さないのも 御無理だとは思われませんし、 私は中に立ってつらくてなりませんから」 と言う。 この人までも女王を捨てて行こうとするのを、 恨めしくも悲しくも末摘花は思うのであるが、 引き止めようもなくてただ泣くばかりであった。 形見に与えたい衣服も皆悪くなっていて 長い間のこの人の好意に酬《むく》いる物がなくて、 末摘花は自身の抜け毛を集めて鬘《かずら》にした 九尺ぐら…