晴。 午前中ずっとぼーっとする。 昼すぎ、珈琲工房ひぐち北一色店。早く傾いてきた日差しの中で、前に真っ直ぐに伸びる田舎の幹線道の、フロントガラスからの秋の景色が美しい。完璧な世界だと思う。 中公文庫新刊の、富士正晴『不参加ぐらし』を読み始める。富士正晴さんは、初めて読むのではないか。ずっと気になってはいたのだが、文庫本の人であるわたしは、あまり文庫化されていなかった富士さんに、これまで縁がなかった。いや、それでもいくらかは文庫本で出ていたような気もするので、まあ、若い頃のわたしはクソ生意気だったから、富士正晴ごとき眼中になかったのかも知れない。いずれにせよ、かつてのわたしに、このおもしろさはわ…