膠原(註:コラーゲンのことです)が體内で劣化すると、肌は張りを喪い皺を惹起し、腱は精緻な密度を保てず運動能力が衰弱します。だんなも敗色濃厚にて老化は歩度を詰める気配はありません。ために、食による補完をと思い立ちました。 ご賢察の通り、大失策です。先ず加熱により膠原はゼラチンに変成し、加うるに消化の過程でアミノ酸に分解されますから、効果は推して識るべし。それで良いのです。抑、美味しい鍋を食べる逃げ口上なのですから。 鮟鱇に鱈の白子、種種のくさびらで料って戴きます。だんなは大口開けて俟っているだけですけれど。 鮟鱇の骨まで凍ててぶちきらる 加藤楸邨の句です。凄みと共に違和感を憶えます。江湖によく識…