歌舞伎座第三部は『鳴神不動北山櫻』の三年ぶりの上演。そして、團十郎襲名が延期になった市川海老蔵の、二年ぶりの歌舞伎座出演でもある。その初日を観る。 海老蔵が現在のかたちにまとめあげて上演してから七回目の上演となるが、前回までは四時間を要する本格的な通し上演であったのにたいして、今回は新型コロナウイルス対策ということで二時間強にまとめられた。具体的には「大内」「木ノ島明神」といった場がカットされ、もともと独立した作品としても上演頻度の高い『毛抜』『鳴神』に大枠をつけてつなげたという印象になっている。準備期間もなかっただろうからおおくは望めないのは承知のうえで、二時間の作品としてもうすこし密度ある…