その手紙が届いたのは、昼すぎのことだった。常連もまだ誰も来ていない時間。マスターは郵便受けに目を落とし、ふと眉を上げた。 差出人不明。けれど宛名は、はっきりとこう書かれていた。 「鈴の音の手紙を読んでくださった方へ」 いつもなら、届くのは相談や静かな叫び。でも今日は、**“返事”**だった。 夜になり、窓際の席に彼女が座った。「こんばんは。今日は、なんだか落ち着かなくて……」彼女は、数週間前にこの店で手紙を書いた人だった。 マスターは封筒を差し出す。彼女は目を見開く。 「──えっ? これ、返事……?」 手が震えるのを抑えながら封を切る。中には丁寧な文字で綴られた便箋が一枚。 “あなたの想いに、…