画:高野竜「黒菅全図」 昨年から平原演劇祭のリーディング公演、#演劇前夜で高野竜が取りあげているのが、田宮虎彦(1911-88)の幕末に幕府側についた架空の藩、黒菅藩を題材とする連作小説だ。田宮虎彦は現代ではほぼ忘れられた作家だと言ってもいいだろう。私は名前をどこかで見たことがあるくらいで、田宮虎彦の小説を読んだことはなかった。幕末の佐幕派・尊皇派の戦いについて扱った文芸作品、ドラマ、映画は数多いが、私は個人的にはこれまでこの題材にはまったく興味を持てなかった。二年ほど前に、別の読書会で吉村昭の『天狗争乱』を読まなければならなかったことがあったのだが、とにかく読み通すのが苦痛でならなかった。 …