元禄7年4月13日。風が吹く。近頃、紀州の衆が鳴海に泊った際、手討を仕損じると。泊りの前、主人は駕籠に乗り、僕と鑓持ちはこのあたりでどうだと話していた。鑓持ちは泊りも近いのでそこまで我慢しようと言った。主はこれを聞いて大いに腹をたて、鳴海の宿に着くと身繕いをして僕を呼び、座敷の尻差し(つっかい棒)をかわせた。そして後ろから抜き打ちにした。僕は驚いて勝手へと逃げ行くが、主は後を追いかけていった。庭では若党が水風呂に入っていたが、丸裸で飛び出し、主を取り押さえて抱きかかえようとした。主は怒ってお前もあいつに組するのかと切り払うと、若党もまた門外に逃げ去った。そのうち中間が瀬戸口へ出ていくが、主はま…