正徳2年3月12日。今月2日の黄昏、長嶋町武藤安左衛門の家の前で侍の中間と乞食が争い、中間を溝へ蹴り落した。町人が出て来てあれこれするも、乞食は町人をつかんで放り投げた。その間に中間は起きて上がり、一太刀切りつけてどこかへ行ってしまった。乞食を町人は棒で打ちつけて追いかけた。乞食は巾下浅間まで行き、少しの傷であったが一両日して死んでしまった。少し前、河村丹左衛門門の外で青物売が道を塞いで休んでいたのを、押の者が通りかかり𠮟りつけた。側にいたこの乞食は文句を言った。押の者は怒って物売りの棒を取って乞食を叩くと、反対に乞食が棒をねじり取り、江川へ押し者を放り投げて去って行った。押の者はようやく這い…