元禄15年閏8月1日。夜亥半(午後10時)過ぎ、永井清左衛門の僕伴右衛門が座敷の横4帖敷きの廊下に忍び込んでいた。伴右衛門は大男で少しばかり力持ちの奥州の者であった。清左衛門が寝ようとしたので女が蚊帳を吊っていると、廊下で音がしたので清左衛門に知らせた。すぐに行灯を持って清左衛門は見に行くと、角に縁取(縁取ござ)が立てかけてあった。清左衛門はあの縁取は昼からあったのか、鳶口で起こせと言った。グズグズしているうちに縁取を捨てて伴右衛門が出てきた。清左衛門がそれを見て伴右衛門だなと言うと、脇差を抜いて清左衛門の右腕を切りつけた。しかし、少しも切れていなかった。清左衛門は打ち落とされたと思い、左の手…