朝の蒸し暑い通勤電車の中で、健太は窓の外を眺めながらため息をついた。「このままでいいのだろうか」―毎日のように頭をよぎるその疑問が、今日もまた心を重くする。 同期の田中は先月、念願のIT企業に転職していった。「やりたいことが見つかったんだ」と嬉しそうに語る彼の表情が、妙に眩しく見えた。健太も今の会社に不満を持ちつつも、肝心の「やりたいこと」がかすんで見えない。まるで、先が見えない霧の中をさまよっているような感覚に陥る。俺はいったいどこに向かって歩いているのか?答えが定まらないまま、健太は駅の改札を出た。 ---------------------------------------------…