これまで抽象化された物語を描いてきた作家にしてはめずらしく、本作は特定の場所や時間を具体的に想起させる記述になっています。さらに、主人公が口にした恨み節がその後の阪神淡路大震災に結び付けられてセンセーショナルに受け止められるなど、何かと話題となった作品をご紹介します。 【要約】 結婚式に招待され12年ぶりとなる古い街へのセンチメンタルな旅。 「十二年前と何もかもが同じだ」と自分に言い聞かせる「僕」。 しかし、思い出の詰まった海岸線は埋め立てられ、海は彼方に押しやられていた。 『少年の魂』 おい、こっちだよ、こっち。ほら俺だよ、覚えてない?君にぴったりの良い場所があるんだ。一緒に来いよ。きっと気…