先日、テレビ番組に出演されているのを何気なく見たからか、歌人の俵万智さんの本を初めて手にしました。 還暦を迎えた俵さんが、三十代の頃に綴ったエッセイ集『101個目のレモン』は、あらゆる物事に対する彼女の思いが凝縮された、とても面白い一冊だったのですが、ある部分を読んだ時、私自身が経験したちょっとした悪夢を思い出してしまいました。 それは “言葉の思いこみ” と題された中でのことです。 言葉の間違いは、一度思いこんだら、なかなか気づかない。しかも「うっかり」というよりは、大げさに言えば本人の知性に関わることなので、指摘するほうも、気軽には言いがたい。 俵さんの、それほど親しくはないものの、立派に…