1946(昭和21)年5月3日に開廷した極東国際軍事裁判、通称「東京裁判」では戦争犯罪を行ったとされる軍人、政治家28人がA級戦犯として起訴された。太平洋戦争開戦時の首相・東条英機や陸軍の重鎮である荒木貞夫、国際連盟脱退を表明した松岡洋右など、いずれも日本を惨憺たる戦いに巻き込んだ当事者ばかり。このうち病死や精神障害による訴追免除者を除く25人に有罪判決が下され、うち7人が絞首刑となった。 彼らは戦勝国11カ国で構成される裁判官によって裁かれたが、一人、重大な戦争犯罪を犯したにもかかわらず、GHQとの取引によって訴追を免れた軍人がいる。石井四郎――日本の細菌戦研究を指導した陸軍軍医だ。 石井が…