爆音鳴り響く中 その御老人は必ずいつも最前列にひとり陣取り 開幕から終演まで楽しげに ゆっくりと頭を揺り続けるのだった おじさん と私たちは皆 彼のことをそう呼んだが おじさん と言うほど若くはない ステージの照明が彼のハゲ頭にピカピカ反射していた 話しかけた者もいたようだが おじさんの素性どころか 名前も 何故いつも聴きに来てくれているのかも噂にならない 聞き出せた者が誰もいなかったのか もしくは意思の疎通すら困難だったのか YA◯AHAビル最上階の小ホールは 我等が月例会の会場であった 私が大学の頃に所属していたエセ軽音的研究会は 近隣他大学の似たような軽音系サークルや同好会と徒党を組んで…