太宰治の小説「おさん」。これは、ものすごく端的にいうと、夫に浮気され、でもなかなか夫への思いが捨てきれない女性が一人称でその気持ちを語る物語だ。これに、能の「井筒」の「序の舞」のお囃子、さらには、アストル・ピアソラのSoledadが重なる。この「井筒」とは、帰らぬ夫を待ち続ける女の例を描いた作品とのことで、井筒の主人公の霊とおさんに共通点を見出したからこそ、これに「孤独」というピアソラの曲を重ね合わせた今回のコラボレーションになったのだと思う。解説によると「井筒」というのは世阿弥の最高級の作品だという。ただ、お能をわかっている人なら、舞台にススキをあしらった井戸の作り物を認めれば、井筒が上演さ…