佐藤洋二郎『Y字橋』(鳥影社、2022) あの人は、あの後どういう人生を送られたのだろうか。お幸せだったろうか。今もどこかで、おすこやかにお過しだろうか。 一度だけでも、お会いしてみたい気もする。相手が女性の場合は、とくに。 伝手をたよって手蔓をさぐり、足を棒にすれば、可能かもしれない。あるいは興信所のような調査機関に依頼すれば、容易なのかもしれない。 だが、やめておこう。やはり野に置け蓮華草ということもある。『舞踏会の手帖』ということもある。だいいち、当方がすっかりみすぼらしく醜い老人となり果てた今、先方だって興醒めだろう。ご迷惑ですらあろう。 老人は、過去のピースをモザイク・タイルのように…