なんとなく眠れなくて、時計に目をやると午前1時になろうとしていた。枕元においたままの古いラジオが目に入った。 スイッチを入れてみるとイヤホンから流れてきたのは受験勉強しながら聞いていたあの番組だった。 「この番組、まだやってるんだ」 ふと、予備校時代の事を思い出した。 誰にも言えないほんの小さなエピソードを。 予備校時代に同じコースで気になっていた女の子が、友達と昨日の番組の話で盛り上がっているのを遠目で眺めていた 。 笑顔のとっても素敵な子だった。 だけど 名前も知らないどこの学校出身で どこの大学を目指しているのかも知らない。そんな事は知りようがなかった。 浮かない浪人生の僕には話しかける…