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Chikirinの日記 RSSフィード

2011-11-21 今、日本で最も時代遅れな団体=「経団連」

「ポジショントークという言葉の意味が知りたければ、経団連会長のインタビューを見ればいい」、それくらい最近の彼らの発言は、自己の利益に誘導的です。そもそも業界利益団体とはいえ、昔はここまで露骨ではありませんでした。彼らもいよいよ余裕がなくなってきたということでしょう。

製造業が悪いとは言わないけれど、日本が過度の製造業依存から抜け出す必要性があることを、ちきりんは何度も書いてきています。最近の経団連はなにかというとすぐに「日本から出て行かざるを得ない」と(政治家や国民を)恫喝するけれど、狼少年みたいなことばっかり言ってないで、出て行きたければ出て行けよ!って感じです。

「日本の雇用が維持できるよう製造業を大事にしろ!」とか言っておいて、景気がよくなれば「人手不足だから、単純労働者の移民を受け入れろ」と言い出すなんて、詐欺師以外の何者でもありません。


中国など新興国の工業化に伴い、日本の「脱・製造業依存」がこれだけ言われながら、何年もの間全く話が進まない最大の理由は、製造業に代わる“日本を代表する産業”が他にひとつもでてきていないからです。

これに関して、政治家と官僚は過去10年ずっと「環境、農業、医療の分野で成長戦略を!」と言っていますが、これは「環境、農業、医療の分野に補助金をより厚く分配し、これまで以上に天下りを送り込みたい」という意味です。そんなんで基幹産業になんてなるはずがありません。

日本において「製造業」だけが基幹産業であるという状況を変えるには、早急にそれなりの対抗馬を育てる必要があるのに、政府・官僚は全く当てにできないのです。


一方、民間人の中にはこの点に関して、アメリカやイギリスを手本にし、IT産業や金融産業を押す意見も多いのですが、前に「日本に金融業は無理!」というエントリで書いたように、ちきりんはこの国に金融業が向いているとは思えません。

IT産業については、「金融業よりは相当マシだが、まだまだこれから」という段階でしょう。この分野、日本でも若い人にはそれなりのリテラシー、技術力、発想力があると思います。けれどそれが大企業、ひいては大産業に育てていけるレベルかというと、そこまでいくにはまだ相当のジャンプが必要です。

なんといっても、まだ「世界で売ることに成功している企業」が、任天堂、ソニー以来出て来ていません。これらは「テレビ時代のゲーム会社」であって、「ネット時代のゲーム会社」ではありません。「日本のテレビ」が世界で勝っていたように、日本のテレビゲームも世界で売れていました。では、日本のネットサービスが世界で売れるのか?、今はまだ何も見えていません。

一方、世界に名前の通ったIT系の大企業の方は、金融業界の大企業と同じくらい将来性がありません。“既に雇ってしまった正社員を雇い続けるために必要な仕事量”を確保するだけでも、これから数十年、茨の道が続くでしょう。


ITもゲームもそうですが、日本はサークル的に小さなグループのメンバーのために高度に作り込むサービスが大好きです。そういうビジネスはニッチグループに熱狂的に支持される価値は提供できるけれど、国の経済を支えるレベルにはなりえません。

国を支えるビジネスになるには、規模が必要なんです。そのためには「普通の人に売れること」と、「海外で売れること」が必須です。そういう意味では、テレビや音楽などエンターテイメント産業はちょっとしたヒントになるかもしれません。AKB48制度も海外に出始めていますが、この業界には山口百恵さんが活躍していた頃から「日本+アジアでも売る」という慣習があります。この感覚は、ネット時代のエンタメ企業でも大いに参考にできるんじゃないかと思います。


んが、


製造業の代替産業として、ちきりんが一番可能性があると思っているのは「ホスピタリティ産業」です。

高いサービスレベル、正確なオペレーション、気持ちの良い対応、そういった“おもてなし”系のスキルが中心価値のひとつとなり得るホスピタリティ産業には、様々な分野が含まれます。

旅行業、小売り業、外食産業、調理法、輸送・配送業、美容業界、事務手続き業、修理業、クリーニング業・・・、どれもこれも「モノを作っていない産業」です。昭和のおじさんは、日本の「モノ作り産業」に競争力があるといいますが、ちきりんから見れば、日本はこれらの「モノを作らない産業」も相当すごいです。


しかもこれらの産業の多くは、「ニッチなグループの中での高付加価値」ではなく、規模を追求することに経験と親和性があります。多くの小売り、外食産業はチェーン店システムですよね。店舗数、規模が大きくなればなるほど利益率が上がるビジネスであり、こういうのは海外展開に非常に向いています。

そしてこの分野、日本は圧倒的な競争力があります。アメリカのスタバで、スタッフの態度があまりにあまりなため、ゲンナリしてコーヒーが不味く感じられた経験のある人も多いはずです。にこやかにきびきび対応しても、ムスッとぞんざいに対応しても労働時間は代わりません。けれど「客が感じる価値」は圧倒的に違います。日本は「ホスピタリティの生産性」が非常に高い国なんです。


いまや経団連は、重厚長大産業への利益誘導団体であることを隠そうともしなくなりました。彼らが自然エネルギーなんて全くやる気になれないのは、中心メンバーである重電会社も電力会社もそんなものでは儲からないからです。特定産業の利益団体が存在すること自体はかまいませんが、(特定産業の利益しか見てないくせに)「日本の経済界の代表」のような顔をされては迷惑です。

ちきりんはそろそろ、「ポスピタリティ産業のための経済団体」も作ったほうがいいんじゃないの?、と思っています。そして業界の地位をあげていくよう努力すればいいのです。

今、日本の一流大学の卒業生で、こういった産業に就職する人はまだまだ圧倒的に少ないです。彼らは未だに製造業の方が、もしくは、過去一度もグローバル競争力をもったこともない金融業の方が、「格の高い産業」だと思っていたりします。学生が世の中を知らないのはいつものことですが、産業界側にも伝えるための努力が必要でしょう。


だからホスピタリティ産業のための団体を作り、彼らも、自分達に有利なポジショントークをどんどん繰り広げればいいんです。政治献金をして政治に影響を与えるのもいいと思います。エコカー減税とかに対抗して、「ネット予約減税」とか「外食減税」を勝ち取るべきでしょう。

オリンパス事件でも明白であったように、今は日経新聞も粛々と経団連の御用新聞を勤めています。けれどメディアなんて広告費さえ払えばすぐにすり寄ってきます。利益を出し、広告量を増やせば、新聞もテレビも尻尾を振ってついてくるんです。


そうやってまずはとにかく「ホスピタリティ産業」の地位をあげましょう!


新しい経済団体の名前はどーすんだって?

うーん、そんなことは自分のアタマで考えて下さい。まっ、とりあえず今の経団連には「日本経団連・昭和組」とでも名前を変えて頂いたらいいんじゃないでしょうか?


そんじゃーね。