シートン俗物記

非才無能の俗物オッサンが適当なことを書きます

自滅する沼津 鉄道高架事業の大失策

商店や病院を中心市街地に集めるコンパクトシティー推進の動きが活発だ。沼津駅周辺の活性化を推進する「沼津駅の高架化を実現する市民の会」が描くのは、便利で安全、さらには老若男女が街歩きを楽しめる活気のある中心市街地。あらためて多くの市民に新しいまちづくりへの参画を呼び掛けている。
静岡新聞 2017年3月31日朝刊 沼津駅の高架化を実現する市民の会 34面全面広告 より引用)


以前に、沼津市の鉄道高架事業を批判したエントリーを載せましたが、その後に(鉄道高架事業の)賛成反対双方の意見を聞く、としていた大沼市長が公約を翻して事業推進に踏み切ったために事態が変化しております。で、賛成派から出てきたのが、上記の意見広告です。


自滅する地方 沼津・三島・伊豆編
http://d.hatena.ne.jp/Dr-Seton/20150712/1436692086


自滅する地方 ちょっと回答編
http://d.hatena.ne.jp/Dr-Seton/20150830/1440936519


沼津市の鉄道高架事業は止めるべき
http://d.hatena.ne.jp/Dr-Seton/20161029/1477707931


正直なところ、“なに言ってんのかわかんない”というのが本音です。鉄道高架化を進めてコンパクトシティー化、というのがまず意味不明です。この辺はすでに以前のエントリーで指摘しましたが、駅南北の“自動車交通”をスムーズにすれば、より中心市街地の衰退は進みます。駅南北で衰退の度合いが違う(駅北は完全に衰退、駅南は辛うじて駅北よりマシ)、のが“郊外大規模商業店舗への自家用車アクセスが容易ではない”ことを無視するべきではありません。


いい加減、「コンパクトシティー」という言葉も考え直すべきかもしれませんね。小さく纏めれば手段は問わず(例えば駅前にタワマンをドカドカ建てる、というのも間違った方策です)ではなく、人がクルマに頼らずに生活を営めるスケールの街とすること、が重要なのです。今後、時間があれば論考を載せていくつもりではありますが、私としては、「ヒューマンスケールシティ(タウン)」という言葉を提唱したいと思います。


ですので、“商店や病院を中心市街地に集める”という以上に、自動車交通の抑制こそが重要です。そうでなければ、一層の郊外化が進み、中心市街地は衰退します。今まで全国各地で進行してきた事態であって珍しくもありません。同じような政策(鉄道高架事業)を行いながら中心市街地を活性化することなど不可能だと判りそうなものです。
そこで、「沼津駅の高架化を実現する市民の会」はアクロバティックな手段に打って出ました。

市民の会は1月、昨年11月にオープンした「中目黒高架下」を視察した。この新スポットは、東急東横線東京メトロ日比谷線中目黒駅周辺に位置する。(後略)


高架化事業後の像として、中目黒、を取り上げることにしたのです。中目黒、ですよ?関東住みたい街ランキング2016で11位、東京23区の街と人口流出の続くパッとしない地方を比較する、って無意味でしょう。


関東 住みたい街ランキング2016
https://suumo.jp/edit/sumi_machi/2016/kanto/


このほか、三鷹−立川間とか、西荻窪−吉祥寺間を取り上げています。
まったく意味が分かりません。鉄道高架を行った地域は静岡にも静岡駅周辺や浜松駅周辺があります。静岡駅周辺は地方には珍しく未だ中心市街地が辛うじて保たれている地域(静岡市はなぜか周回遅れの郊外化政策を強力に推進中というバカな真似をしていますが)、浜松は完全に中心市街地が崩壊した地域です。鉄道高架事業は駅周辺の活性化、には繋がらないのです。


しかも、沼津市は市郊外へ大型商業施設ららぽーとを誘致しようとしています。郊外への自動車アクセスを向上させて大規模商業店舗を造れば、中心市街地の商業機会を損ないます。それとも、中目黒のようだと錯覚して対抗する施設を駅周辺に造るつもりでしょうか。まあ、その手の施策も日本中に溢れかえっていて、そしてそのほとんどが破綻状態にあるわけですが。


沼津駅の高架化を実現する市民の会」が何に夢を見ているのかは判りません。もしかしたら、夢を見ているように見せて、単に多額の予算が動く高架化事業の利権にあり付きたいだけなのかもしれません。まだ、その方がマシですね。問題に自覚的、という点で。


沼津駅の高架化を実現する市民の会
http://www.numazu-cci.or.jp/revitalization/revitalization-sosiki/post_30.html


一番やりきれないのは、本当にこの高架化事業が中心市街地活性化に役立つ、と錯覚している場合です。だとしたら、まったく救いが無い。
もし本当に沼津の市街を(沼津に限りませんが)コンパクトに保ちたいのなら、自動車交通を抑制するべきです。沼津駅に関して言えば、高架化ではなく、歩行者向けの自由連絡通路を設ける方が良いです。
では。

ドイツ・縮小時代の都市デザイン

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