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2016-02-14

異世界/転生ものの視点から紹介する『幻想再帰のアリュージョニスト』

 このところ、なろう小説の異世界(転生)ものに関連する話題を立て続けに見る機会がありました。ほんの数年という短い期間で大量のお約束類型形成され、あえてその型を外して意表を突く作品が生まれ、さらに新たな型が生まれ……というスピーディーなサイクルは、ミステリやSFなどでも見られる「ジャンルお約束」の勃興と衰退の歴史ネット特有新陳代謝速度で一気に駆け抜けているように見えて、なかなか刺激的です。


 残念ながら私はこのジャンルについてあまり詳しくないので、そんな雑な印象を抱いて面白がる程度なのですが、なろう小説の異世界転生と聞くとどうしても振りたくなる話題があります


ところで、幻想再帰のアリュージョニストという小説は、異世界転生ファンタジーですが、膨大な資料と知識によって作られていてすごいので是非一読お願いします。

なぜなろう小説に異世界ファンタジーが多いのか - orangestarの雑記

 はい。うちは『幻想再帰のアリュージョニスト』のファン日記なので、例によってアリュージョニストの話をします。

screenshot

 世界転生保険とは契約者本人を受取人として、保険量(インシュランス・クオンタム)である新たな人生給付する制度である。無事支払い条件を満たしていたのはいいが、新たな世界で目を覚ますと何やら開幕から左手を怪物に食い千切られているという大惨事。おまけに原因不明のトラブル言葉も通じないわ、現代日本技術を異世界に持ち込んでしまうわで第二の人生は開始早々に前途多難。戦わなければ生き残れない仄暗い迷宮で、片腕を失った男は現代日本技術を駆使して戦うことを決意する。現代日本技術――すなわち、サイバネティクスの粋を集めた、機械義肢サイバーカラテを。

幻想再帰のアリュージョニスト

 あらすじでいきなり「異世界転生保険」と出てきているように、この小説は「小説家になろう」で隆盛している「異世界転生もの」の類型を踏まえた内容になっています言語SFや文化人類学から地獄インターネット炎上あるある話まで大量のネタが注ぎ込まれた作品なので、いくら主要なネタひとつはいえ異世界転生ひとつ取りあげて全体を語ることはできないのですが、まあ一度に全体を語るなんてこと自体がそもそも不可能です。今回は『幻想再帰のアリュージョニスト』で扱われている異世界/転生ネタを思いつく限り挙げていき、作品紹介に代えることにしたいと思います

 なにしろ幅の広い作品なので、細部の理解に誤りがあるかも知れませんがご容赦を(まああまり厳密な設定がどうとは言わず読者の解釈に任せるタイプの作品なので、その)。あと「作品の設定の一部を明かす」範囲ネタばらしは当然含むのでご承知おきください。


世界転生保険

 腕をしゃぶり尽くしたのか、血まみれの左腕を咥えたままこちらへにじり寄る人狼に対してできる事など何もない。俺の左腕を切断した剣の切っ先が、ぎらりと輝く。

 俺に許された悪あがきと言ったら、せいぜいが傷口を押さえていた右手をむちゃくちゃに振り回す程度――その瞬間だった。

『非常用回線をお繋ぎします。異世界転生に関するトラブルなどに関してはAを、ご契約内容の――』

幻想再帰のアリュージョニスト - 1-1 無彩色の左手、鎧の右手

 アリュージョニストで転生といえばまずこれでしょう。なんらかの神秘的な力ではなく、人体を量子レベルで再構成する技術や並行(下位)世界実質的植民地化など、単なるテクノロジー経済によって成立している「異世界転生ビジネス」というアイデアが、アリュージョニスト最初提示される異世界転生要素です。

 格差の拡大した未来日本社会では、貧困層が現世に望みを持つことは難しく、(もしその資金があるならば)なけなしのお金を異世界転生保険につぎ込んで来世に望みを託します。逆にある程度蓄えのある者なら、魔法の力や強靭な肉体などを転生プランオプション組込み順風満帆な、あるいは波瀾万丈な来世を過ごせるでしょう。来世の沙汰も金次第、転生という言葉神秘的な響きからは随分かけ離れた世知辛い実情です。

 そのうえ、いくらこの世に絶望していようと自殺では保険下りないので、円満な転生のためには自然な経過で命を失う必要があります。一刻も早い転生を望む者を「不慮の事故に見せかけて」殺害することで報酬を得る仕事にも需要が生まれ、そんなケチ殺し屋稼業に手を染めていたのが本作の主人公シナモリ・アキラです(なお、転生希望者の自殺幇助を手がける殺し屋は俗に「トラック運転手」と呼ばれていて、これはなろう小説でよく主人公トラックに轢かれて転生することのパロディです)。

 この主人公シナモリアキラ自身が不慮の死によって異世界に転生し、人狼に腕をもがれて恐怖で脱糞全裸になるところから物語は始まります(恣意的な要約)。転生時の不具合でサイバネ義肢という前世テクノロジーを持ち込んでしまったことが文化侵略的な側面で問題視されたり、不祥事を揉み消したい転生保険会社が「異世界転移*1」でエージェントを送り込んできたり……といった展開は、異世界転生がテクノロジーでありビジネスである本作ならではのアイデアです。

 また、この転生技術は一度死んだ人間の肉体を量子的に再構成する、いわゆるスワンプマンを生成するものです。この設定は、「劣化コピーやまがいもの」の立場から「唯一の本物」に疑問を投げかけていくことを基調とする本作のテーマによく合致していて、単なるギミックに留まっていません。他にも、転生時の手違いで別の異世界にも別の本人が再構成されて「二重転生」状態になってしまアイデンティティ的にコワい事故認知されてるとか、それができるなら量子クローン作り放題じゃんとか、SF的にも面白いアイデアが詰め込まれています


呪術世界における転生

「もう、断片的な記憶しか思い出せないけれど。私は何度も何度も繰り返してきました。終わりの無い、火竜殺しの旅を」

 それは、未来転生が一度だけではないという告白だった。輪廻転生は、何度も繰り返される。それこそ、無限に。

「第九階層の火竜に焼かれました。第八階層では巨人族との戦争でティリビナ神群の重要拠点制圧されてどうしようもなくなりました。第七階層では松明が切れて異界に閉じ込められたこともありました。第六階層の大魔将戦は何度やり直したことか。あそこは未だに安定しません」

「ん?」

「他にも呪力源と食糧が尽きて餓死したり、初見即死トラップで壊滅したり、どうせ治癒の霊薬だろうと鑑定せずに持っていた瓶の中身に敵の火炎攻撃が引火して大爆発を起こして全滅したり、外なる神の露店から貴重な呪具をありったけ盗んで逃げたら追いかけ回されて詰んだり」

「おい」

幻想再帰のアリュージョニスト - 4-17 未来の過失

 本作の舞台主人公シナモリアキラが転生した「ゼオーティア」は、模倣子(ミーム)の働きが物理法則に影響を与え、呪術的思考が現実的な力を持つ世界です。作中用語を持ち出すと難解ですが、要は「それっぽい理屈をそれっぽい説得力認知させれば実際それっぽいことが起こる」と説明できる、かなりふわっとした世界なのだとご理解ください。いわゆる「剣と魔法(棍棒と呪術?)」のファンタジー世界、という理解でも特に問題ありません。

 そんな世界ですからテクノロジーによって実現される「異世界転生保険」とは全く異なる、本来神秘現象としての「転生」も、わりと当然のように存在します。そもそもヒロインの一人からして、「無数の過去と無数の未来、無数の平行世界で幾多の転生を繰り返して数々の伝説を残してきた神話存在」ということになっています。同一人物の異なる転生体が同一世界に同時に存在するくらいのことも普通に起こりえるでしょう。

 さらには、神話となって語り継がれる虚実入り交じる伝説と実際の転生の記憶区別がつかなくなったところに呪術作用も相まって全部本当の前世ということで解決したり、自分前世元ネタにしたゲームプレイしまくって積極的ゲーム現実区別をなくしていった結果現実世界ステータスとかパラメータ認識できるようになって事実上の「ゲーム世界への転生」を果たしたりと、未来日本テクノロジー存在しないゼオーティアでも色々な転生の有り様が描かれます

 単純な生まれ変わり型の転生の他には、憑依型転生の例も見られます。これは「既に存在する人間意識を塗りつぶし、肉体を乗っ取るようなかたちで転生を果たす」という物騒なものさら面白い例としては、過去の設定の後出しによる呪術的な歴史改竄により、実は敵対者前世自分であった「ということにして」、前世人格強制的覚醒させることで敵の人格を抹消しつつ自分の肉体を獲得する過去改変と憑依転生の合わせ技とか、ちょっと何言ってるか分からないような話が出てきてはあっという間に流されていきます(それでもネタ使い捨てにならず、積み重ねていったネタの山がまた別の大ネタを生み出したりしていくのが本作の面白さです)。

 転生の中でも、作中世界でことさら重要意味を持つのが「異世界転生」です。上の方で模倣子(ミーム)がどうとか言いましたが、この「言葉文化認識が伝播して世界に影響を与える力」がゼオーティアの「呪力」の源泉です。感覚物理法則に優先するこのあやふや世界では「なんだかわけのわからないもの」の神秘自体が呪力を持ち、呪術師たちに重宝されます。その「なんだかわけのわからないもの」の最たるものが「異文化」であり、「異世界」であり、「異世界からやって来た「転生者」である……というわけで、異世界転生者(ゼノグラシア)である主人公シナモリアキラの身柄を巡って呪術師たちが相争うという展開になっていくわけですね。


あとなんか色々

 細かいネタとかを拾っていくともっと沢山ある気がしますが、さっと思いつく主だった転生ネタはこんなところでしょうか。主人公より前にゼオーティアに来ている転生者が既にそれなりの数いるっぽいとか、転生者を狩って能力奪ってスキルポイント割り振りしてる呪術師がいるらしいとか、そもそも地球とゼオーティアに古代? から繋がりがあってラテン語サンスクリット語が呪的に強力な「異文化のなんかカッコイイ言語」としてガンガン輸入されて独自の神話体系と習合してるとかまあ色々出てくるのですが、いくら本作のネタ無尽蔵とはいえあんまり言うと読む時の楽しみを削ぐのでこの辺にしときます

 書いてて思うんですが、この小説、読んでる時はめちゃくちゃ面白くて興奮するんですけど、その面白さを人に伝えようとした途端に掴みどころがなくなるんですよね……。読者が面白いと言ってるポイントが毎回毎回違うとか、読者の騒いでるネタがあまりにも与太すぎるとか、なんか周りから見てるとギャグやってんのかと思われたりするようで……。いえこっちはいたって大真面目で、ていうかまあアリュージョニスト呪術ってそういう「真顔で与太話をして物理法則を押し返すんじゃ」みたいなところがあるのである意味冗談になってしまうのは仕方ない感はあるんですけど……。

 とりあえず「アリュージョニスト全体像一言で語ろう!」ってアプローチはあまりにも難易度高いので、これからもこんな感じにちまちまと、一側面一側面に焦点を当てていくような紹介がたまにできればいいなと思っています。なんかピンと来た方は、とりあえず頭から、あるいは章題を眺めてどこか面白そうに感じたところからでも読んでもらえれば、ファンとして、紹介を書いた者として嬉しい限りです。


 そういえば今朝起きてみたらバレンタイン特別外伝更新が来てました! 女の子が八人くらい出てくるので人物よく分からないと思いますが、ギャグパートのノリとしては大体こんなのです。シリアスなバトルの時も結構こんなノリで与太話をゴリ押しして敵を倒したりします。



同作者さんの商業デビュー小説アリス・イン・カレイドスピア』もどうぞ。

アリス・イン・カレイドスピア 1 (星海社FICTIONS)

アリス・イン・カレイドスピア 1 (星海社FICTIONS)


参考

以前書いた紹介記事

*1オリジナルが死んでるどうかの違いはあるにせよ、異世界に量子レベルで人間再構成するという意味ではこれも異世界転生と似たような技術

2015-12-18

『幻想再帰のアリュージョニスト』の話をする年末オフ告知

 Twitterで前々からやるやる言っていましたが、正式な連絡が遅くなってしまってごめんなさい。年末に、東京大阪アリュージョニスト読者が集まるオフやります。豪勢な飲み会とかにはせず、喫茶店ファミレス各自時間の許す頃合いまでゆるく歓談の予定。


12/29 東京

12/30 大阪

 詳しい集合場所などは、大まかな参加人数が分かってから再度ご連絡します。参加希望の方は、TwitterDMリプライなどで魔王14歳まで連絡お願いします。

 人数が多くなりそうならお店を予約する必要検討しているので、現時点で参加を迷っている方がいらっしゃればとりあえずご連絡いただけると幸いです。

2015-10-31

酩酊感で目玉グルグルになる荒唐無稽言語SF『月世界小説』を読んだアリュージョニスト読者の感想

 というような話があったので、「アリュージョニスト読者として月世界小説を読む」という妙なミッションにチャレンジしました。独立した作品を無闇に比較する語りは牽引付会に陥りがちですし、一方をダシにもう一方を持ち上げるみたいな展開にもなりがちで、下手をすると無粋、無礼のたぐいの行為になってしまうのでちょっと難しいかなー、とも思ったのですが、せっかく前島先生に堂々とアリュージョニストの話を振るチャンスなのでなんとか頑張って書いてみましょう。

 結果としては、「確かにある程度共通した枠組みが見られるので、一方を読んでみて面白ければもう一方を読んでみるのも悪くなさそう。ただしそれ以上にどちらも極めて独自性の強い作品なので、強引に比較して共通項や差異を論じるよりも、それぞれの作品個別に深く入り込んでじっくり味わった方が面白いかも」というのが、今回の大雑把な感想でした。「とにかくわけがからない」と目玉グルグルさせながら圧倒されている読者の姿にはかなり通じるものがあったと思うので、前島先生が「けっこう近いような気がする」と感じた理由も分かりますし、ある種の親しみも感じるのですが。

 そもそもまずアリュージョニストとは何ぞという話ですが、これについてはこれまで何度も日記とかに書いてるので、その辺を参照してもらいましょう。

 対して『月世界小説』、こちらはSF作家牧野修さんの近作ですね。牧野さんの作品既読なのは傀儡后』だけですが、これはハード悪趣味近未来世界舞台としたぐろんちょ仮面ライダーというノリだったと記憶しています。いっぽう今回の『月世界小説』は

月世界小説 (ハヤカワ文庫JA)

月世界小説 (ハヤカワ文庫JA)

牧野修 『月世界小説』 (ハヤカワ文庫JA) - 十七段雑記

言語によって世界構成する人類と,言語を滅ぼそうとする神(しめすへんのカミ)の戦いを描く.悪夢のようなグロテスクさと不気味さはお手の物.合衆国占領され,英語公用語となった架空のニホンを中心とした悪夢的な世界に,重層的に意味が付け加えられていく物語にくらくらしてしまった.

 こんなノリです。LGBTパレード天使が舞い降りて黙示録のラッパがアレしたと思ったら妄想の月世界に飛んだり、日本語存在しない架空日本学生闘争が描かれたと思ったら神や人間もどきとの言語バトルが始まったりと、何がなにやら分からぬうちにあっちこっち翻弄される楽しさが味わえます。読み終わるとその辺歩いてる人を指さして模擬者(イミテーター)同定! とか言いたくなりましたね。

荒唐無稽アイデアが飛び交い、飛躍と脱線を重ねるストーリーライン酩酊感を味わえる言語SF小説」という風にまとめてしまえば、なるほど『月世界小説』も『アリュージョニスト』も、ともに共通した枠組みを持っているようです。前島先生も、もしかしたらこの辺りに共通点見出して上記のようなツイートをされたのかもしれません。「いろいろな言語SF小説を読んでみたい」とか「頭のクラクラするような破天荒小説が読んでみたい」といった気持ちのある読者になら、両作を併せて薦めてみるのも悪くないかもしれません。

 とはいえ、このくらいざっくりした枠組みなら「個性的探偵が出てきてどんでん返しを繰り返す密室ミステリー」なんて言うのと粒度があまり変わらない、とも言えます作品数では「荒唐無稽言語SF」の方がだいぶマイナーにはなるとは思いますが、それでもそれなりに多くの先例が存在するでしょう。たとえば『月世界小説』と『幻想再帰のアリュージョニスト』の並びに円城塔さんの『Self-Reference Engine』あたりを付け足しても、さほど違和感のないラインナップになるはずで、『月世界小説』と『幻想再帰のアリュージョニスト』の類似性はそのくらいのところに留まります。そもそも『月世界小説』は山田正紀さんの『神狩り』のオマージュですし、『幻想再帰のアリュージョニスト』にいたっては既存のものを寄せ集めてツギハギすることが作品自体テーマですから、薦めるならまずはそこから、という話になるかもしれません。

 また、『月世界小説』と『幻想再帰のアリュージョニスト』では作品サイズが大きく異なるので、そこも両作を一概に比較するのを難しくしている要素です。『月世界小説』は文庫一冊で綺麗にまとまった作品で、『月世界小説』も学生運動から歴史言語学架空言語兵器から神話までと多様な分野を取り扱いつつも、それらの要素を乱すことなく収束させて「荒唐無稽言語SF小説」と言い表せる範囲にしっかりと照準を合わせています。決して多くはない紙幅に強烈なアイデアを惜しみなく詰め込んだ、恐ろしく濃厚な小説と言えるでしょう。いっぽうの『幻想再帰のアリュージョニスト』は文庫にして十数冊分の連載を経てまだまだこれからという作品で、様々な分野を節操なく駆け巡る果てしなさと豊饒さが魅力です。「言語SF」はアリュージョニスト重要な一側面ですが、同時にファンタジーであり、群像劇であり、何よりもライトノベルであるという捉えどころのなさが本作の性質です。

 という感じに用心深くエクスキューズをした上で、『月世界小説』の中であえて個人的に「あっこれアリュージョニストっぽい」と思った箇所を挙げるなら、「日本語過去遡及的に消失(?)して英語公用語になった架空日本から古事記英語の原型である西ゲルマン語で書かれている」云々のくだりでしょうか。こういう因果関係意図的あべこべにするような屁理屈は「呪術」という枠組みでアリュージョニスト作中の至るところに登場するので、なんかこういうの好きだ、という方にはアリュージョニストを強くお薦めします。逆に、『月世界小説』中盤以降に登場した脚注弾(敵におマヌケ脚注を付けて現実の設定を上書きする)やら落丁爆弾(文章を落丁させて数十ページ分の展開をすっ飛ばす)やらは、なんかもういかにもアリュージョニスト読者が好きそうな呪文系統馬鹿兵器で大変によろしいです。性格も外見も年齢も全く異なるキャラクターが「並行世界存在する異本(バリアント)」という枠組みで同一人物として扱われたりするのも、なんだか神話がゆらいでる感じでアリュージョニスト感(なにそれ)を覚えますし、要所要所で「おっこれ」と思った箇所はけっこうありました。

 というわけで、けっこう無理矢理な文章になってしまいましたが、どさくさに紛れて『月世界小説』と『幻想再帰のアリュージョニスト』という独特な二作品をの話をする機会が持てたのは良かったです。読者層がものすごく被る、ということもないとは思いますが、これも何かの巡り合わせだと思って両作に興味をもってもらえると幸いです。『月世界小説』は物理書籍の他(山田正紀さんの解説がついてないのが残念ですが)電子書籍で今すぐ買えますし、『幻想再帰のアリュージョニスト』はここでいつでも読むことができます特にことの発端の前島先生におかれましては、これを機会に是非是非「なろう小説読めない病」を克服していただきたいと思う次第であります。読もう! 月世界小説幻想再帰のアリュージョニスト

2015-09-02

アリュージョニスト作者の商業デビュー作『アリス・イン・カレイドスピア』が全8章中1章から8章まで無料公開

 7月出版されたばかりの無名作家デビュー作をWebでほぼ全文公開するという、なかなか大胆な宣伝星海社サイトで行われています(巻頭のカラーページや用語解説を含め、全8章中の8章まで公開となると、残りはあとがきや奥付くらいのものなので、ほぼ全文公開と言って差し支えないでしょう)。出版以降、毎週1章ずつ公開されていてどこまで行くのかと思ったら、ついに昨日クライマックスまで読めるようになってしまいました。期間限定の公開なのかなとも思いましたが、今のところ「掲載期間」の欄にも期限は明記されてないし、ずっとこのまま公開し続けるのかもしれません。

アリス・イン・カレイドスピア』といえば、ごく一部でカルト的な人気を誇るWeb小説幻想再帰のアリュージョニスト』の作家最近さん(「最近」さんというお名前です)の商業デビュー作です。漫画家にしてはてなダイアラーでもある小島アジコさんの精力的な紹介のおかげで、はてな界隈では多少認知されてますが、商業出版という市場で考えるとまず無名と言ってよいでしょう。そんな無名の、しかし確実に力があり読めばきっと面白いという類の新人作家を売り出すためなら、シリーズの第1巻をほぼ丸ごと無料公開しても割に合う、という判断なのかもしれません。実際こういう手法効果的なのか、逆に売り上げが減ったりしないのか等の不安もありますが、もう公開されてる以上、ファンとしてはどんどん話題になって知名度あげていってもらいたいなと思っています(未公開分があとがきくらいしか残ってないのに「この続きはぜひ本書で!」という星海社ツイート*1は流石にどうかと思うのですが、ファンは早くも幻の9章の存在を囁きはじめており平常運転です→公式の告知で訂正されました*2。ひとあんしん)。

 マーケティング特殊性は置いといて、『アリス・イン・カレイドスピア』はよい小説です。『幻想再帰のアリュージョニスト』は200万字を超えてなお連載なかばという大長編ですが、その荒唐無稽豊饒作家性が、『アリス・イン・カレイドスピア』では1冊に綺麗にまとめられています。具体的には、呪術思考テクノロジーの基盤とする独特な世界の中で「神話型熱核融合炉」とか「重力定数すら未定義空間を浮遊戦車が飛び交う」とか「呪占兵の弾道卜占」とかの素敵な文字列が展開されたかと思えば、壁サークル同人乙女が200人の脳内彼氏を呼び出したり、美少女化された聖人廃課金ガチャ召喚されたり、ちょっとなに言ってるか分からない光景が繰り広げられて端正に作られた世界観をどんどん台無しにしていくのですが、最終的には「アリス」というおとぎ話とかでよく聞く名前女の子の元に全てが回収されて綺麗にまとまります。尊い。

 まずは3章、緻密に書き込まれた重厚世界がいきなりわけの分からないひっくり返り方をする序盤の山場までを読んでもらえれば、本作の作風はなんとなく飲み込めるかもしれません。今回の無料公開はなかなか思い切った賭けだと思いますが、この秋には2巻の発売も予定されているので、ともかく最終的な売り上げや知名度、そして最近さんの良い将来に結びついてもらいたいと切に願うところです。

アリス・イン・カレイドスピア 1 (星海社FICTIONS)

アリス・イン・カレイドスピア 1 (星海社FICTIONS)

2015-07-26

7/31(金)に『アリス・イン・カレイドスピア』のネタばれチャットします

 します。本編はもちろんのこと、流れでアリュージョニスト話題とか、『このWeb小説がすごい!』の話題もできるかと思います一見さん大歓迎ですので、奮ってご参加くださいませ。

アリス・イン・カレイドスピア 1 (星海社FICTIONS)

アリス・イン・カレイドスピア 1 (星海社FICTIONS)


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