企業法務戦士の雑感 このページをアンテナに追加 RSSフィード

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2018-07-17

[][]「グッドルーザー」と称えるには惜しすぎた。

日本時間、7月16日午前0時から行われたW杯決勝。

延長戦そしてその先のPK戦まで見据えて準備万端で臨んでいたのだが、勝利祝いのシャンパンはもちろん、それまでのつなぎのつもりで用意した酒すら飲み切れないまま、あっけなく90分で終わってしまった。

14日付のエントリー*1で引用したのと同じ形式で、決勝の試合を表現するなら、以下のようになる。

勝者 決勝 対クロアチア 4-2

ボール支配率38%、シュート8本(うち枠内6本)/相手シュート13本(うち枠内4本)

シュート者上位:エムバペ3、グリーズマン2、ポグバ2

パス成功者上位:ポグバ29、エルナンデス24、ロリス21

敗者 決勝 対フランス 2-4

ボール支配率62%、シュート13本(うち枠内4本)/相手シュート8本(うち枠内6本)

シュート者上位:レビッチ3、ラキティッチ3、ブルサリコ2 ほか

パス成功者上位:ブロゾビッチ88、モドリッチ68、ブルサリコ61

今大会随所で見られた「矛&盾」対決の中でも、お互いが「攻められる盾」「守れる矛」であった分、極上のクオリティとなったこの戦い。そして、両者の持ち味が存分に発揮された、ということは、62:38というボール支配率の圧倒的な格差と、シュート数と枠内シュート数の優劣が見事に逆転する、というマジカルな結果が十分に物語っている。

そして、セットプレーからあっけなくフランスが先制したのは「青」の勝ちパターン通りだったし、クロアチアが10分後、怒涛のような波状攻撃で10分後にすかさず追いついた、というのも、まさに「赤白」の勝ちパターン通り。

今大会を象徴するようなVAR判定*2クロアチアのプランをちょっとだけ狂わせたが、後半に入ってからも、フランスの攻撃は全く形にならず*3、圧倒的に攻めていたのはクロアチアの方。

決勝トーナメントに入ってから3試合連続で120分を戦い、「もはやこれまでのようなパフォーマンスは期待すべくもない」という大方の想像をいい意味で裏切ってくれたクロアチアの不屈の魂をもってすれば、ちょっとしたきっかけで再逆転、という展開も十分に予想できたし、後半10分にフランスの守備の要、カンテ選手をベンチに追いやったところまでは、まさに「シナリオ通り」の展開になっていたはずだった・・・。

多くの識者は、その後、痛恨の2失点で勝負が決まったこの試合を「後半、クロアチアが力尽きた」と評している。

だが、真実は、カンテ選手という楔から解き放たれ、それまでは多少なりとも守備に比重を置いていたクロアチア中盤の名手たちが、名実ともに「美しく、攻めて、勝ちにいく」というマインドで統一されてしまったことが悲劇の始まりではなかったか。

90分を通じて、「これはやられるかも」というシーンを必ずきっちりと得点に結びつけたフランスイレブンの完成度の高さには、ただただ賛辞を贈るしかないのだが、ポグバ選手の3点目にしても、エムバペ選手のとどめの4点目にしても、守備陣の心がもう少し自軍寄りにあったら、そして、GKのスバシッチ選手がこれまで通りの集中力と反応の良さを発揮していてくれれば、と思いたくなるような代物。

幸いにも、終盤まで「2点」というセーフティリードを保ち続けることができたことで、勝者は準決勝とは打って変わって「誇り高き勝者」のプライドを最後まで保つことができたし、敗者も過度にヒートアップすることなく、「グッドルーザー」としての印象を残すことができた。

だが、それまでの拮抗した戦いの中で、クロアチア人のハートに心打たれ、姑息なフランス人の立ち回りを憎んだ者からすれば、「W杯決勝、あと一つ勝てば優勝」という舞台にしては、時間が過ぎれば過ぎるほど試合が大味なものになっていたことは否めないわけで、振り返れば振り返るほど、この千載一遇のチャンスを逃したクロアチア代表の“惜しさ”に目を向けずにはいられない。

大会が最後まで終わってしまえば、いかに代表チームとはいえ、もう全く同じメンバーで試合をすることはできない。

そして、それが分かっていたからこそ、とことん勝利にはこだわってほしかった。

それが、“にわか”でクロアチア代表のここ数週の試合を見続けた者が抱いた、率直な思いである。

*1http://d.hatena.ne.jp/FJneo1994/20180714/1531595336

*2:いろいろと批判している人は多いが、個人的にはあの「手」は、DFの選手が自分の「意思」で瞬間的に出したもののように見えたし、それまでの「ハンド」に対する今大会の判定と比較しても、「誤審」といわれるレベルのものでは決してなかったと思う。

*3:これまでフランスの攻撃の鍵になっていたジル―選手にしてもパバール選手にしても、味方へのパスはことごとくカットされ、ほとんど機能していなかったに等しかった。

2018-07-14

[][] 必然の頂上対決

先ほど、ベルギーイングランド3位決定戦が順当にベルギーの勝利、という結果で終わり*1、約1カ月にわたったロシアW杯も残すは決勝戦、フランスクロアチアのカードのみ、ということになった。

グループリーグドイツ韓国に敗れて大会を去ったことに象徴されるように、世界各地域の実力が拮抗した結果、日本を筆頭にアジアアフリカ北中米のチームも決して“安牌”にはならず、ささやか以上の存在感を示した。

どんなビッグネームを擁するチームでも、当のエースがコンディション不良だったり、チームとしてちょっとでも隙があれば、前評判とは無関係に消えていく、という厳しさは、第1回のW杯から88年経って、フットボールが世界の隅々まで行き渡ったという証でもある。

そして、そんな中、今大会の価値を高めているのは、大会の中で大きなインパクトを残したチームがトーナメントを順当に勝ち上がってきた、ということ。

4年に一度、世界の頂点を決める舞台では、どうしても冷酷なリアリズムが先に立つから、グループリーグ、ラウンド16で魅力的な試合をしたチームも、準々決勝、準決勝と駒を進める中で力尽きる、というパターンがこれまでは多かったし、観る側も「それがW杯だ」と半ばあきらめていたところがあったのだけど、今大会に関して言えば「もう一つ先を見たいチーム」が順当に勝ち上がってくれて*2、大きなフラストレーションを感じずに済んでいるところはある。

試合後の主力選手の発言が話題になった準決勝、フランスベルギーの試合にしても、言われるほどフランスが守備的だったわけではないし、最後の10数分の見苦しさを除けば、「アンチ・フットボール」とまで言われてしまうのはちょっと気の毒なくらい、フランスの試合運びが洗練されていたのも事実だから、どちらが勝ちあがっても良かった、と個人的には思っているところ。

そういう意味で、フランスクロアチア、という決勝戦は、「攻守一体」という今大会最大のテーマをここまで実践してきたチーム同士が、それぞれ「スピード&守備の堅牢さ」と「技術&多彩な攻撃」という、それぞれが磨き上げた突出した個性を武器にぶつかり合う、という、実に見どころの多いカードだと言えるだろう。

そして、以下では、明日の試合を控え、これまでの決勝トーナメントでの戦いぶりを数字で見ながら*3、ちょっとだけ“未来予想図”を書いてみることにしたい。

フランス〜鉄壁の守備と切り替えの速さ、試合運びのしたたかさ

1回戦 対アルゼンチン 4-3

ボール支配率40%、シュート8本(うち枠内4本)/相手シュート11本(うち枠内4本)

シュート者上位:エムバペ2、グリーズマン2、パバール1 ほか

パス成功者上位:カンテ47、ウムティティ42、ヴァラン34

準々決勝 対ウルグアイ 2-0

ボール支配率59%、シュート10本(うち枠内2本)/相手シュート12本(うち枠内4本)

シュート者上位:グリーズマン2、ヴァラン2、トリソ1

パス成功者上位:パバール73、ポグパ60、エルナンデス51

準決勝 対ベルギー1-0

ボール支配率39%、シュート18本(うち枠内5本)/相手シュート9本(うち枠内3本)

シュート者上位:ジル―7、グリーズマン5、マティイディ2

パス成功者上位:パバール45、カンテ39、ヴァラン35

カバーニ選手の負傷欠場でワンサイド気味の試合になったウルグアイ戦を除けば、決勝ラウンドに入ってから専ら相手チームを「受けて」いる印象が強いのだが、それでいて、今回のフランス代表は、(シュート数では相手を圧倒したベルギー戦に象徴されるように)ひとたびボールを奪えば一瞬で決定機に持ち込める力を持っているから見ていて飽きない。

攻守の役割分担も明確で迷いがなく、特に守備能力の高いカンテ、ポグバの両選手が奪ったボールをグリーズマンが運ぶ、あるいは、一段飛ばして飛び道具のエムパベで一気に決めに行く、という必殺パターンが確立されている上に、セットプレーからも点を奪える、というのは相当な脅威。

今大会、グループリーグから一度も先制点を許していない、というのも特筆すべき事柄で、先制してからの試合運びにも心憎いばかりのしたたかさがある。

一方で、ジル―選手が未だにゴールを決められていないこと。そして、役割分担の明確さは、裏返せば流れの中での得点パターンが固定化している、ということでもあり、抑え込むターゲットを絞られやすい、というのが難点はある*4

クロアチア〜高い技術と多彩な攻撃パターン、そして魂の守り。

1回戦 対デンマーク 1-1

ボール支配率53%、シュート21本(うち枠内6本)/相手シュート15本(うち枠内3本)

シュート者上位:ペリシッチ7、ラキティッチ3、モドリッチ3 ほか

パス成功者上位:ラキティッチ70、モドリッチ67、ビダ62

準々決勝 対ロシア 2-2

ボール支配率65%、シュート17本(うち枠内3本)/相手シュート11本(うち枠内3本)

シュート者上位:クラマリッチ3、モドリッチ3、マンジュキッチ3

パス成功者上位:モドリッチ93、ロブレン81、ラキティッチ76

準決勝 対イングランド 2-1

ボール支配率54%、シュート21本(うち枠内7本)/相手シュート10本(うち枠内1本)

シュート者上位:ペリシッチ7、マンジュキッチ3、レビッチ3

パス成功者上位:ブロゾビッチ76、ラキティッチ69、モドリッチ63

数字だけ見ると、クロアチアが決勝トーナメントに入って以降の全ての試合で、ボール支配率、シュート数ともに相手チームを圧倒していることが良く分かる。

チームのスタイルとしてはフランスとは対極で、各人の高い個人技をベースに手数をかけて攻める、スペインや近年のドイツのような戦い方をするのだが、そこに“緩”を“急”に変えられるモドリッチ、というスーパースターが絡むことで、敗退したチーム達とは大きな違いを生み出すことができたのだろう。

相手に合わせてシステムも微妙に変えてくるし、攻撃パターンもマンジュキッチペリシッチ、クラマリッチといった選手たちがフレキシブルに動き回り、レビッチのドリブル突破等によりアクセントを付けるオプションもある等、実に多彩。

パスの出しどころすら、モドリッチラキティッチ、ブロゾビッチ、と、相手やコンディションによりいろいろと変えてくるから、明日の試合も、実際に始まるまでは、誰がどこで仕事をするのか、相手が捕捉するのは難しい。

一方で、内容的に圧倒しているにもかかわらず、3試合とも120分戦わないといけなくなったことからも分かるように、クロアチアの試合運びはフランスベルギーほど洗練されたものではない。いずれの試合も、相手チームに先制点を許し、それを追いかける展開になっていたために、余計にハラハラさせられることも多かった*5

決勝戦も、ひとたび相手に先制を許せば、攻めても攻めてもゴールが遠い、という蟻地獄に嵌る可能性は否定できない。

逆に、点が取れなくても膠着した状況に持ち込めば、あとはGK・スバシッチ選手を中心に、気持ちの入った激しい守備で耐え抜くこともできる。とにかく先に点をやってしまって追いかけるような展開にしないことが一番である。

                                                           なお、最後に、各メディアでは圧倒的に「フランス有利」という前評判になっているが、今大会での両チームの共通の対戦相手、アルゼンチンとの試合を基準に考えると、自分は各選手万全ならクロアチアの方が一枚上だと見ている。、

だからこそ、変なところで足元をすくわれないように、と今はただ願うのみ。

最後の最後に、最高峰の舞台での、最高峰の戦いを目撃できると信じて、それまでゆっくり鋭気を養うことにしたい。

*1:最後の最後までベルギーのカウンターは速く、鋭く、そして美しかった。アザール選手のドリブルとデブライネ選手の糸を引くようなスルーパスを決勝の舞台で見ることができなかったのがつくづく悔やまれる。

*2:日本対ベルギーに関しては、まぁ日本にも勝ち上がってほしかったところはあるが、その次の試合、よりグレードを上げた高速カウンターでブラジルを葬り去った赤い悪魔たちの姿を見たら、やっぱりあの結果で良かった、と思わずにはいられなかったところはある。尻上がりに調子を上げていたウルグアイコロンビアは、主力選手が万全な状態で見たかったところもあるが、仮に万全だったとしても「トップ3」に入るのは難しかっただろう、と思う。

*3:データは「スポーツナビ」で毎試合公表されているスタッツからの引用。

*4:流れの中で意表をついて得点を生み出せる選手はパバール選手くらいかな、というのがこれまで見た中での印象である。

*5:その分、ドラマティカルな試合が続き、視聴者の支持、共感を集めることになったのも、また事実なのだが・・・

2018-07-08

[]祝800万ページビュー

前回の節目*1から約1年11カ月で、また一つ大台を超えた。

以前に比べると、ゆったりとした歩みになってしまっていて、ベテランに差し掛かったプロ野球選手の「2000本」を目指す道のりとか、はたまた武豊騎手の「節目」更新の道のりなどを何となく思い浮かべてしまう*2

それでも山あり谷ありを潜り抜け、開設から13年近く経ってもまだこのブログが続いている、ということに意味を見出そうとしている自分もいるのだけれど、一寸先はどうなるか分からない状況だけに、欲張らずに自然体が一番かな、と思っている。

このペースでいけば、次の節目は2020年、まさにオリンピックを控えた時期、ということになりそうだが、果たして・・・。

明日を知るのは神だけ、なのである。

*1http://d.hatena.ne.jp/FJneo1994/20160802/1470067106

*2:ああいった方々の偉業と比較すること自体、僭越なのは承知の上で・・・。

2018-07-07

[][][]「平成」の時代とともに葬り去られた事件史。

金曜日、突如として飛び込んできた「麻原彰晃の死刑執行」のニュース*1

そして、今朝の朝刊を見て、この執行が、元教祖だけでなく当時、新聞、雑誌等で名前を見かけない日がなかった元教団幹部たち6名に対しても同時に行われたことを知った。

法務省は6日、地下鉄サリン事件などを起こしたオウム真理教の元代表、松本智津夫死刑囚(麻原彰晃、63)ら7人の死刑を執行したと発表した。一連の事件で死刑が確定した元教団幹部ら13人の中で初の執行となった。1995年の逮捕から23年。2019年5月の改元を控える中、未曽有のテロや凶悪事件の「平成」決着をにらみ、執行時期を探ったとみられる。」(日本経済新聞2018年7月7日付朝刊・第1面)

事件からもう23年。元代表の刑の確定により、裁判が事実上終結してからも、かれこれ10年くらいの月日が流れている。

元号が変わってからまだ10年に満たなかったあの頃、不幸な出来事が連鎖する時代背景の中、まだちょっとだけ残っていた新しい時代への期待感は「オウム真理教」「サリン」という言葉と共に雲散霧消した。まさに、あの事件は「平成」という時代の運命を決定づけるほどのインパクトがあった事件だったわけだが、今、あの頃の雰囲気がどれだけ正確に伝えられているか、そして、あの頃「謎」とされていた様々なことが、時代の経過とともにどれだけ解き明かされたか、といえば、何とも心もとないところがある*2

自分は決して「死刑反対派」ではない。

むしろ、故意に凶悪犯罪を犯したことが客観的に証明されていて、かつ、自省の念すら示さない者に対しては、極刑をもって処するのが当然、という思想の持ち主である*3

だから、松本智津夫死刑囚に対する執行や、未だに教祖への帰依を続けている死刑囚(実際にいたかどうかまでは承知していない)に対する執行を不当、というつもりは毛頭ないのだが、様々な出来事のディテール、特に、「事件」にならなかった教団組織内でのあれこれが必ずしも全て解き明かされていない状況で*4、今、全ての「生き証人」たちを闇に眠らせる必要があったのか・・・。

法に則った刑事訴訟の手続きが尽くされていればそれでよし、裁判上の記録に残され裁判所が判決で認定した事実が全て、という刑事司法の建前を承知しているからこそ、最後まで「周辺」からしか事件の核心に迫ることができなかったジャーナリズムの非力さを感じざるを得なかった*5

続きを読む

*1:もっとも翌日の朝刊にすぐに「特集」記事が掲載されたところを見ると、大手のメディアは既にこの動きを事前に知らされていたか、察知していたものと思われる。

*2:自分が8年前、当時の事件の回顧記事を見て記したエントリーが、http://d.hatena.ne.jp/FJneo1994/20100320/1269231039だが、あの頃の違和感は未だ消えていないし、あの事件が「テロ」というフレーズで普遍化されればされるほど、むしろ強まっている。

*3:人間の「生命」がいかに重大な法益だとしても、自らが犯した第三者に対する法益侵害との比較衡量によって、その価値を否定されることがあるのはやむを得ない、という考えに立っている。

*4:なぜなら、これまでに「回顧」録を出している人々は、核心となる事件の最中に「本丸」にいなかったり、仮にいたとしても「周辺」からしか物事を見られなかった人たちだから。

*5:もっとも、終焉の地に移送される直前まで、彼らと接触していた人々は少なからずいたようだから、この後、一つ二つ、“肉声”で核心を解き明かそうとするメディアが出てきても不思議ではないし、そういう動きが出てきてほしい、と自分は密かに願っている。

2018-07-06

[][]夢から醒めた後に残るもの。

午前3時前からテレビにかじりつき、防戦一方の展開に「1点取られたら寝るぞ」と心に決めていたのに、後半早々、立て続けに決まったゴールに酔いしれ、ひとしきりあり得ない妄想すら抱いた後に本物の欧州サッカークオリティを見せつけられ、それでも体を張って守り続ける青いサムライ達を涙ながらに応援し、「こうなったら延長戦、最後の最後まで見届けるぞ」という覚悟を決めたところで襲ってきた一瞬の歓喜と深い落胆。

そのまま仕事に行き、とめどなく語りたい気持ちを抑えつつ、時々いくつかのシーンを思い返しながら余韻に浸る。

でもその日の夜くらいから、あちこちで繰り返される“称賛の嵐”にだんだん辟易するようになってセルジオ越後の辛口コメントを見てほっとした気分になったり、その一方で、数日経って始まった準々決勝の試合を眺めながら、この舞台に立ち続けていてほしい、という願いが今回も叶わなかったことに空しさを感じていたりする。

そんな日々を過ごすと、自分も普通の日本人なんだな、ということを改めて感じるわけで・・・。

もちろん、元来ひねくれ者の自分としては、あちこちで言われているような「ラウンド16のベストゲーム」という評価には、どうしても首を傾げたくなる。

ベルギーの攻撃のレベルは、フランスの速さやクロアチアの美しさ、ブラジルの狡猾さに比べると一レベル低かったし、守る側の日本にも、スペインを葬り去ったロシアのような安定感も打たれ強さはなかった。世界最高レベルのスピードと技巧がぶつかり合ったフランス×アルゼンチン戦や、最強の矛盾対決だったスペイン×ロシア戦、そして、最後の最後まで決着が見えなかったクロアチア×デンマーク戦やコロンビア×イングランド戦の方が、試合のレベルとしては遥かに高かった・・・等々。

それでも世界の観戦者がこの試合に価値を認めるのだとしたら、余計な笛がほとんど鳴らなかったクリーンさと、両極端の状況が90分、というか後半の45分間+αの間にギュッと凝縮された密度の濃さゆえだろうが、それは裏返せば、序盤から攻められ続けていたにもかかわらず、ハーフタイムを挟んで2点先行する、というこれ以上ない展開、優位性をその後の僅か40分で覆されてしまった日本代表のナイーブさが試合を魅力的なものにしてしまった、ということでもある。

◆ ◆ ◆ ◆ ◆

青いユニフォームを着て先発した11人、特にフィールドの10人が、今大会グループリーグからこの試合まで一貫して素晴らしかったことは疑いようもない。

吉田選手、昌子選手の両CBは、安定した守備力を発揮するにとどまらず、積極的に攻撃の起点となって中盤の負担軽減に大いに貢献。両サイドの長友選手、酒井宏樹選手は豊富な運動量で、何度となく敵陣を切り裂いたし、守勢に回ったときの戻るスピード、体の張り方ともに申し分ない安定感だった。

長谷部選手はベテランならではの味で柴崎選手の仕事の場を作ったし、原口選手の体を張ったディフェンスと献身的な上下動は、サッカーの神様から決勝トーナメントでの先制点、というプレゼントを受け取るにふさわしいだけのものだった。

前線の大迫選手へのマークは、試合を経るごとにキツイものになっていったが、それでも「ザ・ポストプレー」と言えるだけのパフォーマンスは最後まで維持されていた。

そして、中盤を構成した柴崎選手、乾選手、香川選手の働きには、陳腐な言葉では到底語りつくせないくらいの価値があった。

ベルギーを一転して地獄に追い込んだ柴崎選手のスルーパスは、彼の一世一代の偉業として語り継がれるだろうし、4試合すべてに先発して細やかな攻撃を組み立て続ける彼の存在がなければ、ラウンド16の舞台すら遠い夢のまま終わったはず。また、乾選手と香川選手の組み合わせは、「得点力不足」を長年批判されてきた日本代表が出した最良の回答だった。

だが、残念ながら、「最初の10人」が素晴らしすぎたことが、後半リードした後の試合の流れをキープする上で致命的な、選手交代の遅れを招くことになってしまった。

試合の結果だけを見れば、勝敗を分けたのは、2点のビハインドを負って窮地に追い込まれたロベルト・マルティネス監督が後半20分に切ったフェライニ選手、シャドリ選手という交代カードであり、受け身に回った日本代表が後半36分まで決定的な手を打てずに時間を浪費したことが、カードの効果を決定的なものにしてしまったことも全く否定できない事実である。

誰が監督でも、あのフィールドの10人をゲームの途中で替える、という選択をする勇気はなかなか持てなかっただろうし*1グループリーグの最終戦で先発組とベンチ組の「格差」を嫌というほど味合わされた後では、切れるカードもあの2枚(本田選手と原口選手の交代と、山口蛍選手と柴崎選手の交代*2)くらいしか思いつかなかったはず*3

ただ「切り札」として、ベンチに久保裕也選手や中島翔哉選手がいてくれれば、せめて浅野拓磨選手くらいはいてくれれば・・・という思いも、「解任」前の時代から代表を見つめていたサポーターなら当然抱くわけで、フィールドで即興でゲームをコントロールできる“大人な選手たち”を揃えた代償が、あの「美しい敗戦」だというのは、何と言う皮肉か、と思わずにはいられない。

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*1:交代で入った本田選手が、近年の代表の試合では見たことがないくらいキレキレの良いデキだっただけに、もう少し早く投入していれば、ベルギーの怒涛の反撃の流れを少しは止められたのではないか・・・という思いはあるが、あくまで結果論。フィールドに出るまでパフォーマンスの優劣を予測できないタイプの選手を投入できるような試合展開ではなかった、ということは記憶にとどめておく必要があるように思う。

*2:個人的には替えるなら長谷部選手の方ではなかったか、と思うが、あれだけ押される展開の中ではやむを得ない選択だったというほかない。

*3:結果的に、交代カードを1枚残す形で試合を終えることになってしまったが、宇佐美選手も武藤選手も世界レベルの戦いでフィールドに出すのは厳しい(岡崎選手も負傷で長い時間使うのは無理)、という現実があった以上、仮に延長戦に入ったとしてもオプションはほとんどなかった、と言わざるを得ない。自分は一点返されたシーンを見て、「真っ先にGKを替えろ」と心の中で叫んでしまったが、それはもう交代カード以前の問題だから、いずれにしてもどうしようもなかった。

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