企業法務戦士の雑感 このページをアンテナに追加 RSSフィード

この日記のはてなブックマーク数

2016-08-29

[]2016年8月29日のメモ

迷走気味の台風。夕方くらいに晴れ間の見える空を見た時は、「こりゃまた予報外したな」と思ったものだが、深夜に差し掛かり家路に付く頃になって、ようやく雨も降ってきた。

それでも、朝起きたら、あの嫌らしい渦が遥か東の海上に遠ざかっていたりすることを、まだちょっと期待している。

下請法違反 監視強まる」

月曜恒例の日経紙の法務面、今日のテーマは、上記見出しのとおり「下請法」であった*1

記事でも指摘されているとおり、最近、下請法違反で指導、勧告される事例は増えているようで、著名な小売店等が対象になった事例が記事になることも多い。

元々要件が形式的、硬直的で、運用も融通が利かないこの法律に対する評判は芳しくないのだが、時代は“中小企業の味方”である自民党の天下、ということもあり、消費税特措法ブームが去った後も、執行強化は続いているようである。

あまり活字にはなっていないものの、下請法違反の場合“認めたら負け”のようなところはあって、書面の明確な不備や明らかに下請企業を痛めつける目的で一方的減額等を行った場合でなければ、調査に対して毅然と反論した方が指導、勧告を受ける可能性は低くなる、という噂は、実務の世界では根強く囁かれているところなので*2、記事を見て過度に腰の引けた対応に舵を切る必要はないと思うのだが、とかく“コスト削減”が最優先されてしまう世知辛い世の中だけに、親事業者としても“ともに栄える”という発想は持っておきたいところである。

「顔は個人情報」という当たり前の事実をなぜ今?

法務面のもう一つの大きめの記事が、改正個人情報保護法に関するコラムで、「顔は個人情報」という点にフォーカスして防犯カメラの話などが書かれている。

もっとも、読んでみると、「顔データが個人情報に当たる」という法改正以前から実務では当然の認識となっていたポイントに触れているだけで、法改正はあまり関係ないなぁ、という印象のことしか書かれていない。

そして、弁護士のコメントとして紹介されている「防犯カメラで収拾したデータの利用目的を店頭で告知するなどの対応が求められる」というくだりは、あくまで「防犯以外の目的」で顔画像データを使用する場合のことなのだ、ということをもう少しはっきり書いてくれないと、誤解する人も出てきてしまうのではなかろうか。

通常の防犯目的で使用する場合は、個人情報の利用目的が取得の状況からみて明らかであり、「当該利用目的の公表を必要としない場合」(法18条4項4号)に該当する、という解釈は変わらない、ということにも触れてほしいところではあった。

24時間テレビ

ネット上では今年もいろいろと批判されているようだが、この番組企画の薄っぺらさと虚構性は今に始まった話ではないので、何を今さらという気がしないでもない。

そして、今年も自分は、チャンネルを切り替える際に一瞬だけ映ったのを見たくらいで、この企画には縁遠いまま24時間を過ごした*3

それでも、昔地方都市で仕事をしていた時は、それまで縁遠く感じていた地元のテレビ局の前に、例の黄色いTシャツを着たスタッフがぞろぞろいてイベントを行っているのを見て、何となくホッとした気持ちになったこともあった、というのは、ここだけの話にしておこう*4

*1日本経済新聞2016年8月29日付・第17面。

*2:特にコラムで取り上げられている“買いたたき”などは、私企業間の契約プロセスに当局が土足で踏み込むような話だけに、合理的な協議を経て対価を決めた、と言える自信があるなら、調査対象となる親事業者としても徹底的に反論したいところである。

*3:そもそも自分は“アンチ巨人”派なので、日本テレビ系にチャンネルを合わせることも年に数回(サッカーの日本代表戦が放映される時くらい)しかない。

*4:それは、おそらくイベント主催側も認識していない“副次的効果”だったのだと思う。

2016-08-28

[]2016年8月28日のメモ

ブログエントリーの執筆スタイルを変えたのを機に、今月に入ってからは連日投稿していたのだが、さすがにこのまま続くとも思えないので一日空けてみた。

ネタの溜まり具合を考えると隔日ペースくらいが理想かな、とは思うが、夏休みモードも終わりつつある中で、この先どうなるかは神のみぞ知る、という感じである。

鹿児島県知事が九電に川内原発停止要請

当選直後から注目されていた鹿児島県の三反園知事が、九州電力の瓜生道明社長に対し、「川内原子力発電所を直ちに停止し、再点検・再検証をするように申し入れた」との記事が、各紙の土曜日の1面で報じられている。

日経紙などは、早速日曜日の社説で、「原発停止を求めた鹿児島県知事への疑問」という論陣を張っているし*1、朝日や毎日といった原発懐疑派のメディアも、法的な権限なく原発停止申入れというセンシティブな行動に出た知事のやり方を全面的に支持しているわけではない*2

原子力規制委員会の審査をクリアしたからと言って「絶対的に安全」と断言することができない、ということは、原発に限らず過去に起きた様々な技術分野での事故が証明してしまっているから、知事が変わったタイミングで改めて再点検・再検証を求めること自体は悪いことではないと思う。

ただ、その手段として「既に再稼働している原発を止める」というのは、あまりにパフォーマンスに走り過ぎていて相当性を欠くのではないかなぁ、というのが自分の個人的な意見で、というのも、これまでの経験則上、「(普通に動いているものを)止めたり、動かしたりを繰り返す」というのが機器にかける負荷が一番大きく、そのまま動かし続けるよりリスクを拡大することも多い、ということを何となく感じているから・・・*3

しかも、原発の場合、稼働していようがいまいが、そこに放射性物質がある限りリスクは変わらない*4

選挙の際に、反原発派を取り込むために政策協定に入れて公約までしてしまった以上、新知事としてはこの停止要請をすることは避けて通れなかったのだろうけど、これからの原発政策で一番大事なのは、“現役”の原発を止めることよりも、「新たに作らせない」ことや、「老朽原発を迅速に廃炉に持っていく(当然ながら「放射性廃棄物」の処理まで含めて対処する)」ことであって、今の川内原発をめぐって時間を止めることは、必ずしも得策ではないように思えてならない。

共謀罪」新法案で復活か?

くじけてはまた出るしぶとい「共謀罪」が、「国際テロ対策」とか「東京五輪」という口当たりの良い立法事実(?)とともに再び湧きあがってきた。

今度は適用要件をさらに絞る、ということだから、出てくる法案を見たら、なんだこんなものか、というものになるのかもしれないが、条約に乗っかって(わが国において厳格であるべきはずの)刑法の構成要件をわざわざ緩めなくても、立法事実を達成するための方法は他にいくらでもあるはずで、今のトーンでそのまま立法まで押し切ることには、素直に賛成しかねる、ということはコメントしておきたい。

東洋ゴム免震偽装めぐり株主代表訴訟に補助参加せず

株主の提訴請求を会社(監査役会)が蹴とばしたことで株主代表訴訟が勃発している東洋ゴムにおいて、会社が「原告と被告のいずれにも補助参加しない」という決定を行ったということである*5

普通、提訴請求を蹴飛ばす=「会社としては取締役に法的責任を問うべきではないと考えているため、代表訴訟が提起された後は被告(取締役)側に補助参加する」というパターンが多いと思うのだが、ここであえて取締役をサポートする側に入らなかった、ということが何を意味するのか。今後の審理の行方と合わせて注目したい。

NHK受信料 ワンセグ契約義務なし

ワンセグ付きの携帯電話を所有する者」が受信料契約を締結し、受信料を支払う義務を負うか、という問題について、さいたま地裁が契約義務を否定する判決を出した。

これまで、NHKの現場は「ワンセグでも受信料が必要」というスタンスで集金活動にいそしんでいたように思うし、それでいて、携帯電話保有者のうち「ワンセグで受信料を払った」という者はほとんどいない、というおかしな状況が続いていたから、今回、朝霞市議が提起した訴訟の結果白黒がはっきりするのであれば、個人的にはこれで良いと思っている。

あくまで放送法64条の「設置」という文言の解釈をめぐる判断のように思われるだけに、上訴された場合、異なる解釈が示される可能性も相当程度残っている、ということは肝に銘じた方が良いと思うが、判決の結論がどうあれ、ワンセグで受信料を払う人が増えることはない、ということだけははっきりしている。

新国立競技場」問題で円満解決か?

設計が白紙撤回され、その後に露呈した五輪関係の様々なトラブルの引き金ともなった感のある「新国立競技場」問題で、日本スポーツ振興機構(JSC)が一定の総括を行ったようである。

日経紙に掲載された記事*6では、白紙撤回した計画に支出した費用が約68億6000万円であったことなどが公表された旨報じられているが、中でも興味深かったのは、旧計画でデザインを担当したザハ・ハディド氏事務所側からの「新計画のデザインが旧計画に類似している」という指摘*7「円満に解決した」というJSCのコメントが紹介されているくだりである。

何をどうしたから「円満」ということになったのか。新計画の設計に際しても一定の報酬を支払う、という整理をしたのか、それとも他の方法で話を丸めたのか。

本当にこれで解決したのだとすれば、ザハ・ハディド氏本人が本年3月に急逝したことも背景にあったりするのかな、と推察したりもするところであるが、今後のこともあるだけに、できることなら何らかの形でことが明らかにしてほしいなぁ、と。

名将・石井正忠監督の悲劇

選手時代は、草創期のJリーグ鹿島アントラーズの主力選手として、攻撃から守備までフィールドを縦横無尽に駆け巡る活躍で名を馳せ*8、引退後は長く古巣でコーチ経験を積み、昨シーズン途中に監督に抜擢されるや否や、昨年のナビスコ杯優勝、今年の第1ステージ優勝という素晴らしい結果を残してきた石井正忠監督。

この1年で「古豪を復活させた名将」としての地位を一気に固め、日の当たる舞台に出てきた感があったのだが、ここに来て「心労による体調不良」で辞任、という衝撃的なニュースが入ってきた。

直前に選手交代をめぐって金崎選手にキレられる、という騒動はあったものの、その試合も終了間際の決勝ゴールで湘南ベルマーレを見事に葬り去っており、選手交代も含めて采配自体は高く評価されている。また、1stステージに比べると2ndステージは出だしからもたついているものの、年間トータルでJ王者になれる可能性はまだまだ残っていた。

同じ監督交代でも、刀折れ矢尽きた感のあったグランパス小倉監督とは状況が全く異なる。

なのになぜ・・・。

最近存在感を失いつつあったチームに“ジーコイズム”を注入し、アントラーズを再び戦う集団に作り上げる、という手腕を発揮していた裏で、神経を激しくすり減らしていたのだろうか。

「フル代表にも日本人監督を!」という声が強まっている中、世代やキャリアの差こそあれ、石井正忠小倉隆史といったJリーグ草創期にレギュラーを張っていた世代の監督が、志半ばで現場を去っていくのは何とも寂しいわけで、特に石井監督には、ここでの一頓挫をまた糧にして、再度現場で指揮を執る姿をもう一度見せて欲しいと思うのだが、その願いはかなうのだろうか。

*1日本経済新聞2016年8月28日付朝刊・第2面。

*2:「知事の本気度」を問う毎日新聞の記事などは、もっとやれ、と煽っているように読めなくもないが、いずれにしても知事に全面的な信頼を置いた記事ではない(http://mainichi.jp/articles/20160827/k00/00m/040/127000c参照)。

*3:あくまで機械に関する一般論だが、先の震災直後に当時の首相が浜岡原発を停止させたときも同じことを考えていた。

*4:むしろ、稼働を止めて守備につくスタッフが手薄になったところで災害に直面する方が、対応が厳しくなることだって考えられる。

*5日本経済新聞2016年8月27日付朝刊・第12面。

*6日本経済新聞2016年8月27日付朝刊・第39面。

*7:詳細はhttp://d.hatena.ne.jp/FJneo1994/20160115/1453051031参照。

*8:当時ヴェルディ勢が固めていた攻撃寄りのMFということもあって日本代表には縁がなかったが、“いてほしくないところに顔を出す”典型的な選手で、相手チームのサポーターにとっては実に憎たらしいタイプの選手だった。

2016-08-26

[][] 「ポケコイン」に法規制の網をかけることに合理性はあるのか?

ポケモンGO」のリリース直後から話題になっていたことではあるが、遂に金融庁も表だって動き出した模様である。

「人気のスマートフォンスマホ)向けゲーム『ポケモンGO』に出てくる『ポケコイン』と呼ばれるゲーム内通貨が、プリペイドカードと同じ資金決済法上の『前払い式支払い手段』に当たるかどうかに金融庁が関心を示している。同庁は実態の把握に向け、ゲームを提供するナイアンテック社にヒアリングを始めた。」(日本経済新聞2016年8月26日付朝刊・第5面)

いわゆる“ゲーム内通貨”が資金決済法の規制を受けるかどうか、という問題については、今年の春にLINE社が標的となったばかりで、しかも、LINE社の場合、直接お金を払って買うわけではない「宝箱の鍵」等のアイテムの通貨性が問題視されたのに対し、今回の『ポケコイン』は、そのままズバリお金で買えてしまうもののようだから、資金決済法第3条1項の「前払式支払手段」の定義*1にはより近く、状況的には厳しいように思われる*2

いま思いつく反論としては、「ほとんどのユーザーは、わざわざお金を払って「ポケコイン」を集めるようなことはしておらず、あくまでゲームを進める過程で入手できる“おまけ”に過ぎない、そして、お金を払って「ポケコイン」を入手する、という行為は、“ゲーム内通貨の入手”というよりは、“ゲームの進行を早めるためのオプションチャージを払う”と評価されるべき行為だから(「ポケコイン」自体に対価性がある、ということではないのだから)、資金決済法の規制を受けるべき場面には当たらない」といったところだが、頭の固い金融庁財務局の役人に理屈で説明して説得できる自信はない*3

もっとも、資金決済法における「前払式支払手段」の規制が、プリカ法(前払式証票の規制等に関する法律)を継承するものであり、本来、商品券やプリペイドカード*4を念頭に置いたものだったことであることを考えると、一アプリ内で完結するゲーム内のアイテムを「前払式支払手段」と定義すること自体、自分は大いに疑問を感じている*5

そして、2010年の資金決済法事務ガイドライン見直し*6の際にも同じことを考えていた方はいたようで、パブコメでも「適用除外」を主張する意見は当然のように出されていた*7

だが、時は、「消費者保護」を優先したのか、当時のパブコメに対する当局の冷淡な回答が暗示していたとおり、一気にゲーム内通貨に網をかける方向に傾いてしまっているようである。

自分は、そもそもアプリを進めるためにお金を出して有料アイテムを購入すること自体滅多にないし、お金を払って買ったものは即時消費してしまう。

また、ヘビーユーザーの中には、課金アイテムの購入が常態化している人もいるのかもしれないが、それでも、ゲーム内でそれを使わずに未使用のまま溜め込む人、というのは相当限られているはず。

そうなると、ここに資金決済法の網をかぶせることで保護される消費者、というのが一体どれだけいるのか? という疑問も出てくるのだが、それでも、日本資金決済業協会のホームページhttp://www.s-kessai.jp/cms/consumer-giftcard-prica-netprica/payback)を見ると、サービスを終了したゲームの払戻公告であふれてしまっているわけで・・・*8

できることなら、米国のベンチャー精神を体現する会社として、ナイアンテック社には、理論武装して、金融庁による杓子定規的な法適用と徹底的に戦っていただき、現状の運用に一石を投じていただけないものか、と思う次第である。

*1:第1号 証票、電子機器その他の物(以下この章において「証票等」という。)に記載され、又は電磁的方法(電子的方法、磁気的方法その他の人の知覚によって認識することができない方法をいう。以下この項において同じ。)により記録される金額(金額を度その他の単位により換算して表示していると認められる場合の当該単位数を含む。以下この号及び第三項において同じ。)に応ずる対価を得て発行される証票等又は番号、記号その他の符号(電磁的方法により証票等に記録される金額に応ずる対価を得て当該金額の記録の加算が行われるものを含む。)であって、その発行する者又は当該発行する者が指定する者(次号において「発行者等」という。)から物品を購入し、若しくは借り受け、又は役務の提供を受ける場合に、これらの代価の弁済のために提示、交付、通知その他の方法により使用することができるもの 第2号 証票等に記載され、又は電磁的方法により記録される物品又は役務の数量に応ずる対価を得て発行される証票等又は番号、記号その他の符号(電磁的方法により証票等に記録される物品又は役務の数量に応ずる対価を得て当該数量の記録の加算が行われるものを含む。)であって、発行者等に対して、提示、交付、通知その他の方法により、当該物品の給付又は当該役務の提供を請求することができるもの

*2:あれだけ話題性のあるゲームだから、「1000万円」という最低額基準もあまり意味はなさないだろう。

*3:確か「課金しなくても楽しめる」というのが「ポケモンGO」のコンセプトだったはずだから、日本国内での「ポケコイン」の有償頒布をやめてしまう、というのも一つの手だろうが、それでゲームのビジネスモデルが維持できるのかどうか、は何とも言えない。

*4:自家発行型か、第三者発行型であるかにかかわらず、これらはある程度広い範囲の店舗なりサービスなりで使うことが予定されているものである。

*5:特定の事業者のリリースする複数のゲームに共通して使えるようなモノであれば話は別だが。

*6http://www.fsa.go.jp/news/21/kinyu/20100301-2.html参照。

*7http://www.fsa.go.jp/news/21/kinyu/20100301-2/01.pdf参照

*8:机の中に死蔵している可能性が高く、より広範な告知の必要性が強い商品券等の公告が完全に埋もれてしまっているのは、率直に言っていかがなものかと思う。

2016-08-25

[]2016年8月25日のメモ

大王製紙内部告発者の解雇無効訴訟(控訴審

大王製紙の内紛に絡んで、降格、解雇処分を受けた元課長の男性に対する控訴審判決のニュースが出ている*1

記事によれば、「東京高裁山田俊雄裁判長)は25日までに、解雇を無効とした一審・東京地裁判決を支持し、双方の控訴を棄却した。」とのこと。

インターネット版の記事*2では、「判決は正当に行われた人事異動を無効としており、承服できない」という会社側のコメントも掲載されており、一審判決中で「告発の内容が真実と認められない」という認定もなされていることもあって、ネットで検索すると結論に対するブーイングも一部では出されている。

だが、既に裁判所HPに掲載されている一審判決(東京地判平成28年1月14日)*3を読んでもなお、「正当に行われた人事異動」などと言うセリフを肯定する人がいるとしたら、それはちょっとどうかな、と個人的には思うところ。

原告は元々大王製紙の創業2代目の現役時代に秘書を務め、問題となる配転行為を受けるまでは経営企画部の課長というポジションにあった人物。

にもかかわらず、会社は、創業家側に情報を流した、という理由で、原告を北海道赤平市にある子会社の営業所(業務は資材の保管、入出庫及び運送業務の受託と再委託、という原告が入社以来約25年間全く経験してこなかった内容で、しかも「所長」という肩書はあるものの実質的に一人で業務を行わなければならない)に出向させる、という絵にかいたような懲罰人事を行い、それに応じなかったことをもって懲戒解雇、という最終手段を行使している*4

「それが何だ。就業規則に違反した人間を飛ばして何が悪いんだ。」という価値観の方ももちろんいらっしゃるだろうけど、自分はそういう考え方に一切相容れる余地はないと思っているし、この事実関係で会社を勝たせなかった裁判所の判断は間違っていないと思っている。

いずれ高裁判決もアップされるだろうから、会社側の主張がどこまでエスカレートしているのか、といった点なども楽しみにしつつ、待つことにしたい。

嫡出否認の規律をめぐる違憲訴訟

嫡出否認の訴えを夫にだけ認める民法の規定は違憲である、として、神戸市の60代女性ら4人が国賠訴訟を提起したようである*5

関連する民法の規定は以下のとおり。

(嫡出の推定)

第772条 妻が婚姻中に懐胎した子は、夫の子と推定する。

2 婚姻の成立の日から200日を経過した後又は婚姻の解消若しくは取消しの日から300日以内に生まれた子は、婚姻中に懐胎したものと推定する。

(嫡出の否認)

第774条 第772条の場合において、夫は、子が嫡出であることを否認することができる。

前の夫との親子関係成立を避けるために「無戸籍」となることを余儀なくされた子供たちがたくさんいる、という問題が社会的に注目を集めている中、再婚禁止期間については、(最高裁違憲判決を受けて)先の国会民法733条等の改正がなされたものの、肝心の嫡出推定規定がそのままでは意味がない、という指摘はあちこちでなされていたところで、今回の訴訟も、憲法14条1項を根拠に774条の違憲性を問うことを通じて、772条に基づく嫡出推定の規律から子と母を解き放つ、ということに真の狙いがある、ということなのだろう。

個人的には、「身分関係の安定」=「子の福祉に適う」とは必ずしもいえなくなっている現代において*6、嫡出推定規定を維持すること自体の合理性が問われるべきだろう、と思っていて、出生時に届け出られた者を父親として記載する、ということで良いではないかと思ったりもするのだが*7、さすがにそこまで到達するのはいつの時代になることやら・・・。

*1日本経済新聞2016年8月25日付夕刊・第15面。

*2http://www.nikkei.com/article/DGXLASDG24H79_U6A820C1CC1000/

*3http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/011/086011_hanrei.pdf

*4:これはあくまで地裁判決における事実認定に基づく記述であり、高裁判決でその認定がどうなったか、ということはまだ確認できていない。

*5日本経済新聞2016年8月25日付夕刊・第15面。

*6:要するに、「誰でもいいから父親が定まりさえすれば子供の生活がより安定する」という仮定自体がもはや成り立たない時代になっている、ということ。

*7:その後、戸籍の編製にどう反映するかはいろいろ難しい面もあるだろうが、そもそも家族単位で戸籍を作ること自体をやめてしまえば、それを気にする必要もない(親子関係の連続性は、マイナンバーで紐付けすることで特定することもできるのだから)。

2016-08-24

[][] 原子力損害賠償制度はどこに向かうのか? 〜“中間報告”とりまとめの報に接して

2011年の「3・11」以降、長年の眠りからたたき起こされ、“生きた法律”として現在に至るまでフル活用されているのが「原子力損害の賠償に関する法律」である。

東日本大震災直後は、不法行為法の中でもかなり異色の規律が設けられている背景や、「異常に巨大な天災地変」の文言の解釈等が話題となり、立法経緯の掘り起しも含めてかなり議論が盛り上がったものだが*1、最近は「事業者の無限責任」を前提とした解釈運用が基本的に定着しているし、争点が「事業者がどこまで責任を負うべきか?」ではなく「被災者がどこまで救済されるべきか?」に移って久しい状況にある。

だが、そんな中、原発事故に関する賠償ルールの根本を見直そう、という動きが出てきていて、昨年5月から内閣府原子力委員会の「原子力損害賠償制度専門部会」*2で議論が進められていることはあまり知られていないように思う。

かくいう自分も、議論が始まるか始まらないか、という頃に、何で文部科学省所管の原子力損害賠償紛争審査会ではなく、原子力委員会の専門部会でこの議論をするのだろう?ということとか、「有限責任化」を唱える論稿がやたら目に付くのが気になっていたくらいで、その後議論が始まってからはフォローするのをすっかり忘れていたくらいのレベルだった。

そんな中、日経紙に、「専門部会が中間報告をまとめた」という記事が掲載された。

原子力発電所事故の賠償制度の見直しを進める内閣府の専門部会は23日、中間報告をまとめた。これまで1200億円を上限としてきた政府補償の増額を検討する方針を盛り込んだ。一方、事故を起こした電力会社に金額の制限なく賠償を負わせる『無限責任制』をやめるかどうかは結論が出なかった。」(日本経済新聞2016年8月24日付朝刊・第5面、強調筆者)

先に引用した専門部会のHPを見ても「中間報告」という標題の資料は掲載されていないのだが、おそらく察するに、「原子力損害賠償制度の見直しの方向性・論点の整理(案)」*3がおそらくそれなのだろう。これを読めば、記事にあるとおり、原子力事業者の責任については、委員の意見も分かれており、本文でも両論併記のような書き方になっていることが分かる(論点整理の5〜8頁あたり)。

ちなみに、記事の見出しだけ見て、“これは東電救済策か?”と拳を上げかかった方がいるかもしれないが、今行われている見直しはあくまで「将来」に向けたものであって、仮に今回の議論に基づく原賠法の改正がなされたとしても、既に兆単位の賠償金が支払われている「3・11」事故に遡って適用される余地はない、というのが自分の理解である。

また、記事の中では「原子力事業者の有限責任化」を主張する意見があることも紹介されているが、前記論点整理をよく読めば、「有限責任化」を主張する論者でも“事業者免責”の天井は相当高額なものを想定しているようだし、逆に「無限責任維持」を主張する意見は、同時に国の負担額(1200億円)を大幅に引き上げる提案とセットになっている。

そして、これらの議論は、あくまで「原発事故の責任を負うべきは電力事業者なのか、国なのか?」という責任分担の問題を論じているものに過ぎず、被災者救済を後退させることまでは意図されていないように思われる。

なので、今のタイミングであまりうがった見方をするのは良くないのだが、一方で、この制度をどう定めるか、ということは、究極的には電力事業者が原発の新設・稼働に関する経営判断を行う上での大きなポイントとなってくるだけに、そういった動きと合わせて見ていく必要があるのは間違いない。

機会があれば、もう少しこれまでの議論をきちんと読み込んだ上でコメントできれば、と思うところである。

[]2016年8月24日のメモ

「執行役員」の是非

日経紙が2日にわたって「曲がり角の執行役員制度」というコラムを掲載していた*4

「上」で散々っぱら落として「下」でちょっと引き上げる、というありがちなコラムの構成パターンだが、結論としては、“よほど上手に使わないと意味がない”といった雰囲気(どちらかと言えば落とし気味)になっている。

確かに、会社に雇用されている単なる使用人が「役員」を名乗るのはどうなの?といった点については自分も同意するのだが、今、大企業で採用されている「執行役員」制度の多くは、「取締役会のコンパクト化の過程で、本来であれば「会社法上の役員」になるにふさわしい能力と権限を持っているにもかかわらず取締役に選任されない幹部社員が大量発生した」ことに起因して出来上がっている、という側面もあり*5、いかに優れた人物でも相応の“箔”がないと表舞台に出にくい、という今の産業界の現実を鑑みると*6、そう簡単に「無意味」ともいえないように思うところ。

いずれ日本企業の人材希薄化が進んでいけば、“役員”を名乗るにふさわしい人材も減っていくだろうから、そんなに心配しなくても自ずから消えていく役職のような気もするのだが、この辺はもう少し様子を見ていく必要があるのかもしれない。

期待され過ぎた“レフティモンスター”の悲劇とカリスマの復帰

開幕当初こそ好調だったものの、その後ズルズルと黒星を積み重ね、Jリーグ開幕当初から守ってきた「1部」の地位の維持がかなり危うくなってきている今年の名古屋グランパス

就任1年目、しかもGMを兼任する“全権監督”だった小倉隆史監督への風当たりは当然強く、一度は球団社長が交代を強く否定したこともあったものの*7、とうとうここに来て事実上の解任、という事態に相成ってしまった。

「J1名古屋小倉隆史ゼネラルマネジャーGM)兼監督(43)が成績不振によりシーズン途中で休養することが23日、チーム関係者への取材で分かった。クラブ側から休養するように伝えられ、事実上の解任といえる。」(日本経済新聞2016年8月23日付夕刊・第13面)

残留ラインに大きく水を開けられた状況を考えると、後任がかつてストイコビッチ監督の下で副官を務めたジュロブスキー氏だからといって、とても明るい未来が開けているとは言えない。そして、このままJ2に降格するようなことになれば、経験の浅い小倉氏にチームの命運を委ねてしまったフロントの引責も避けられないだろう*8

“監督交代”の直後に発表された「田中マルクス闘莉王選手復帰」のニュースがグランパスサポーターにとっての唯一の光明だろうが*9、かつて愛するチームの“J2落ち”を味わった身として言わせてもらえば、窮地に立たされた時のこの手の“補強”がうまく行くケース、というのは実はほとんどないわけで、加えて闘莉王選手がその名の通り闘志を前面に出す選手だけにこういう場面では空回りしてしまう姿の方が目に浮かんでしまう。

J1の結果よりもJ2の結果の方が気になる生活に突入してはや何年・・・という自分にしてみれば、“ようこそ!”と両手を挙げて歓迎したい気満々なのだが、J草創期にアーセン・ベンゲルが率いて躍進し、その後も、メチャクチャ強いわけではないが降格のリスクも感じない“超安定”チーム*10として長くJ1の歴史に名を刻んできたチームが、むざむざと降格するのを見るのはやはり忍びないので、叶いそうもない奇跡を半分くらい期待しつつ、高みの見物を決め込むことにしたい。

*1:当時の雰囲気を伝えるエントリーがhttp://d.hatena.ne.jp/FJneo1994/20110414/1302933056以降の三部作である。

*2:設置の趣旨はhttp://www.aec.go.jp/jicst/NC/senmon/songai/songai_senmon.pdf参照。これまでの議事録等は、http://www.aec.go.jp/jicst/NC/senmon/songai/index.htmに掲載されている。

*3http://www.aec.go.jp/jicst/NC/senmon/songai/siryo12/siryo12-1.pdf

*4日本経済新聞2016年8月23日付朝刊・第12面。2016年8月24日付朝刊・第12面。

*5:したがって、取締役同様、就任時に会社を退職して使用人としての地位を返上した上で委任契約を締結している、というパターンはかなり多いのではないかと思う(日経紙のコラムでは、一部の企業しか「委任型」を採用していないような書かれ方になっているが・・・)。

*6:この点については、「相談役」等の話と同じなのだが、「執行役員」の場合、まさに現役バリバリの世代の方が多いだけに、より“箔”がないと気の毒、という面はあるように思う。

*7http://www.soccerdigestweb.com/news/detail/id=17665参照。

*8:経験豊富な西野朗監督の後任に“新人”を据えて一気に転落した2012年シーズンのガンバ大阪、という分かりやすい前例があったはずなのに、同じ落とし穴に嵌ってしまうのだから、まぁ何と言うか・・・。“レフティモンスター”として鳴らした全盛期から五輪予選直前の悲劇を経て甲府の星になるまで、自分は同世代のスターとして小倉選手に声援を送ってきたし、特に2000年シーズンはどん底だった我が贔屓チームの残留に貢献してくれた功労者の一人でもあったので、個人的には全く悪印象を持っていないのだが、「指揮官になるためのステップを踏まずに監督」というのはやはりサッカーの世界では厳しい。

*9リオ五輪の際に、現地でのゲストコメンテーターか何かで出ているのを見て全然普通にプレーに復帰できそうな雰囲気だな、と感じたのだが、おそらくその頃にはすでに復帰に向けた準備を始めていたのだろう。そして、GM兼監督の就任直後に電撃退団した選手が、その“解任”と共に復帰してくる、というところが、様々な憶測を呼ぶところである。

*10:とはいえ、改めて過去のチーム成績を見ると、何度か降格の危機に直面したこともあったようだが、親会社の強さゆえか、あまりそういうイメージを抱かせるチームではなかったように思う。

カスタム検索