企業法務戦士の雑感 このページをアンテナに追加 RSSフィード

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2016-06-25

[][] BLJ「100号」が思い起こさせてくれた記憶と、未来へ向けた期待。

ここのところ、法律雑誌に目を通す機会もほとんどなかったのだが、ようやく少し時間がとれたので、先月発売の「Business Law Journal」2016年7月号を開いてみた。

「100」という節目の通算号数が、表紙で大きくクローズアップされた記念号。

14〜15頁に掲載された「年表」から9名の読者コメントまで、ささやかな「記念企画」も組まれている。

最近では、ふと思いついた時にくらいしかこの雑誌を手に取らない不真面目な読者になってしまっている自分だが、創刊当初からしばらくは、この雑誌が「法律雑誌業界」に持ち込んだ実務ベースの斬新な切り口だとか、個性的な紙面構成を熱狂的に支持していて、創刊号を取りあげたエントリー(http://d.hatena.ne.jp/FJneo1994/20080301/1204331918)以降、このブログでも何度取り上げたか分からないくらい言及してきた。

年表(14〜15頁)を見ると、創刊当初の記憶が生々しく蘇ってくるし、その背景にあった時代状況まで思い返すことができて*1、いろいろと感慨深い*2

この8年の間に、企業法務を取り巻く環境は大きく変わってきているし、自分自身の立ち位置も大きく変わった。それでも、あの時感じたインパクトは決して色褪せていない。

このBLJという雑誌が世に出るまで、法律雑誌等で語られる「実務」といえば、あくまで、弁護士や裁判官等の視点からの「実務」でしかなかった。

そして、そういった「実務」の情報は、日々、企業活動の現場で直面する問題に向き合っている担当者にとって、“役に立たない”とは言わないまでも、“少しピントのずれた”“痒いところに手が届かない”ものでしかなかったし、たまに掲載される“企業実務者”の手による論稿も、旧来的な意味での「実務」視点に合わせたものになってしまっていることが多かった。

そこに、本当の意味での、現場レベルでの“実務”視点を持ち込んだのが、BLJという雑誌だったと言えるだろう。

匿名の担当者コメントだったり、匿名座談会だったり、と、パターンは様々なれど、これまで活字になっていなかった生々しい運用の実態だとか、担当者の本音ベースでの考え方が拾い上げられて記事になる、というのは、非常にセンセーショナルな出来事だったし、「契約」とか「コンプライアンス」周りの特集を組む場合でも、総花的に各論を展開させるのではなく、なるべく実務的に引っかかりやすいポイントに力点を置いて取り上げようとする、というスタンスも印象的だった。

保守的で既得権益層が凝り固まっていた法律雑誌業界に、それまでにない新しいコンセプトを掲げて切り込んでいく、というのは、並大抵の覚悟ではできないことだったと思うが、それを貫いて一定の読者層を確保し、「100」にわたる発行号数を積み重ねてきたLEXIS NEXIS社編集部の功績は、率直に称えられるべきだと思う*3

どんな雑誌でもそうであるように、創刊当初の斬新な発想を、ずっと変わらずに維持し続けることは難しい。

BLJ誌もそれは例外ではないようで、企業内の純粋実務家から、実務に興味のある法曹関係者や法科大学院生等にまで読者層が多様化したり、雑誌としてのステータス・認知度が向上していく中で、最近では“らしくない”特集記事や連載記事を目にすることが多くなったような気がする*4

また、逆に、創刊当初の企画の方向性が維持され続けられているがゆえに、読者層のポジションの変化(一担当者→管理者層)に対応しきれていない、というところもあるのではないか、と自分は感じている。

もちろん、8年前の自分と同じようなポジションで、今、BLJを熱心に読んでいる読者が大勢いるのは承知しているし、この辺はどうしようもないところだと思うのだが、基本的なコンセプトを維持しつつ、読者層のポジションの広がりにもう少し目を向けた記事構成を考えても良い頃に差し掛かっているのではないだろうか*5

これから各企業の中で「企業法務」という部門が果たす役割がどう変わっていくのか、自分は予断を許さない状況だと思っているし、法の担い手、使い手としてのアイデンティティを持つ人々の裾野が急速に狭まって行く中で、“実務系法律雑誌”というカテゴリーを未来永劫にわたって守り続けるのは、決してたやすいことではないと思うのだが、せめて「200号」の声を聞く頃までは、まだまだ生き残っていてほしい雑誌だと思うだけに、このBLJ誌が更なる変革を遂げて次の一歩を踏み出していただくことを、今はただ願うのみである。

*1:2008年当時はまだ「消費者庁」もこの世に存在していなかったのだな、という事実等に接すると、創刊が随分昔のことのように思えてくる。実際、もう8年も前のことなのだが・・・。

*2:昨年の「消費者契約法改正」の方はトピックとしてフォーカスされているのに、債権法改正がなぜ埋もれているのか、というところなど、若干の突っ込みどころはある。あと、誤植も1カ所発見(笑)(2009年4月号→2010年4月号)。

*3:そして、こういったBLJ誌の大胆な着想は、旧来的な法律雑誌の編集部の思考にも大きな変革をもたらしたように思う。最近のジュリストの特集の組み方や、各種法律雑誌の座談会の記事を見れば、「多色刷り化」以上の影響をもたらしている、ということが良く分かる。当事者がそれを認めるかどうかは別として。

*4:創刊当初、海のものとも山のものとも分からないこの雑誌に、積極的に原稿を載せることを希望する法曹関係者はそう多くなかったと推察するが、今は逆に頼まれなくても書きたい、という人の方がむしろ多いんじゃないかと思う。それが悪いことだとは言わないが、“法曹関係者に簡単に原稿を頼めるようになった”ことが、“名もなき担当者の声をこまめに拾う”ことへの意欲を低下させていないか、ということは、常に気にかけておく必要がある。

*5:昔の「○○時代」とか、女性ファッション誌のように、こまめに世代層に合わせて雑誌を創刊せよ、というのはさすがに酷だと思うが、プレーヤー視点を離れたマネージャー視点からの特集を定期的に組むくらいの趣向はあっても良いのではないか、と思ったりしている。

2016-06-17

[][]本当の凄さは“日米通算”記録の先にある。

マイアミ・マリーンズ所属のイチロー選手がパドレス戦で2安打し、日米通算の安打数でピート・ローズ選手が持つメジャーリーグ記録4256安打を抜いた、ということが「偉業」として、日本国内のあらゆるニュースメディアで取り上げられている。

海を渡ってから16シーズン、これまで数々の記録を打ち立ててメジャーリーグの歴史を塗り替えてきたイチロー選手も既に42歳。

日本の中だけでなく、現地の目の肥えたファンの中でも既に“伝説”の域に達している選手とはいえ、米国でスタートラインについたタイミングの遅さゆえ、メジャーリーグの数字だけで比較してしまうと、まだ“伝説”の域には及ばない。

それゆえ、日本のメディアがNPB時代の数字で“下駄”をはかせたくなる気持ちは分かるのだが・・・。

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2016-06-05

[][]それでも、モーリスは強かった。

昨年の安田記念で初めてのG1制覇を成し遂げて以降、マイルCSと2つの香港G1を制す、という偉業を成し遂げ、マイラーというジャンルを超えて今の日本競馬を代表する馬になったモーリス。その馬が1年後、再び同じレースに参戦する、ということで、例年ならほぼフルゲートの賑やかなレースになるはずが、僅か12頭、という規模になり、人気面でも1.7倍、と抜けていたのが今年の安田記念だった。

それが、まさかの2着・・・。

マイルで7戦6勝。4歳春から7連勝中でG1も4連勝、となれば、もはや疑問符を打つことが許されない存在だったのは確かだが、海外遠征帰りの初戦で、ペースが遅くなりがちな少頭数の構成、しかも馬場は荒れ気味、と波乱を呼びそうな要素は間違いなくあった。

勝った馬が、対抗視されていたリアルスティールでもサトノアラジンでもなく、忘れられかけていた6歳馬・ロゴタイプだったことで(さらに過去の傾向からすると馬券対象には入ってこない7歳馬・フィエロが3着に食い込んだことで)、単勝3,690円、3連単15万円超、という大波乱となってしまったが*1、仮にもう少し普通の流れでレースが進んでいたとしても、この日のモーリスの出来だと、競り負ける結果になっても不思議ではなかっただろう*2

要するに、どんなに強い馬でもそんな時はある、競馬に絶対はない、という当たり前のことが分かった、というだけの話なのだが、それでも、遥か後方でもがくリアルスティールを脇目に、フィエロの猛追をハナ差しのいで「2着」というポジションを守り切った、というところに、一流馬ゆえの凄さを見たような気がしたのもまた事実なわけで、ここから先、秋に向けてまだまだこの馬の牙城は簡単には揺るがないだろうな、と思わせてくれたレースでもあった。

おそらく、今日、勝ち星を掴めなかったベリー騎手が、次もこの馬に騎乗することはないだろうけど・・・*3

*1:果敢に逃げを打ったロゴタイプが、1000m・59秒1、というG1短距離戦らしからぬスローペースを作り出したことで、後方待機策をとった有力馬たちには実に気の毒な結果になってしまった。

*2:10着のレッドアリオンまでが上がり33秒の脚を使っている中で、モーリスの上がりタイムは34秒0、と逃げたロゴタイプにも劣っている。

*3:今年の春シーズンは、大本命と目された馬に騎乗した外国人騎手が、痛い星を落とすパターンが目立ったが、ここでもそのジンクスが承継される結果になってしまった。

2016-05-31

[]2016年5月のまとめ

サミットを挟んで世の中の沈滞したムードがより加速していく中*1、降り積もる仕事の山と格闘し続けた5月。

こういう時は、会社を一歩離れたらとにかく無理せずに体を休めることを考えるのが吉、ということで、どんなに飛びつきたいネタがあっても睡眠時間の確保を優先したがゆえに、相変わらずの状況なわけだが、週末部屋にこもって仕事に充てる時間が多かった分、春のG1シーズンのビッグレースの映像をほぼリアルタイムで見ることができたのは、不幸中の幸いだった。

ここから1カ月も、またどうしようもない日々が続くことは覚悟しているのだけれど、何とか耐えしのいで、次のステージへの足掛かりをつかめれば、と思っているところである。

今月のページビューは、過去記事へのアクセスが時々降って湧いたこともあり22000件強、ユニークユーザーも18000人超。

<検索語(単語)ランキング>

1.圏外失明 152

2.圏外日ハム 125

3.→ 著作権 113

4.圏外札幌ドーム 105

5.↓ 企業法務戦士 95

6.↑ 裁判 90

7.↑ 訴訟 82

8.圏外日本ハム 81

9.↓ 法務 81

10.圏外打者 78

とにかく、札幌ドームファウルボール訴訟への関心が高かったのだなぁ・・・ということで、これについてはまたどこかで触れたいと思っているところである。

*1:唯一の光明は、オバマ大統領広島訪問、というニュースだったが、肝心の大統領の本国でトランプ旋風が吹き荒れているのを見てしまうと、この訪問が「未来」にとってどれほどの意味を持つものになるのか、胸を張って語れないのが寂しいところである。

2016-05-29

[][]「5強」というファイナルアンサー。

皐月賞の結果が出る直前までは「3強」、その後、皐月賞馬・ディーマジェスティも交えて「4強」というフレーズで語られることが多かった今年の3歳牡馬。

ダービーの人気順を見ても、ディーマジェスティサトノダイヤモンドマカヒキの3頭が3.5〜4倍と拮抗した人気で、5.5倍のリオンディーズまでが10倍以下のオッズ、と、まさに「4強」の触れ込みに即した人気が形成されていた*1

個人的には、ディーマジェスティの人気は皐月賞でのパフォーマンスに引きずられ過ぎ、という印象で、ローテーション的にここに照準を合わせてきたサトノダイヤモンドが断トツの本命、末脚が切れるマカヒキがその次、後は上位に食い込むのはちょっと厳しい、という予想だったから、実質的には「2強」と言えば良かったのではないか、と思っていたのだが、ディーマジェスティにしても、リオンディーズにしても、これまえのG1レースを制したときのインパクトが強烈だったうえに、蛯名正義騎手ミルコ・デムーロ騎手、と、ダービーの主役となるにふさわしい鞍上に恵まれていたことが、この人気分布を生み出したのだろう。

例年なら皐月賞上位馬でもダービー本番までの負傷で回避を余儀なくされたり、別路線に転向したりすることがあるのだが、今年に関しては、1冠目の主役たちが皆、無事にダービーまで辿り着いており、これまでの3歳世代の“歴史”がそのままダービーまで持ち込まれて激突することになった。

そんな背景もあって、近年稀に見る混戦ムードの中で、メディアの煽り以上に盛り上がったことは間違いない。

終わってみれば、好位置から最後の直線で33秒3、という実力通りの豪脚を見せたマカヒキが堂々の優勝。

落鉄の不運に泣いたサトノダイヤモンドハナ差の2着で、直線の追い出しで進路を阻まれたディーマジェスティが少し開いた3着、と、上位3頭の構成は皐月賞と全く同じ結果となった。

前週のオークス同様、先行勢が、意外性のないペース(1000m60秒ジャストくらい)であまりに淡々と澱みなく進んでいったゆえに、事前の盛り上がりに比して非常に落ち着いたレースとなったし、その意味で少し物足りなさを感じたレースでもあったのだが、そういう状況だったからこそ、最後の直線で馬本来の切れ味が十分に引き出すことができたわけで、特に川田騎手ルメール騎手がしのぎを削り合った上位2頭のたたき合いは、“静かな名勝負”として今後しばらくは語り継がれることになるはずだ。

そして、興味深かったのは、上位3頭だけでなく、4着、5着の馬までもが皐月賞と全く同じ組み合わせになったこと*2

皐月賞とは真逆の“後方待機”状態となったリオンディーズが、最後の直線で最速の上がりを叩き出して紙一重の差で掲示板を死守した、ということにもびっくりしたが、距離的にそろそろ限界だろう、と思っていたエアスピネルが堂々の4着に食い込んだことには心から驚かされた*3

朝日杯FSの時は1番人気(2着)、皐月賞でもリオンディーズ降着のアクシデントがあったとはいえ人気どおりに4着入線、という実績を残してきた馬が、「7番人気」という低評価に反発するかのようにまたしても掲示板での自分の順位を死守した、という事実が、“前評判に振り回されることのリスク”を我々に突き付けてくれたような気がするし、今年の牡馬クラシックが「3強」でも「4強」でもなく、「5強」であったことを、自らの脚で証明できたのは実に素晴らしいことだったと思う。

今後は、おそらく、夏を過ぎたくらいの段階で、これまでの馬のダメージの大小によって、馬ごとの復帰スケジュールに違いがでてくるだろうし、目指すレースのローテーションも変わってくるだろうから、この5頭が揃うのは今回が最後、ということになっても不思議ではないが、たとえそうなったとしても、勝者以外の力が拮抗した“脇役”として、他に4頭も“役者”がいた、ということは、忘れずにおきたいところである。

*1:5番人気は毎日杯京都新聞杯、という別路線から臨んだダノンシャンティ産駒・スマートオーディンだったが、11.7倍、とちょっと離れた人気に留まっていた。

*2:長い間、競馬を見てきたが、クラシック2戦でここまで上位陣の顔ぶれが変わらなかったこと、というのはちょっと記憶にない。

*3:そもそも、最後の直線で武豊騎手に操られたこの馬が抜け出してきた時は、そのまま大波乱を巻き起こすか・・・と思えてしまうくらい、万全の競馬だった。

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