企業法務戦士の雑感 このページをアンテナに追加 RSSフィード

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2017-11-14

[]表層的な批判からは何も生まれない。〜神鋼報告書への批判に物申す。

先月の会見での第一報公表以来、「他山の石」事象として注目を集めてきた株式会社神戸製鋼所の「品質」問題だが、先週金曜日(10日)に「当社グループにおける不適切行為に係る原因究明と再発防止策に関する報告書」と題する社内調査の報告書が世に出された。

http://www.kobelco.co.jp/releases/files/20171110report.pdf

全部で28ページ、と、この種の報告書としては比較的コンパクトなつくりながら、そこに書かれている「原因分析」には、どんな企業でも“ハッ”とするようなエッセンスが随所に盛り込まれていて、短期間で、しかも社内調査でまとめ上げた報告書としては秀逸な出来、というのが、これを読んだ時の自分の率直な感想だった。

例えば、「(1)収益評価に偏った経営と閉鎖的な組織風土」という項目の中では、

「権限の委譲を推進する一方で、経営自らが責任をもって工場の困りごとを解決する姿勢を見せなかったため、組織の規律は各組織の「自己統制力」に依存する状況となった。本社経営部門による事業部門への統制が、収益評価に偏っていたことから、経営として工場において収益が上がっている限りは、品質管理について不適切な行為が行われているような状況にあるか否か等、工場での生産活動に伴い生じる諸問題を把握しようという姿勢が不十分であった。この経営管理構造が、「工場で起きている問題」について現場が声を上げられない、声を上げても仕方ないという閉鎖的な組織風土を生んだ主要因と認識する。」(12頁、強調筆者、以下同じ。)

と、大きな企業にありがちな「本社と現場の乖離」が端的に描かれているし、「(3)不適切行為を招く不十分な品質管理手続き」という項目では、

(イ)厳しすぎる社内規格

真岡製造所等、一部の工場では、顧客規格よりさらに厳しい社内規格を設けていた。これは、そもそもより厳しい社内規格を設ければ、事前に工場の工程能力の不足に気づき、それを是正すれば顧客への不良品の流出を防げるとの考えで導入されたものである。しかし、本来出荷基準は顧客規格合格判定であるべきところを、社内規格を満たしていないと出荷できないといった仕組みとしていた。さらには顧客規格の厳格化が進み、一部の製品においては、社内規格はそもそも守れない規格として常態化していたこともあり、社内規格を満たさない場合において、工場の生産能力の見直しや顧客規格の緩和申し入れ等、正規の手続きを行うことなく、改ざんが行われるようになったと考えられる。」(13〜14頁)

と、「遵守できないルール」を設けることの悪弊が端的に述べられている。

そのほかにも、

「当社の担当者は、より付加価値の高い製品を目指す事業方針の下で顧客との共同開発や受注活動、顧客から受けるクレームの処理を行う中で、顧客が実際に求めている性能についての知識を深めていく。そのような中で、担当者の中には製品が顧客仕様に適合するか否かではなく、顧客からのクレームを受けるかどうかが重要であるという考えに変質していった者もいた。」(14頁)

という生々しい話もあれば、

「不適切行為が長期に渡り放置されると、日常の会議等の中で議論されることもなくなった。」(14頁)

といった、どこにでもありそうな“怖い話”もある。

いずれにしても、社内コンプライアンス教育の材料に使える格好のネタを仕入れることができた、という点で、実に素晴らしい報告書だった。

それが、である。

極めて残念なことに今朝の日経新聞朝刊の社説には、以下のような的外れなコメントが並べ立てられている。

「問題の原因を具体的に分析できておらず、品質管理を立て直すには不十分な内容だ。」

「徹底した原因究明がなければ、いくら再発防止策が出されても説得力はない。」

「明らかにしてほしいのは、改ざんの個々のケースについての具体的な経緯だ。どのような立場の社員が何人かかわり、何がきっかけだったのか。こうした実態が社内報告書は解明できていない。原因がはっきりしないなら効果的な対策は立てられない。」

日本経済新聞2017年11月14日付朝刊・第2面)

この社説を読んだ時に自分は思った。

「この記者は本当に『報告書』を読んだのか? そして、企業におけるコンプライアンスのあり方について、本当に理解しているのか?」

と。

確かに、今後、実際に品質偽装に関与した関係者を特定して処分する必要等もあることを考えると、報告書に書かれている事実関係ではいかにも心もとないし、時間が足りなかったことに加え、報告書で書かれているような「自主点検の過程で(の)妨害行為」*1が、詳細な事実の解明を困難にしたところもあるのだろう。

しかし、上記社説の中でも書かれているように、本件は「不正が数十年続いていた」とされる事案なのだから、詳細な調査を行うとしても、歴史を遡って担当者を特定し「やり始めた経緯」を調べるよりも、「やめられずに続けてしまった理由」をきっちり分析する方が、効率的かつ有益なのは間違いないわけで、既に↑でご紹介した「原因分析」のエッセンスにも、その辺は反映されている。

また、あまりに事細かに個別の具体的事実を追いかけすぎて報告書を作成してしまったために、他の会社の関係者から見たら、「他山の石」ならぬ「他の山の出来事」としか受けとめられなくなってしまうような不祥事事案もあるわけで、限られた時間の中で一般に公表するものを作る以上、ある種の割り切りで事案を抽象化することも「教訓の社会全体での共有」という観点からは重要なことだと思われる*2

今後、松井巌・元福岡高検検事長委員長として設置された外部調査委員会によって調査が行われ、年明けには報告書がまとめられることになると思われるが、掘り下げるのであれば、一つひとつの事業所、工場における品質検査数値改ざんのプロセスよりも、「それを行い続け、是正することを拒み続けた関係者の心理」に徹底して光を当ててほしい、というのが、部外の者としての思いである。

*1:報告書2頁。報告書ではこれを機に10月26日に外部調査委員会が設置された、としている。

*2:もちろん、これは「何のために『報告書』を作るのか」という問いとも関係する話なので、一概にこれが正解、ということにはならないのだが・・・。

2017-11-12

[][]決して「悲しい」なんていうなかれ。

いつの間にかルメール騎手の手に落ちたドバイG1馬のヴィヴロスが人気の中心となっていたエリザベス女王杯だったが、スローな展開の中、先行したクロコスミアを最後に捕まえ、ミッキークイーンの火を噴くような追込みを交わしきったモズカッチャンが、初めてのG1に輝く結果となった。

道中の位置取りといい、最後の直線の一追いごとの馬の動かし方といい、名手、ミルコ・デムーロ騎手の良さがこれでもか、というほど発揮されたレースだったが、興味深かったのは、レース後のインタビューでM・デムーロ騎手が、会心の勝利であるにもかかわらず「悲しいです」と漏らしたこと。

背景としては、M・デムーロ騎手が、春シーズン、フローラSオークスと、低人気をものともせずに実績を残し、モズカッチャンを世代のトップホースに押し上げた主戦・和田竜二騎手から手綱を「奪う」形になってしまったこと、そしてよりによって、今日最後の最後で大金星を逃したクロコスミアに乗っていたのがその和田騎手だった、ということから出たコメント、だということだが・・・。

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2017-11-04

[][]不敗神話が消えた後に始まりそうな伝説。

権藤監督が率いる横浜ベイスターズが38年ぶりの日本シリーズ優勝を飾り、「不敗神話」を揺るがぬものにしたのは1998年のこと。

それからずいぶんと長い時が流れ、親会社は変われど定位置は「最下位」というシーズンが続いた時もあった。

そんなチームが、ラミレス監督就任とともに一気に息を吹き返し、昨年11年ぶりにAクラスに食い込んだかと思えば、今年は読売と競り勝って滑り込んだAクラスのポジションをフルに生かし、甲子園で天気と阪神園芸を味方に付けてタイガースを葬り去ったかと思えば、「今年こそ日本一」になるはずだったカープまでをも空気を読まずにCSシリーズでぶち破り、「所詮は鯉のエサ」と舐めていた傍観者たちを横目に、まさかの日本シリーズ出場と相成った。

結果的には敵地での最終戦を待たずに、2勝4敗で敗退、ということとなり、「出場すれば常に日本一」という神話も、3度目にして終焉を迎えることになってしまったのだが、リーグ間格差が拡大し、過去10年でセ・リーグのチームが日本一になったのはたったの2回(いずれも読売)だけ、そして、過去2回のソフトバンク優勝時には、阪神ヤクルトといずれも1勝しか挙げられなかったことを考えると、第6戦の最後の最後まで相手に冷や汗をかかせた今年のベイスターズの戦いぶりは、新たな伝説に値するものだった、というべきなのかもしれない。

個人的には、第2戦まで終わった時点で、あまりにワンサイドになりそうな予感がして、シリーズそのものへの関心が薄れてしまったことをちょっとだけ後悔していたりもする。

そして、両チームを通じて、先発陣では一番キレキレだった今永投手が投げた2試合で、ベイスターズがいずれも星を落としたことを考えると、ちょっとした展開のアヤで、勝者が逆転していた可能性もあったことに気付き、不思議な感覚に襲われている。

第1戦、第2戦と、ナイーブに三振、凡退を繰り返す桑原選手などは、このチームの「場違い」ぶりを象徴するような選手だったし、鉄壁のソフトバンク内野陣に比べると、守備もいかにも心もとない選手が多かったのが、試合を重ねるにつれ、筒香選手、宮崎選手といった主力陣が調子を取り戻し、いわば互角の勢いに持ち込んだのだから、実にたいしたもの。

そして長らく「大舞台」に飢えていた選手たちが、今回場数を踏んだことで、一段上のレベルでプレーできるようになったのだとすれば、何と効率的なことか。

こういうケースで、「あと一歩」だったチームが1年後に再び日本シリーズに出てくる可能性は決して高くない、という気になるジンクスもあるのだけれど、ここ数年の躍進を牽引した選手たちがスタメンに定着し、円熟の輝きを見せ始めるであろうことを考えると、来シーズン、より強力な勝ちパターンを作り上げて、再びシリーズの地へ赴くことになる可能性も十分ある。

神話から伝説へ。そんな美しい結末が待っているかどうかは神のみぞ知る、だけど、「何かやってくれそう」という雰囲気だけは、来年からも失わずに持っていてほしいものだな、と思った次第である。

2017-10-31

[]2017年10月のまとめ

日一日、めまぐるしい平日に追いかけられ、週末に襲ってくる台風をやり過ごすうちに、あっという間に今年も残り2カ月、というところまで来てしまった。

総選挙もあったはずなのに世の中は何もなかったかのように淡々と動き、ペナントレースで圧倒的な強さを誇った赤ヘル軍団がいない日本シリーズは黙々と続く。

「不祥事」を起こした会社の株価さえ、あっという間に元の水準に戻ってしまうような久々のバブル景気の中、巷の喧噪はもちろん、SNS上のああだこうだすら別世界の出来事になってしまう修行僧のような日常を送り続けるのが良いことなのかどうか時々立ち止まって振り返りたい衝動に駆られるのだけど、次から次へと押し寄せる怒涛のあれやこれやは、そんなささやかな贅沢すら許してくれない。

3連休に加えて、序盤に少し体調を崩したこともあって、会社の仕事をかなりセーブした週もあったのだけれど、終わってみれば労働拘束時間は約253時間44分(土日含めても一日平均8時間越え。)。睡眠時間(約210時間37分)とのギャップはまだまだ埋まらない。

それでも、まだ、「自分は生きてるだけまし」という思いを2年続けて味わうことになってしまったのだけれど。

今月のページビューは17,000強、セッションは12,000強、ユニークユーザーは7,700強。

低空飛行だが、それでもブログは続いていく。

<ユーザー市区町村>

1.↑ 新宿区  1417

2.↓ 港区   1382

3.↓ 大阪市  1186

4.→ 横浜市   956

5.→ 千代田区  642

6.↑ 名古屋市  488

7.↓ 中央区   444

8.↑ 京都市   266

9.↓ 渋谷区   263

10.→ 世田谷区  256

<検索アナリティクス 合計クリック数 3,831回(〜10月30日まで)>

1.→ 企業法務戦士 116

2.→ 東京スタイル 高野 33

3.↑ tripp trapp事件 27

4.↑ 試験直前 勉強しない 21

5.↑ トリップトラップ事件 19

5.↓ 霊友会事件 19

7.↓ 企業法務 18

8.圏外一人一票実現国民会議 正体 17

9.圏外フォント 著作権 判例 14

9.圏外規約 著作権 14

一見、必然とは思えないような検索語の組み合わせが、上位をキープし続けている不思議。

どうしても、出てくるのは昔のキーワードばかりになってしまうのだけれど・・・。

2017-10-29

[][]“超不良馬場”が引き出した真の力。

先週に続いて日本列島台風が接近し、芝コース、というよりは、「全面水壕障害」といった感のある状況の中で行われた天皇賞・秋

週末、雨が降り続くとわかった時から、過去の重・不良馬場で実績のある馬(例えばネオリアリズムとかディサイファとか)が強いだろう、と物色を始め、前日、当日とレースが進んで、もはや常識的なタイムで芝コースを走ることは不可能だ、と分かった瞬間に、ディープな欧州血脈を承継している馬(サトノクラウンはもちろん、シャケトラ(母父・シングスピール)とかグレーターロンドン(母父・ドクターデヴィアス)、ミッキーロケット(母父・Pivotal)など)に浮気したり、と、二転三転したのだが、結局終わってみれば・・・という感じだった。

個人的には、宝塚記念の大敗もあって「キタサンブラックはもうここまでかな」と内心思っていたところはあったし、現にスタートで出遅れた瞬間に「今日の馬場では挽回不可能だろう」と確信したのだが、その後、随所で“ワープ”と称されるほどの、武豊騎手の見事なポジション巻き返し走法で4コーナーを回った時点で一気に先頭へ。

その前の京都カシオペアSで、わざわざ馬場の悪い最内を就いたクラリティシチーが、見事なまでの惨敗を食らったのを見ていただけに、果たして最後まで走れるんだろうか、と一瞬心配したのも全くの杞憂で、うまく抜け出すと、武豊騎手手綱に操られて馬場のいい外側にあっという間にコースチェンジし、終始先行して完璧な「勝てるレース」をしていたはずのサトノクラウンまでをも出し抜いて、最後は有利な態勢からの合わせ馬を制す・・・と、感動すら覚える素晴らしい勝利となった。

タイムは2分08秒3、と記憶のみならず、記録にも残ってしまいそうな超スロー決着で、6年前のトーセンジョーダンレコードタイムから遅れること10秒以上、と、もはや笑うしかないのであるが、、こんな馬場だからこそ、馬も、騎手も真に力のある者だけが勝ち残った、という感じで、それは2着以下の錚々たる顔ぶれを見ても如実にわかるだろう*1

これで、キタサンブラックディープインパクトを抜いて賞金歴代2位。年内あと2戦で、JRAのこれまでの記録を全部塗り替える可能性をも残した。

できることなら、このままジャパンC有馬記念と勝ってもらって大団円、というのが一番美しい姿なのだが、こうなってくると惜しむらくは、秋に凱旋門賞にチャレンジできなかったこと・・・。

後から、「体調がすぐれないオーナーを気遣って(海外遠征の話を潰せるように)宝塚記念をわざと負けたんじゃないか」という根拠なき風評が流れてきそうなくらい、道悪を危なげなくこなして勝ち切っただけに、、自分は複雑な気持ちでいっぱいなのである。

*1:3着のレインボーラインだけが異質なのだが、4着・リアルスティール、5着・マカヒキ、と海外の過酷なレースをこなしてきたものだけが上位に来た、というのも分かるような気がする。逆に、ネオリアリズムや、ステファノスのように実績のない馬たちは、順当に負けた。実に“紛れ”のない戦いであったと思う。

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