2012-02-06
■[企業法務][労働]「過労死」の労災認定増加は企業のリスクか?
6日付けの日経紙の法務面に、
「過労死の『労災認定』幅広く」
という記事が掲載されている*1。
要約すると、
・最近、裁判所が労災認定請求を幅広く認めるようになった。
・最近の判決の中には、長時間労働を放置して「過労死」を招いた、として、取締役の善管注意義務違反まで認めたものまである。
・これらの判決は、「従来のやり方では過労死・過労自殺はなくならないという裁判所の危機感の表れ」なのかもしれない。
といったことになるだろうか。
記事そのものは、過労死弁護団サイドの主張に引っ張られた感が強いもので、もう少し多角的に分析した方が良いのでは・・・?という突っ込みも入れたくなる代物なのだが、実際、裁判所で、5年前、10年前に比べれば「過労死」が認められやすくなっているのは確かだろう。
その理由としては、「裁判所の意識」以前に、諸々の労災認定基準が改正が定着したり、新設されたりしたことによって、より柔軟に労災認定をしやすくなった、というのが一番なのではないか、というのが自分の見立てなのだが*2、いずれにせよ、企業側の目線で言えば「リスク」が高まった、ということになるのかもしれない。
だが・・・
2012-02-05
■[趣味][スポーツ]あきらめるにはまだ早すぎる。
日本男子サッカー五輪最終予選、アウェーでシリア相手に、後半ロスタイムに入るかどうか、というタイミングで、まさかの決勝ゴール。
出だしから幸先良く3連勝したこともあって、何となく世の中には根拠のない楽観ムードが漂っていたし、正月には他の五輪内定選手と並んでスポーツ番組に登場していた選手までいたから、自分なんかは内心、「シリアはそんなに楽な相手じゃないぞ・・・」と思っていたのだが、案の定だった。
大迫選手から永井選手につないだ末の美しいゴールで前半のいい時間帯に同点に追い付き、後半に入ってからは、堅守速攻で何度となくチャンスを演出していたから、もしかしたらここで決められるか・・・という淡い期待も持ってテレビを見ていたのだが、終盤にかけて少し嫌な流れが来たなぁ・・・と思ったところで、我が日本のオールドヒーロー・“大空翼”を彷彿させる見事なドライブシュートを正面から決められて万事休す。
元々海外組を全く連れて来られなかった上に*1、頼みの綱の清武選手を負傷で失った、となれば、アウェーで勝ちきれる確率はかなり低かったわけで、「引き分け」で終わっていれば、事実上勝ちに等しい、という評価を受けられただろうから、なおさら残念なところ。
個人的には、今回のU-23代表は、いつになく応援したい気分にさせてくれるチームだけに*2、実況のアナウンサーが、何度も「2位転落、自力進出消滅」と連呼するのを聞いていて、正直、自分も少なからず凹んだのだが・・・。
冷静に考えれば、「2位」といっても、勝ち点で見れば全くの五分だし、得失点差も同じ。
シリアが次戦で難敵バーレーンと戦わねばいけないのに対し、日本は敵地とはいえ相手はマレーシアだから、うまく行けばこの時点で、首位逆転もありうる。
もちろん、ホームとはいえ、最終戦では、バーレーン相手に、「シリア対マレーシア」のスコア差を見ながら試合を進めなければいけない、という厳しい状況になることは確かなので、一瞬たりとも気が抜けないのは事実であるが・・・。
これまで何度も、世界に届かないという屈辱にあえぎ、それをバネに跳ね上がってきたのが今のU-23だと思うだけに、もし、この先、苦しんだ末に五輪への切符を掴み取ることができたなら、これまでの2大会を上回るような戦績を残しても不思議ではないと自分は思っている。
ゆえに、今は、あと2試合、何としてでも試練をくぐり抜けてくれることを、祈り続けて待つほかない・・・。
2012-02-03
■[企業法務][知財][独禁]“攻め”だけではなかったJASRACの持ち味。
日本音楽著作権協会(JASRAC)と言えば、泣く子も黙る音楽著作権業界の“権利執行人”だが、そんなJASRACが一転して守勢に追い込まれたのが、
「『包括利用券許諾契約』に係る新規参入妨害(私的独占)疑惑」
である。
遡ること4年前、公取委が立ち入り調査に踏み込んだのを皮切りに*1、3年前の2月には、とうとう排除措置命令が出されてしまい、さすがのJASRACもこれは厳しいか・・・と誰もが思った。
何と言っても、排除措置命令がひとたび出てしまえば結論がひっくり返らない、というのが現行制度下における公取委の審判で、平成17年に独禁法が改正され、事前審判手続から「事後審判」の手続に移行して以来、審判で命令が取り消された事例は皆無*2。
仮に、頑張って審決取消訴訟まで持ちこんだとしても、いつ解決するか分からない泥沼(しかも原告側には、実質的証拠法則の壁もある)に陥ってしまうのは確実な状況だっただけに、筆者自身、JASRACが勇敢に争う姿勢を見せたことには敬意を表しつつも(http://d.hatena.ne.jp/FJneo1994/20090225/1235668327参照)、おそらくは早期決着を優先して、どこかで大幅な譲歩を余儀なくされることになるのではないか・・・と思っていた。
ところがどっこい。
珍しく“守る”立場になったJASRACは、3年越しの審判の中で、驚異の粘り腰を見せた。
「楽曲の著作権使用料を巡り、日本音楽著作権協会(JASRAC)が新規参入を妨げたとして独占禁止法違反(私的独占)で受けた排除措置命令について、公正取引委員会は命令を取り消す方針を決め、2日までに「無罪」とする審決案を同協会に送付した。審決案が確定すれば、2005年の独禁法改正後初めて命令が覆ることになる。」(日本経済新聞2012年2月3日付け朝刊・第34面)
元々、
「放送局の事業収入の1.5%を払えばJASRACの管理楽曲をいくら使ってもいい、という「包括的利用許諾契約」のルールが他の著作権管理事業者との契約を妨げている」
というのが、公取委が排除措置命令を出した理由だったのだが*3、その根拠として認定したはずの、「JASRAC以外の管理事業者の楽曲が使われていなかった」という事実が、「証拠がなく認定できない」というのが、記事の中で報じられている「結論がひっくり返った理由」。
JASRACのホームページに行くと、公取委の審判手続において、JASRACのしぶとい反撃の様子が克明に記載されている*4。
http://www.jasrac.or.jp/release/12/02_1.html(審判の経過参照)
それによると、JASRACの反論は、
1. 他の管理事業者が放送分野の管理事業に新規参入した平成18年10月から12月にかけて、FMラジオ局を中心とした放送事業者が「恋愛写真」を始めとする新規参入事業者の管理楽曲をほとんど利用しなかったとの排除措置命令の事実認定が誤りであることは、当協会の提出した放送番組における楽曲の利用状況に関する客観的なデータ等によって立証されている。
2. 放送事業者が「追加負担」を避けるために新規参入事業者の管理楽曲の利用を回避したとの事実認定が誤りであることは、審判廷で参考人が、新規参入事業者に支払う使用料は当協会に支払う使用料とは当然に別のものであり、そもそも、「追加負担」なる概念をもって捉えたことはないと陳述したとおり、明らかになっている。
3. 放送事業者の作成した内部通知文書によって、番組制作担当者が「追加負担」を嫌忌し、新規参入事業者の管理楽曲の利用を回避することとなったとの主張は、審判廷で参考人が、新規参入事業者の管理楽曲の利用を差し控えさせるために内部通知文書を作成したのではないことを陳述したばかりか、客観的なデータによって新規参入事業者の管理楽曲が他の楽曲と遜色なく利用されていたことが明らかにされており、根本から破綻している。
4. 音楽出版社が新規参入事業者との管理委託契約を解約することにした原因が当協会の包括徴収にあるとの事実認定は、平成18年10月当時における新規参入事業者の管理体制が不十分であり(?民放連との合意ができていない、?放送事業者との個別の契約をまったく締結していない、?管理楽曲を明確に提示できていない、?ラジオ局については使用料の上限が決まっていない、?使用楽曲の報告方法も決まっていない)、改善の兆しが見えないために解約したとの真相が審判廷での参考人の陳述により明らかにされており、誤りである。
というもの。
実際、他の管理事業者の楽曲も放送事業者が使っていた、という事実は、公取委が排除措置命令に踏み込んだ当時から指摘されていたと記憶しているが、JASRACは、それを客観的なデータで立証しただけでなく、「公取委のずさんな調査」をあざ笑うかのように、参考人の陳述を用いて、公取委の認定事実を根底から覆し、当初の命令を導いた論理過程をほぼ完璧に破壊したことが分かる。
これぞ、まさに“倍返し”の大勝利、というべきだろう。
元々業界と強い結びつきを持つJASRACのことだけに、オープンな場で業界関係者を呼んで話をさせる、ということになれば、門外漢の公取委よりも有利な立場になるのは間違いないところだし*5、成立が目前に迫っている独禁法改正案の前に、「事後審判制度」が“風前の灯”となって久しい公取委の側にも、無理筋の事案であえて突っぱねるモチベーションは乏しかったのかもしれない。
通常の会社が命令の名宛人になった場合とは異なり、紛争が長期化しても、自らの盤石な事業基盤はそうそう簡単には揺るがない、という“独占“事業者ならではのメリットがあったのも確かだろう。
だが、そういう状況を割り引いても、実にお見事だったJASRACの戦いぶり*6。
“守り”に回ってもぶれないこの強さ、ゆえに、長年にわたり音楽著作権業界で、ルールメーカーとしての成果を挙げ、存在感を示し続けることができるのだろうなぁ・・・と思わず脱帽させられてしまう。
そして、専らユーザーとしてしか著作権にかかわれない会社の担当者としては、そんな相手に、正面から攻められるようなことがないように・・・と願うほかない。
*1:http://d.hatena.ne.jp/FJneo1994/20080424/1209143263
*2:命令が正式に効力を有する前の“撤回”とは異なり、事後審判手続となれば、ひとたび発せられた命令を自ら取り消す、ということになるのだから、そんなことが行政機関にできるはずがない・・・!という批判が、これまで産業界から散々出されていたのは記憶に新しい(中には、結構あっさりひっくり返す特許庁のような奇特な役所もあるのだが・・・)。なお、上記日経紙の記事によると、改正前から通算しても今回の「無罪」はエレベーター保守業者6社以来、18年ぶりになる、ということである。
*3:それゆえ、公取委は、「新たな使用料徴収方法を決めて公取委の承認を受けなければならない」ということまで命じている(なお、排除措置命令の原文を引っ張ってこようと思ったのだが、なぜか閲覧できない状況になっている・・・。当局の隠蔽?)。
*4:今回の日経紙の記事の中でも、その内容がかいつまんで記されている。
*5:そもそも、「包括的利用許諾契約」というシステムのせいで困っている権利者やユーザーがどれだけいるのか? というところに疑問がある事案だっただけになおさら、である。本件は、何でもかんでも「競争の論理」を押し付けることが良いのかどうか、ということを考える上でも、象徴的な事案になったように思う。
*6:個人的には、JASRACの仕事のやり方には、あまり良い感情を持っていないだけに、手放しで誉めたくはないのだが、本件に関してはやむをえまい・・・。
2012-02-02
■[企業法務][知財]何とも寂しい結末。
ピンク・レディーのパブリシティ権侵害事件の最高裁判決が出た、というのが話題になっていたので、最高裁HPに飛んでいったついでに、知財の判決リストもちらちら眺めていたら、見覚えのある事件名の判決が2つ仲良く並んでいる・・・。
もしや、と思って、数日前の新聞をひっくり返してみたら、出てきた。
「インターネット経由で海外などにテレビ放送を転送するサービスを手掛ける会社2社に対し、NHKや在京の民放各社などが著作権侵害を理由に差し止めや損害賠償を求めた訴訟の差し戻し控訴審判決が31日、知的財産高裁であった。飯村敏明裁判長は2社にサービス提供を禁じるとともに、テレビ局1社当たり20万〜460万円の支払いを命じた。」(日本経済新聞2012年1月31日付け夕刊・第16面)
第2社会面の隅っこの方にひっそりと掲載された記事。
帰宅する時間帯その他の理由により、自分が夕刊の記事に目を通せる機会は多くない。
しかも、こんな小さな記事となればなおさらだ。
大きな事件であれば、翌日の朝刊にも社説、解説等々が掲載されるから、ちゃんとフォローできるのだが、このロクラク2、まねきTVの差し戻し控訴審判決が、そんな“一流”の扱いを受けることはなかった。
最高裁判決の時点で、差し戻し後の裁判所の判断の帰趨は実質的にほぼ決まっていたから、今さら取り上げてもニュースバリューに乏しい、という判断だったのかもしれないが、ここ数年間、著作権業界を揺るがし続けた*1大事件の結末としては、何とも寂しい・・・と言わざるを得ない。
ざっと覗いてみた限りでは、判決文のページ数もそれなりにあるようだし、まねきTVにおいても損害論以外の主張が展開されたりしているようだから、一応、おって検討してみようとは思っているのだけれど、なんか虚しい・・・
そんな気分である。
2012-02-01
■[企業法務]さぁ始まった泥仕合。
昨年以来このブログで継続的に取り上げている、グリー対DeNA、というSNS大手の新鋭ベンチャー企業同士の独禁法違反をめぐる戦い*1。
11月21日付けのプレスリリース・記者会見のあたりまでは、グリーがほぼ一方的に攻める展開で、最近露出の機会が多いグリー・田中社長の攻撃的なスタイルも相まって、DeNAにとってはキツイだろうなぁ・・・と思っていたのだが、年が変わり、遂にDeNA側も反撃に出た。
「交流サイト(SNS)大手のディー・エヌ・エー(DeNA)は、グリーと同社の田中良和社長を相手取り、不法行為などに基づく損害賠償と謝罪文掲載を求める訴訟を東京地裁に起こした。」(日本経済新聞2012年2月1日付け朝刊・第11面)
ちょうど、プロ野球もキャンプインを迎え、これからシーズン終了まで、ほぼ連日「横浜」とセットで自分たちの社名がテレビで、新聞で取り上げられることになるDeNA。
本業の状況はともかく、今は、会社の存在感そのものが大きく増しつつある状況だけに、何年か越しの“泣き所”であるこの件でも、何とか巻き返してやろう・・・という強い意欲が感じられるところである。
もっとも、自社のHP上で、「当社に訴状が届いていないので・・・」と直ちにリアクションしたグリーとは異なり*2、DeNAの方は、公に対しては、適時開示で
当社は、本日、グリー株式会社及び同社代表取締役社長田中良和氏に対して、不法行為等に基づく損害賠償及び謝罪文の掲載等を請求する訴訟を提起しましたのでお知らせします。
グリー株式会社によるプレスリリース文面(2011年11月21日)及び田中良和氏の各所での多数の発言において、当社が違法行為を行っているかのような指摘がなされたことに対する法的措置です。
当社の主張は今後訴訟の場において明らかにしていきます。
というシンプルな“リリース”をしたのみで*3、ホームページ等の自社媒体には掲載していないようだ。
「今でもDeNAが競争妨害行為を継続している」というふうに受け止められてしまうグリー及び田中社長の発言は、自分が見聞きした限りでも、かなり踏み込んでいるなぁ、と思えるようなものであったから、仮にそのような事実があることをグリー側が立証できなかったとすれば、DeNAの側にも十分勝機が出てくると思うのだが、その一方で、当事者以外の第三者から本件の状況を見たら、単なる「ただの泥仕合」にしか見えない争いになりつつあるのも事実だけに、それをHP等に乗せてわざわざ世の中に広くアピールする必要はない・・・
そう考えたのかなぁ、と何となく思うところ。
裁判資料にアクセスできる立場でもないので、判決が出されるまで、どういう展開になるのか先を読むことは難しい状況なのだが、そうでなくても浮き沈みが激しいインターネット業界のことだけに、せめて訴訟当事者双方が企業として健全な活動を行えている間に、一定の結論まで辿りついてほしいものだ、と今は願うのみである。

