内観体験記 VOL:28

 さて、今回の内観体験も佳境に入って来た。水野先生並びに諸先生が見守る中、最後の集中内観も7時30分をして全て終了した。この間、共に入所した私を含め9人の仲間は7人になっていた。その二人が何日目に帰えられたかは気が付かなかった。また、そんな余裕も無かった。これより諸先生方による今回の内観者終了者に対しての個別指導並びに総評。その後に、各自5分程度に今回の感想を発表して、全行程終了となる。まず、水野先生の講話。親鸞聖人の著書「教行信証}に付いてのお話である。浄土真宗の開祖・親鸞聖人の著書「教行信証」(正式名は顕浄土真実教行証文類、6巻。広く経論釈の文を考察されて、浄土真宗の教義を宣明にされた、浄土真宗の根本的な聖典。1224年52歳の作で本書によって開宗年とされた。各巻は教・行・信・証・真仏土・化身土で組織され、前5巻は真実の教門を明らかにし、第6巻では方便を明示された。教は無量寿経、行は南無阿弥陀仏、信は往生の正因である阿弥陀仏を信じる信心、証はこの正信によって得られる証果である。この四法は仏から与えられるものであるから、往相還向であり、証果を究めるとこの世界に還って衆生を済度するから還相回向という。真仏土は浄土であり、この浄土から出て浄土に帰る法門である。さらに化身土に於いて方便教を明らかにして、真偽を明示している。私も勿論所持しているが、道元の「正法眼蔵」が難解で知られいるが、教行信証はそれより数倍も難解で、未だに読破出来ずにいる。改めてもう一度挑戦しょうと思う。                  いよいよ、個別指導の時間だ。何を指摘されるか心配だが、腹をくくろう。三番目に居る私の番になった。例の今回最もお世話になったアドバイザーの方と水野先生が、私の前にお坐りになられた。「私は、あなたを一番注目してましたよ」と開口一番に仰った。どういう意味か分からないから「申し訳ありません。私なりに一生懸命励んだつもりでしたが、駄目でしたか?」と私。お二人が大笑いされて「いやいや、良い意味でですよ。中仏(龍谷大学・中央佛教学院の事を略して「中仏」で通る)で4年間勉強さてた事は聞いてました。体験発表も聞きましたが、得度されているだけあるなぁ〜と感心しました。」と意外な答えで驚いた。「ただし、この真宗の教えはいくら勉強したからと言って、信心が深まるものではありませんよ。いや、それより無学な方のほうが、信心を深められる方が多いですよ。よく考えて見て下さい。」と釘を刺されることも心得ていらっしゃると感激した。「有難うございました。ほんとうに真の勉強をさせていただきました」と丁重にお礼を申し上げた。「時間がありましたら、めざめの会にも是非お越しください」とアドバイザーの方。軽く会釈されて次の方のに向かわれた。9時、これで内観体験の全工程を終了した。参加者の顔を改めて見て、各自終わったという解放感と安ど感に溢れた良い顔をしていた。「皆さん、ご苦労さんでした。そして有難うございました」と私は思わず言っていた。皆さんから「こちらこそ有難うございました」の声が帰って来た。考えて見るに、各人とは毎朝の挨拶はあったものの、私的な会話は皆無に等しかったし、名前さえ分からずじまいの方もあった。それでも、これも何かのご縁、「皆さんお元気で、またご縁がありましたらお会いして私的な会話もしましょう」と心の中でつぶやいた。後片付けを手早く済ませ、最後の就寝に入った。「これで良かったんだろうか・・いや、これで良かったんだ」何故か複雑な気持ちだったが、改めて今回の内観体験を振り返りていた。どれだけの時間だったか分からないが、いつの間にか深い眠りの落ちていた。