【コチャバンバ会議】「気候の悲劇から人類を救う方法は、グローバル民主主義の実施しかない」(パブロ・ソロン・ボリビア国連大使)


英ガーディアン紙に掲載されたコチャバンバ会議の記事をATTAC Japan(首都圏)の秋本陽子さんが翻訳されました。以下、紹介します。

 「気候の悲劇から人類を救う方法は、グローバル民主主義の実施しかない」というパブロ・ソロン・ボリビア国連大使の発言は、この世界民衆会議の持っている歴史的な意味を的確に表現しています。

 アユマラ先住民リーダーによる「COP15は完全な失敗だった。だから我らの兄弟エボ・モラレスは、何かをしようとこの気候変動会議を呼びかけることを決意した。気候の危機に取組むにあたってリーダーシップを発揮しなければならないのは、我々民衆である」という発言には、この会議の主人公が誰であるのかが明確に示されています。

 「エボは兄弟」と口にしているこれまで世界資本主義システムの中で虐げられてきた先住民族など世界人口の多数派を占めている南側の貧困な民衆こそが世界を動かす新しい時代が到来しつつあることをこの会議は示しているのではないでしょうか。それこそが「グローバル民主主義」です。

 ごく一握りの特権的な少数者=グローバル独占資本が世界の富を独占し世界を支配する時代が終わりつつあるのです(終わらなければ、モラレスの言うように人類の破滅しかないのです。「地球か、死か(グローバル資本主義か)」という時代なのではないでしょうか)。

 「北」が「南」に対して「環境債務」「気候債務」「不当な債務」を賠償することが歴史的必然となりつつあることを示した会議だと思います。


Bolivia climate change talks to give poor a voiceGroups on frontline of global warming head to alternative summit in city of Cochabamba
Andres Schipani in La Paz and John Vidal
guardian.co.uk, Sunday 18 April 2010 19.25 BST
http://www.guardian.co.uk/environment/2010/apr/18/bolivia-climate-change-talks-cochabamba


貧者に発言の場を提供するボリビア気候変動会議
地球温暖化の最前線にいる者たちはコチャバンバ市のオルタナティブ・サミットに向かう



ラファエル・キスペは旅行の準備をしている。彼の小さなかばんには黒のポンチョ、アンデス先住民の旗を示す虹色チェック模様のアルパカのスカーフ、そして黒の帽子が入っている。「これは重要な集まりだ。とても重要な集まりなんだ。マザーアースを守ること、自然を守るためだ」と彼は言う。

アユマラ先住民リーダーのキスペは、ボリビアの主要都市、コチャバンバ市で開催される「気候変動およびマザーアースの権利に関する世界民衆会議」に向けて出発する。これは、昨年コペンハーゲンで失敗に終わった国連会議に代わる草の根の民衆会議である。

世界の先住民運動市民社会から約15,000人、ならびに90カ国から大統領、科学者、活動家が、気候変動サミットの「ウッドストック」と呼ばれているものに出席する。

「分析によれば、世界の環境汚染の約80%は先進国からやってきて、そのほとんどは、途上国に損害をもたらしている。だから我々は何かをしなければならない。我々の声を聞いてもらう必要がある。我々は補償を受ける必要があるんだ」と、昨年12月コペンハーゲンで、自分のコミュニティのケースについて陳情をしたキスペは語る。


COP15は完全な失敗だった。だから我らの兄弟エボ・モラレスは、何かをしようとこの気候変動会議を呼びかけることを決意した。気候の危機に取組むにあたってリーダーシップを発揮しなければならないのは、我々民衆である」と彼は述べている。

コチャバンバ会議は国連気候変動会議と全く関係がないとしても、その趣旨は、世界で最も貧しい人々、気候変動の影響を最も受けている人々に発言の場を提供し、彼/彼女たちの窮状について各国政府に認識を深めさせることである。

主たる目的は、今年後半メキシコで開催される国連気候変動会議に提出する提案のドラフトを作成することである。

モラレス大統領はこの会議で、世界最大の住民投票とされるものを発表する。気候危機の解決方法について200億人に投票を呼びかけるというものである。ボリビアは国連権利憲章の創設を希望し、気候の公正に関する国際法廷(クライメート・ジャスティ国際法廷)の開廷を望んでいる。

ボリビアのパブロ・ソロン国連大使は「気候の交渉を正しい方向に戻す方法は、ボリビアおよび他の諸国のためだけでなく、あらゆる生命、生物多様性、我らのマザーアースにとって、そのための唯一の方法は、市民社会をプロセスに戻すことである。気候の悲劇から人類を救う方法は、グローバル民主主義の実施しかない」と述べる。 さらに同大使は「コチャバンバ会議には、密室での秘密議論はない。討論と提案を主導するのは、気候変動に最も直面しているコミュニティおよび気候の危機に必死に取り組んでいる市民社会の組織や個人である」と付け加える。 気候変動交渉においてボリビアは重要な役割を果たしている。先進国に対して、その公約以上の排出削減を義務づけようとしている。

ボリビアは、コペンハーゲンで姿を現した取引(コペンハーゲン合意)への署名を拒否した7カ国に入る。この拒否は英国および米国の激怒を招き、両政府は、今月、ボリビア政府に対する350万ドルの気候変動対策資金供与を撤回した。



昨年4月、国連総会は、アンデスの神であるパチャママ(マザーアース)、ならびに「生きるすべてのもの」の権利を保護するために、4月22日を国際マザーアースデーとするというモラレス大統領の提案を可決した。 「この議論の背後には、我々人間がマザーアースとの調和、自然との調和を破ったという事実が存在する。我々がその調和を破ったので、我々は今、気候変動という結果に苦しんでいる」とソロン国連大使は述べる。

チェ・ゲバラのイメージが貼られた事務所で、キスペは、ボリビアは先住民の地盤なので、主導権を発揮している、という。そして「事態は悪い方向に進んでいる。各国政府はそれを知っている、科学者も知っている。しかし事態は変わらない。それ(変わらないということ)が、唯一のシナリオだろう。政府に対する企業の圧力と、市民社会から出てくる圧力との間で、バランスを保っているというシナリオだ」と語る。

翻訳:秋本陽子(ATTAC Japan〔首都圏〕)