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かるちゅーら・あにみ:CVLTVRA ANIMI PHILOSOPHIA EST このページをアンテナに追加 RSSフィード

 クラシック音楽のCD、DVD、書籍、コンサートのおすすめ&レビューを広く&ゆるくご紹介致します。


2009-11-04

いろいろと考えさせられる本でした 3 of 3:岡田 暁生 著『音楽の聴き方―聴く型と趣味を語る言葉』 (中公新書)

岡田 暁生 著『音楽の聴き方―聴く型と趣味を語る言葉(中公新書)』 のAmazonの商品頁を開くまたまた間が空きましたが、前回・前々回と

中藤 泰雄 著『音楽を仕事にして 日本の聴衆に、この感動を伝えたい』

アルトゥール・シュナーベル 著『わが生涯と音楽』

と二冊の書籍を紹介いたしました。音楽の売り方や聞き方の姿の20世紀辺りの変遷を見ながら、普通の音楽好きはどうしたらもっと“良く”(?)聞けるのだろう・・・などということを私の頭は考えていたようです。

本日ご紹介するのは、そのものズバリ

岡田 暁生 著『音楽の聴き方―聴く型と趣味を語る言葉(中公新書)』

前回の原稿を書いた後にこれを見つけて、読んでみた次第。ここのところ自分の中でグルグル回っていたテーマを考えるにうってつけのものでした。今年の6月が初版ですから、もうお読みの方も多いでしょうか?

前書きにもある著者執筆の動機を私流にまとめてみますと・・・好き/嫌い、良い/悪いを個人の趣味とかたづけるといかにもな相対主義で今ひとつ。考え、語り、知ることで、趣味と一言で片づけたていたことごとの詳細に知り、”より良く”することができるのではないか?その方が、聴いていて、楽しみ方も豊かになるのではないか?そんな音楽受容の問題を取り扱った一冊、などとなりましょうか。

中藤泰雄氏の著作は売る側の立場のものであり、シュナーベルの自伝は弾く側。 岡田暁生氏は聴く側の立場で書いてらっしゃいますから、三つあわせてなかなか良いあんばいです。

*****

著者のいつもの判りやすい口調の故、さらっと読んでしまいますが、トピックは非常に多岐に及んでいて、すでにさまざまに書籍を読まれた方にも、細部に面白い指摘が見つかるはずです。

トピックが多用である上に、著者も思いを素直につづって・・・つづり過ぎ!!と言ってもよいくらいで、つかみがたい書籍でもありますが、あとがきに本書のとりあえずのまとめとして、27項目のstatementsが挙げられております。書店でお買い求めの方は、この27項目が書かれてある6ページ分をまず読んでみて、興味を惹かれたらお買い求めの上にじっくり読んでみると良いでしょう。

試みにその27項目からほんの少し挙げてみますと・・・

  • 世評に注意。「看板に偽りあり」のケースは意外に多い。そもそも人と意見が違っていたとしても、そこには必ず何か理由がある。「他人との違い」を大切にすること。
  • 自分のクセを知る。そして、客観的事実と自分の好みはある程度分けて聴く。そのためにも、自分がどういうものに反応しやすく(過大評価しやすく)、どういうものに対して鈍いか(過小評価しやすいか)、よく分かっていた方がいい。
  • 有名な音楽家を神格化しすぎない。彼らにも「駄作/駄演」はある。また「傑作/名演」として名高いものでも、隅から隅まで完璧に仕上がっているものは、そうはない。
  • 最終的には「立ち去りがたさ」を大切にすること。何度も繰り返すが、途中で中断することがどこかでためらわれたとしたら、それこそあなたのための音楽だ。
  • 音楽を言葉にすることを躊躇しない。そのためにも音楽を語る語彙を知ること。音楽を語ることは、音楽を聴くことと同じくらい面白い。まずは指揮者のリハーサル風景の映像などを見てほしい。

前掲書 P.208〜213

その他にも、音楽についての本を読むことですとか、自分でも楽器を弾いたり、合唱に参加して、音楽をすることのすすめですとか、あれこれ書かれた27項目。もっぱら聴くだけですごしてきた私も納得し、反省し、あれこれと考えさせられました。

27項目はそれなりに整然としておりますが、本書本体を読みますとあちらとこちらで意見が矛盾したり、思いつきを並べただけにも見えることも多々あって、不満がでるやも知れません。ですが、それもまた自分で考えるきっかけになりますがゆえ、つっこみやすくて網羅的な本は実はありがたいものだとわたしは思います。

すっごくダメだといけませんが、なんかちょっと「あれ?」というくらいですと、自分で考えるにたいへん都合が良い。「なに言ってんだ〜!」という思いから、自分の考えを構築し、ぜひご友人との語らいでご披露くださいませ。

さて、最近いろいろ聴き始めたという方に、本書が

岡田 暁生 著『音楽の聴き方―聴く型と趣味を語る言葉(中公新書)』 の商品写真岡田 暁生 著『音楽の聴き方―聴く型と趣味を語る言葉』
中公新書

難しいとすれば、西洋音楽史的な内容かも知れません。スリーブノートや各種の伝記を読んだり、ネットであれこれ読むうちに、段々と知れるものですが、知識修得を急ぎたい向きには、同著者の

岡田 暁生 著『西洋音楽史―「クラシック」の黄昏 (中公新書)』 の商品写真岡田 暁生 著『西洋音楽史―「クラシック」の黄昏 』
中公新書

などもおすすめできるかと・・・とは言え、こういうものは一冊二冊で済む話でもなく、のんびりマイペースかつ着実にどうぞ。

いずれにせよ、本書のような内容が、主に聴くだけを主とする一般愛好家向けに書かれるようになったのは良いことだと思います。自分自身に取って西洋音楽を聴くことは一体なんなのだろう、面白くないなら聴く気にならないけれど、それだけだとどうにも足りない気がする・・・そんな悩みもあまり教養主義的にならずに、すなおに個人レベルで考える。日本も西洋音楽を吸収・崇拝し続けて一世紀半、ようやく肩の力が抜けはじめてきたのだろうかとも感じます。

自分でも楽器を・・・と言えば、わたしのド下手なピアノ再挑戦も数年をすぎて、単なる指の運動に過ぎなかったと最近思い至りました。音階アルペジオからしずしずやり直しながら、そもそも一音一音の違い、それらの重なりを、感じ直そうなどと・・・。一度、半音、三度、五度といった差が、なまなましく量的に感じられないのはおかしい、、、といまごろ気づきました。おはずかしい。そんなことを続けると、音楽の聴こえ方も変わってくるのかななどと淡い期待を抱いております。

*****

序でながら、岡田氏が上述書の中で、「まずは指揮者のリハーサル風景の映像などを」とすすめておりますので、私がいままで見た中でこれは!と面白かったものを、幾つか並べますと、

名指揮者の軌跡 Vol.2 フェレンツ・フリッチャイ/スメタナ:交響詩<モルダウ> [DVD]の商品写真名指揮者の軌跡 Vol.2 フェレンツ・フリッチャイ指揮
スメタナ:交響詩<モルダウ> [DVD]
ジェネオン エンタテインメント


名指揮者の軌跡 Vol.1 カルロス・クライバー J.シュトラウスII世:喜歌劇<こうもり>序曲、ウェーバー<魔弾の射手>序曲 [DVD]の商品写真名指揮者の軌跡 Vol.1 カルロス・クライバー指揮
J.シュトラウスII世:喜歌劇 <こうもり> 序曲、
ウェーバー <魔弾の射手> 序曲 [DVD]
ジェネオン エンタテインメント


アーノンクール指揮の秘密~《こうもり》を振る[DVD]の商品写真アーノンクール指揮の秘密~《こうもり》を振る[DVD]
ウィーン交響楽団
1999年ウィーン芸術祭週間のリハーサル映像
キングレコード

音楽DVDはすぐに在庫切れになりますが、たいがい数年すれば再発致します。高い中古に手をださずに気長に待つことをおすすめ致します。

指揮者ではないのですが、現代ピアノでのマスタークラス。

DVD Barenboim on Beethoven Masterclassesの商品写真DVD Barenboim on Beethoven Masterclasses
EMI Classics

これはバレンボイムが若手ピアニストと一緒に考える・・・という内容。楽譜の読み方とその表現方法のレクチャーですから、聴き手にも曲の聴き所・勘所がわかるというもの。バレンボイムもやさしく丁寧な口調ながら、鋭く細かく指摘しております。しかし、別売りのバレンボイム自身による演奏録音を見ると、必ずしも自分が指導した通りにはできないものなのかなぁ・・・などと生意気ながら感じてしまいました。言うとやるとは違うということでしょうか。

日本語版がなく、英語のみですが、比較的ゆっくり話しますし、話題も音楽のことしかなく当て推量も聴きやすいので、英語の勉強がてらにもぜひどうぞ!

忘れていました。マスタークラスの名映像をもう一つ

ボロディン弦楽四重奏団 [DVD]2枚組  の商品写真  ボロディン弦楽四重奏団 [DVD]2枚組
ボロディン弦楽四重奏団の名演奏と貴重なマスタークラス・レッスンの実況を収めた2枚組。
販売元: アイヴィーシー

マスタークラス講師は、創設メンバーでチェロ担当のベルリンスキー。ベートーヴェンカルテットを指導します。これが素晴らしい内容で、室内楽が苦手な方にも楽しめるきっかけになるかと思います。

交響曲ピアノ曲ヴァイオリンのソロは聴くけれど、室内楽はあまり・・・という方は結構多いようなので、ぜひぜひどうぞ。

近年はYouTubeでも、レッスン映像がいろいろあるものです。例えば、こういうものがありますが・・・

先生は横山幸雄さん。うまいに決まってますけれど、こうさらさらっと指摘して、さらさらっと見事にやってみせを見せられると、いまさらながらに驚きます。他にも、いろいろありますので、お時間のある折りにぜひどうぞ。

ではまた次回。

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