名大SF研記録ブログ

名古屋大学SF・ミステリ・幻想小説研究会

京フェスレポート2014

10/11(土)から10/12(日)にかけて行われた京都SFフェスティバルに行って来たので、今更ながらちょっとしたレポートでも書こうかと思います。

・本会企画その1 「アニメとサイエンス・フィクション、その系譜」

 出演者はSF・文芸評論家で、名大SF研のOBでもある山川賢一さんと、経済学者、社会学者の稲葉振一郎さん。
 『魔法少女まどか☆マギガ』の世界観の話を起点に、仮面ライダーBLACK、エヴァンゲリオンウテナナウシカイデオン、地球へ、など、同様の物語構造を持つと思われる作品群についてが、その系譜と共に議論されました。
 個人的には、なんか神様みたいな存在が仕組んだボードゲームのような舞台があって、登場人物たちがその中にいたまま破滅するのか、それとも「外」の世界に出ていくのか、という物語構造についての議論や、アニメ、マンガ、ゲームというのは伝統的な児童文学の系譜の中にあるもので、それはつまり「成長」を描くものなんだけれども、その「成長」を描くということの限界、「大人になるということ」の自明性についてもう一度考え直した方がいいんじゃないのか、という稲葉さんの話がとても興味深かったです。

・本会企画その2 「ショートショートの縦*横*高さ―ショートショート作家のきまぐれ放談―」

 出演者は、井上雅彦さん、江坂遊さん、太田忠司さん、田丸雅智さんというショートショートに縁深い4人の作家の方々。
 「ショートショートを極めるには、人生はあまりにもショートショートだ」という江坂さんの会場を沸かせた名言で企画は幕を開け、ショートショートの歴史、各人のショートショートに対する原体験、書き手にとってのショートショートの魅力、そしてこれからのショートショートについてといった内容が田丸さんを司会として順に語られていきました。
 ショートショートは居合のようなもの、とは太田さんの発言でしたが、皆さん共通してショートショートの魅力を、一瞬で世界を変えてくれるような驚きや衝撃といったところに見出しているように感じられました。また、わかりやすいものからひねくれたものまで、面白さに対していくつものバリエーションをもってのぞめることは、書き手にとっても大きな魅力であるようです。

・本会企画その3 「精神医学とSF」

 出演者は、精神科医でSFレビュアーの風野春樹さんと、『盤上の夜』、『ヨハネスブルグの天使たち』で知られる作家の宮内悠介さん。
 宮内さんの次作が精神医学を中心に取り扱ったものになる予定であることから、この企画が催されたようです。
 風野さん曰く、精神医学の療法の中には証拠や理由付けが後からなされるものもあり、「なんだかよくわからないんだけど、効果は間違いなくある」から使用されている療法がだいぶあるそうです。根拠はないんだけど、なんか効いちゃうんだよね(笑)という感じのようです。宮内さんはそれについて、その身も蓋もないところに小説になる面白さがある、と語っていました。
 風野さんは、SFにも機械のガジェットを使って無理やり問題を解決するような身も蓋もないところがあり、それについては精神医学と共通する点ではないか、というようなことをおっしゃっていました。

・本会企画その4 「いい女vsいい女〜スリップストリーム文学の西と東〜」

 出演者は、翻訳家の岸本佐和子さんと、2013年、「爪と目」で芥川賞を受賞した作家の藤野可織さん。
 「スリップストリームって言われてもよく知らないんですよね」というお二人。「スリップストリーム」については、企画前に控室で大森望さんから説明を受けて初めて、「自分たちの好きなヤツじゃん」、「自分が書いてるヤツじゃん」というような感じで理解したとおっしゃっていました。
 企画は、聖書ヤバイ、天地とかつくってるあたりスリップストリーム、という話に始まり、二人が自分の好きな頭のおかしいヤバイ作品について次々言及していく、という感じで進んでいきました。
 コルタサル柴崎友香、村田紗耶香、江戸川乱歩、ランズデール、レ・ファニュなどの作家の作品が主に話題に上がり、それぞれの作品がどれだけヤバイかを自身の趣味趣向や経験談も交えながらノンストップで面白おかしく語ってくださるので、まったく飽きず、聞いていてとても楽しかったです。
 「女性二人の頭おかしいガールズトーク」というのがその時抱いた率直な感想でした。
 ガールズトークというのがどんなものかはよく知らないのですが、きっとゾンビの話とかするんですよね。
 もし可能ならば、お二人の対談をもう一度聞いてみたいものです。

・合宿

 本会終了後の合宿企画では、『皆勤の徒』の酉島伝法さんについての企画や、先日総解説が刊行されたサンリオSF文庫についての企画が行われたりしていました。あと、ネットで一部話題になっているとかなっていないとかいう「東浩紀大論戦」の企画も……。まあ、その企画については僕は現場にいなかったのでどんな感じだったのかは知らないんですけど。本ラノの選考会は、「今年こそはコンパクトに終わらせます!!」とか言いながらもやっぱり昨年同様の議論の長さで、体力と精神力をごっそり持っていかれました。朝6時コースとかはさすがに頭がおかしいので参加しとれんですね。



僕のできるレポートはこのぐらいですかね。他に参加した部員の方で、書き足したいとか書き直したい内容がある人はまあ適宜やっといてください。

合宿会場で『Before mercy snow』とか「殊能特集」とかの販売をしたんですけど、相変わらずの売れ行きで、またも「殊能将之」という大先輩のすごさを感じさせられた次第であります。買ってくださった皆様、ありがとうございました。
京大SF・幻想文学研究会の皆様も、どうもありがとうございました。お疲れ様でした。
京フェス、楽しかったです。以上。(もりぃ)