Makotsu Garage

本と映像と音楽の記録(ガレージ)

大河への道 〜志の輔PARCO 2016

いろいろありましたが今年も無事に
志の輔PARCO」を見ることができた。
今年は宇田川町再開発に伴う渋谷PARCO
建て替えに伴い、最後の「志の輔PARCO」だけに
見るほうも気合十分、待ったなし!



最後の「志の輔PARCO」に師匠が選んだ演目は、
「大黒柱」「新版 猫忠」。仲入り後に
「一番手こずった(苦しんだ)作品を最後に持って参りました」
と語る「大河への道」。。



人生50年といわれた時代に、52歳から71歳まで、
自分の足で日本中の海岸を歩いて測量し、
初めて地図を作った男。伊能忠敬

伊能が作った大日本沿海輿地全図
現代の衛星地図に重ねても寸分の狂いもない。
その精緻さに心を揺さぶられた志の輔師匠は、
この伊能忠敬の人生を落語で伝えることを決心した。


しかしそれは途方もなく困難な作業だった。
伊能忠敬天文学を学んだのは、
ただただ「地球の大きさを知りたかったから」。
情熱も、知性も、体力も、我々の理解を遥かに超える男だった。

ようやく完成したのが「大河への道」だ。



(ネタバレ注意)
舞台は千葉県庁「伊能忠敬大河ドラマ推進室」。
推進室の主任と若手脚本家の間で物語は始まる。
地図完成を前にした伊能の死、そしてその死を伏せて
地図を完成させた幕府天文方高橋景保
江戸城大広間で11代将軍徳川家斉に上覧するシーンは
 何回見ても鳥肌が立つ。)物語は佳境に入るが
若手脚本家は「伊能の物語は書けない」と
執筆の難しさを打ち明ける。
伊能の人生は、物語には収まりきらない」と。
(これは志の輔師匠自身の思いでもあるだろう)


伊能図大全【全7巻】

伊能図大全【全7巻】


志の輔師匠も常に「落語」進化させ続けている開拓者だ。
たまたま訪れるた佐倉市伊能忠敬記念館で伊能図と
衛星地図の寸分違わぬ精緻さに心揺さぶられたのも宿命だったのだろう。


「大河への道」とならんで小生の好きな「志の輔らくご」が「中村仲蔵」。

今回のパンフレットに写真家橘蓮二さんがこんなコメントを寄せている。

初めてのパルコ公演から撮影を続けてきて真っ先に思い浮かぶのは、
志の輔師匠自身と重なる『中村仲蔵』のクライマックスの台詞。
だったら変えればいいんだ。誰も何もしやしない、ただ言うだけだ
何の世界に於いても口で言うだけなら容易い。本物の表現者は行動で示す。
そのことを”志の輔らくご”は体現している。



エンディングに流れる映像(日本の美しい海岸線、大日本沿海輿地全図)のBGMが
サディスティック・ミカ・バンドの「黒船(嘉永六年六月四日)」


なんと完璧なエンディングよ! グッジョブ!