小沢主義 志を持て、日本人

小沢主義 志を持て、日本人

小沢主義 志を持て、日本人

一章について。どぶ板選挙や戸別訪問の肯定は賛成である。農産物貿易自由化の主張は、小沢はこれを主張していたせいでおおっぴらにはTPPに反対できなかったんだろうなと苦笑する。「直接払い」は大規模農家のみに支払われる大規模農家優遇策だから「不足払い」にしろという主張はなるほどと思った。


二章について。富の再配分に終始した戦後日本に政治はなかったという主張は同意できるが、格差を拡大したから小泉政権時には政治がなかったという主張は論理が飛躍している。格差の問題と政治の有無は関係がない。また、日本の三大改革に大化の改新明治維新と並んで織田信長を挙げるのはどうか? 私も信長の大ファンだが、彼は構想としては優れたものを掲げていたものの現実に新たな体制を創り上げたのは家康だろう。改革者の名に頼朝が挙がらないのも不自然である。改革を一度行うなら徹底的にやれ、というのは同感である。


三章については概ね同意。


四章は押しつけがましい。
自己表現のできる仕事はそう多くはない。大多数の人間にとって仕事は「目の前にあるものをこなす」ものであって、またそれで良いと考えている。そうした現実から目を背けて「仕事に志を持て」というのはサラリーマンとして働いたことのない小沢らしい理想論だなと感じた。また、小沢は現代人のモラルの低下としてマンション偽装事件とライブドア事件を挙げているが、マンション偽装は姉歯一級建築士個人の悪事であって構造的な問題ではないことが明らかになっている。ライブドア事件については堀江の行為に悪質性は見られない。なにより、両事件ともごり押しで小嶋進氏や堀江貴文氏を有罪判決に追い込んだ検察の異常性をこそ批判すべきであり、小沢氏はその後身を以て体験したことではないか?
坂本龍馬をリーダーだとする主張にも同意できない。彼は優れたビジョンの持ち主ではあったが人を率いたリーダーではない。
原敬が「山縣有朋が生きているかぎり、日米戦争はない」と考えていたというエピソードは面白かった。原敬山縣有朋と言えば、「あれは足軽だからだ」の印象が強いからなぁ。


5章については同感である。


6章は、教育の責任を国と地方が押しつけ合うのが問題だという指摘は鋭いものの、モラルがどうこうと抽象論に堕した印象がある。言うまでもなく日本人のモラルは漸進的に向上しており、そうした現実から目を背けて繰り言を書いてしまったのは残念である。