11世紀初頭のヨーロッパ北部におけるヴァイキングたちの物語。
同著者の『プラネテス』はアニメを見たのもコミックを読んだのもはてなダイアリーを始める以前のことで,残念ながら感想とか全く残っていない。本は手元にあるので読み返したいと思いつつ,積ん読が多すぎて再読へリソースを回すのが少々難しい。そういうわけで詳細はかなり忘れているが,『ヴィンランド・サガ』が似ても似つかない世界の物語であることは確かで,よくぞここまで違う作品が描けるなぁと感心しながら読んだ。
ヴァイキングって日本人にとっては歴史的にかなり無縁な存在だったのではと思う。高校の世界史などで「ヴァイキングの襲撃」とかいう文字が教科書に載っていたところで,それがどのようなものであるか私は想像もできなかった。私の頭の中にあったのは幼い頃に見たテレビアニメ『小さなバイキングビッケ』のほのぼのした世界で,さすがにほのぼのした存在というのが間違っていることは分かっていても,どう恐ろしいのかどう残虐なのか,平和ボケも手伝って想像できなかった。ロンドン市博物館を訪れた時も,エディンバラで戦争博物館を訪れた時も,ヴァイキングはイングランドとスコットランドの戦争と同じくらい大きなテーマだったのに,依然として私の頭の中には竜頭の船と角が生えたヘルメットのイメージしか残らなかった。まったくお粗末すぎる知識に我ながら悲しくなるほどだった。
この本を読むことで,ようやく頭脳が理解に向かって動き出すことが出来た気がする。コミックの力は偉大だ。そうして,こういう物語を描いてくれる作者の方々は本当に偉大だと思う。読み始めた瞬間から引き込まれて読み進めずにいられない迫力があった。
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- 作者: 幸村誠
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物語はトルフィンの過去へ遡る。トルフィン少年はアイスランドで父トールズ,母ヘルガ,姉ユルヴァと暮らしている。トールズは深い信念を抱いた芯のある男で,奴隷を使わないなど変わっているが村の人々に一目置かれている。ある日,ヨーム戦士団の艦隊が現れ,トールズが昔ヨーム戦士団の大隊長だったことが分かる。
トルフィンがアシェラッドのもとでどんな風に成長していくのか楽しみだ。
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そして1013年,ロンドン橋。そこを守るのは大男で腕の立つトルケル。手こずるアシェラッドたち。トルフィンはトルケルの首を取りに行く。同じ頃ヨーム戦士団のフローキもロンドン橋へ。トルフィンもトルケルには叶わなかったが,トルケルはトルフィンの父トールズの名前を知っている様子。
夜バカ騒ぎをするヴァイキングの仲間から一人離れて丘の上に座るアシェラッド。アシェラッドの違う側面が垣間見られる場面は印象的だ。たそがれ時代の夜明けに現れた一人の使者。クヌート王子奪還作戦の始まり。
一方,アイスランドではユルヴァが涙をこらえて一人で母を助け頑張っている。
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冬のイングランド,マーシア伯領での略奪&虐殺。グレートブリテン島でヴァイキングの脅威がいかほどのものであったのかよくわかった気がする。
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しかしまもなく村の生き残りの娘の証言によりアシェラッドたちの居場所はトルケルたちに知られることとなり,追っ手がかかる。戦利品を捨てて旅立つ一行。アシェラッドが運をなくしたのではと不安に駆られる部下達。トルケルは戦争大好きだがバカではないから,アシェラッドの器量を見極め,裏切った部下の方に剣を向ける。トルフィンはアシェラッドの助太刀に向かう。彼はあくまでも父の敵は自分の手で殺さねばならないらしい。
付人ラグナルを失ったクヌート王子は生まれ変われるのか。
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クヌート王子を守ったビョルンはここでアシェラッドとの友情を確認し最期を迎える。アシェラッドを一度裏切ったアトリは心を病んだ兄を連れて故郷へ帰り,アシェラッドの部下はトルフィンだけとなる。
クヌート王子は王から褒美を受けるためにヨークへ向かうがそこでも当然罠が待ち構える。一方,交易の街ヨークではヴァイキングによる奴隷売買が盛んに行われており,アイスランド時代にトルフィンを可愛がりトールズの船でも一緒だったレイフがトルフィンを探すために滞在している。
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アシェラッドの死を目の当たりにしたトルフィンの顔は悲痛で,憎んでいるつもりでも彼にとってアシェラッドがどれほど重要な存在であったかを物語っていた。
たぶんこれで「第一部の終了」的な感じだと思われる。