七夕コンサート(6)

「ギタリスト、夢美路丈旁。」

「建築家、日詰明男。」

新幹線を降りたら、タミヤ模型の大きな看板。



静岡市美術館は何処ですか?」

新しい土地にいったら、誰かに声をかけるところから始まります。

何処の国に行っても共通していること。

エスカレーターを上がり、静岡市美術館へ。

受付へ。

「あのー、七夕でギターを弾くんですけど。

ここで。そう、ここで弾くんですよね、ギター。

8月24日なんですけど。金曜日に・・・。

日詰明男さんの七夕で弾くんですけど。

新暦じゃなくて、旧暦の七夕で・・・。

あ、申し遅れました。

すみません。 」

「名前は、夢美路丈旁です。」

-fine-

「日詰明男と夢美路丈旁」

夢美路丈旁

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2012年8月24日(金)静岡市美術館「旧暦七夕コンサート」 に、ご来場いただいた、多くの方々。

このコンサートに関わって頂いた多くの皆様、ありがとうございました。

ケチャック奏者の方々の集中力に助けられたギターの演奏だったように思います。

演奏する機会を与えて頂いた、日詰明男様へ。

ありがとうございました。

夢美路丈旁

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七夕コンサート(5)

2012年8月24日(金)静岡市美術館にて。

15人の奏者と、日詰明男さん、夢美路丈旁。

午後5時過ぎたところ。

誰からそこに、舞台に入るかは決められていませんでした。

僕も、決めていませんでしたし。

会場、静岡市美術館エントランスホールに奏者に紛れながら入場。

二宮知子さんと、常設している写真をぼんやり眺め、少し話しをしたあと。

まだ、誰も足を踏み入れていない舞台をぼんやりと眺めた。

午前9時30分、葵タワー1階に建てられた、「フィボナッチ・タワー」をぼんやりと眺めた。

「何をやり遂げるために生まれてきたのか。」

そんなことを目の前の塔は、静かに僕に問いかける。

「あなたの祖国は何処なのか。」

午前 9時35分静岡市美術館に到着。

毎日新聞社支局ビル7Fでは、日詰さんに会場すぐ、舞台にはいっていただいた。

だから、というわけでも無いと思うけれど、もう足はゆっくりだけど、スッと動いていました。

足に意識を任せたつもりはないけれど。

そのことは、踵からふくらはぎへ、膝で少し回って、骨盤へ。

そこで、僅かな時間を持った後、胸の中心へ。

舞台へ。

入ったときと入る前の境界線で、何となく最初に思ったこと。

「いつも、事象は結果的。今が何処なのか、認識するのは、いつも難しい。」

そこからは、他者の時間。

午後5時30分

開演

終演後、荷物をパッキングして、ホテルへ。

ぼんやり、空を見上げた。

月が舟になっていた。

7番目の月。

女性の声。

「ふねができたよ。」

2012年8月24日(金)静岡にて

夢美路丈旁

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七夕コンサート(4)

静岡到着後、2日目。
川根本町、日詰さん宅に一泊後。
美術館に送迎してもらい。
リハを終え。
ホテルにチェックイン。

1時間半くらい経ったころには、ホテルに備え付けてある、分厚いメモ張が足りなくなっていました。
何となく、覚書きのつもりで書き始めただけだったのですが。

今日のリハで気付いたところや、気になったところ。
ここを、こうしたら、どうかという思いつき。
明日、やるべきこと。
明後日やるべきこと。

こういうのは、どうだろう。
ああいうのは、どうだろう。

これは良くない。
これは良い。

本番までに全て出来るわけが無いので、そこから、本番までの時間で出来そうなことを抜粋していく。

今、手元にそのときのメモで残ったものがあるので、以下に記載してみます。

たくまくんの口琴と、フリーフォームで共演しておくこと。

日詰さんとのDUO、感覚ではなくスケールに対してアプローチすること。
JAZZのSWINGでアプローチすること。

ベルの音、もっと際立たせる方法はないか。

出だし、ケチャックがはじまったところ、ギターのVOLUMEは、OFFにしないこと。
フル・VOLUMEで立ち上げて、弾かないこと。

共有できること僅かでも良いからをひとつは、演奏中に見つけ出すこと。

弾いている自分は、置き去りにすること。

聴いている自分を身体で認識すること。

何かしら、即興的な出来事が起きたら、それについていく事。ただし、ついていくときに、全体を把握する対極感も一緒に連れて行くこと。(重要)即興を即興のまま、手放しには、しないこと。

衣装は2日前には試着してリハで演奏すること。

参加者、全員で、ストレッチする時間を持てないか。

「EASY MONEY」を解体すること。

エントランス・ホールで、身体を出来るだけ、動かす時間を持つこと。

AMPから、電源までの距離。(未確認。)

立ち位置の確認。

動ける範囲を身体で把握すること。

照明の明るさと暗さを実際に確認すること。

エントランス・ホールで、プレッシャー・ウォークを出来る限りすること。


その後、シャワーを浴び、静岡市美術館で買った、小説、数冊をざっと読む時間。
時々、思いついたら、ギターを手に取り、フレイズやスケーリング(コンビネーション・オブ・ディミニッシュとホール・トーン、リディアンを少し)の確認。

静岡市美術館から持ち帰った、気になる個展のフライヤを眺める。
近くで、福井利佐さんの個展が開催されている様。

TVカードをホテルの自動販売機で買い「インディ・ジョーンズ 最後の聖戦」をみようかどうしようか、迷ったが、ロビーに問い合わせたところ、吹き替えの可能性があったので、やめて、就寝。

朝まで、ぐっすり眠ってしまいました。

夢美路丈旁
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http://www.youtube.com/watch?v=0g0hOaiJD04&list=UUqhvCiPTYv5op5Nzybvprtw&index=1&feature=plcp
http://www.youtube.com/watch?v=UTlOtUpaL_U&list=UUqhvCiPTYv5op5Nzybvprtw&index=2&feature=plcp
お時間宜しければ、ご覧くださいませ。
映像は、2012年8月22日(水)静岡市川根本町、日詰明男さん宅にて。
音は、その後、2012年8月24日(金)静岡市美術館「旧暦七夕コンサート」での音源から。
日詰明男さんのサイトで、2012年8月24日(金)静岡市美術館「旧暦七夕コンサート」の全編を聴くことが出来ます。是非ご覧くださいませ。
以下のアドレスから、アクセスできます。
http://www.starcage.org/tanabata/concert.html

七夕コンサート(3)

ギターの本来的に弦自体が持っている倍音成分を、ちょっと暴れすぎかなというラインまで立ち上げ、それらを手元で、絞り込んだり、開放させたりする。

結局のところ、そんなセッティングに落ち着いたのかなと思います。

僕のギターはもし、他のギタリストが弾いたとしたら、かなり弾きにくい設定かもしれません。

何しろ、クリアな音のまま、歪んでいるか、歪んでいないか、倍音のみ立ち上げ、低音を中音域は、暴れるだけ暴れて、なのに高音域はキツイ位ブーストされています。

が、僕の演奏方法には、このセッティングが必要不可欠だったりします。

僕は、良く演奏する前や、演奏する前夜、手元にあるギターや機材をみて、

「アコースティックな電気楽器」

とか思います。

以下に、ノートとして、今年のセッティングを書き付けておこうと思います。

ギターからのOUTPUTは2つあります。

ブリッジのピエゾピックアップで弦振動を拾い、プリアンプを通して(ここで、高音域と低音域がブーストされます。)

2CHアナログミキサーへ。

マグネットピックアップから、「TUBE SCREAMAR」でブースト。(中音域の粘った音にここで加工してしまいます。)

2CHアナログミキサーへ。

最近では、2つのアウトプットをギターから出力するやり方も随分一般的になりましたが、市販の主に、テクニカルないわゆるフィンガー・ピッカーようのものは、どうも音があからさまにクリアすぎてあまり好きではありません。

そこで、本来ならこういった設定の場合、重低音が出しやすいマグネット・ピックアップを反対に微弱なものを使用に、粘り気のある、TUBE SCREAMERで、立ち上げています。

プリアンプとTUBE SCREAMERで増幅された音は2CHアナログミキサーで、音が少し痩せますが、ここが僕のセッティングではかなり重要だったりします。

ここで、音痩せのない高価な、2CHミキサーに入れて更に強い音にしていまうと、僕の音ではなくなるのです。

一旦、電気信号を、ミキサーの音痩せを利用して、繊細にさせてしまいます。

そこから、ブースター(今回はEPを使いました。)でもう一度、立ち上げ、アンプへ。

アンプは30Wのものが、僕には良いようです。

アンプは、出力するスピーカーである以上に、エレクトリック・ギターのボディだと思っています。そう考える方が、色々なことは、圧倒的にスムーズだと思います。

(文章化すると、何かたいそうな感じですが、機材の現実的な大きさとしては、アンプを除けば、20cm×15cm程度ですから、かなり小さなものです思います。)

さて、出音はどうなるか。

それは、聴いた方の判断に任せたいですが、簡単にいえば、異常なくらい、レンジの広い音になるんですね。

しかも、出音は以外に小さいという。

多くの大切な経験が、実はこのセッティングの奥深くに、脈々と血液のように生きているように感じる今日この頃です。

そんな、セッティングで、「旧暦七夕コンサート」に、望みました。

セッティングに関しては、もっと詳しく書きたいところですが、今日は、この辺で。


静岡に到着、僕が参加して始めてのリハーサル。

その後、日詰さんに送迎していただいて、静岡市川根本町日詰さん宅へ。

翌朝のこと。

随分、ぐっすり眠っていたのだろう。

そう思いながら夢うつつで起床しました。

昨夜、夕食をいただき、珈琲。それから昼食のために稼動している、カマドの中で揺れる火をぼんやり観ていたら、来年の七夕のことを思った。

短い時間で、身体を立ち上げて、カマドと接する時間。

火の体温をたっぷりと感じながら。

竹の棒をゆっくりと扱う時間。

細い竹の重さを身体全体で感じる時間。

竹を扱おうとするのではなく、その持っている細い竹の棒自体にその行き先を聴く様に。

そんな時間がありました。

際限なく続く虫の音。

小さな、音楽プレイヤーで再生される、「ゴールド・ベルグ変奏曲」と「EAZY MONEY」。

http://www.youtube.com/watch?v=0g0hOaiJD04&list=UUqhvCiPTYv5op5Nzybvprtw&index=1&feature=plcp

http://www.youtube.com/watch?v=UTlOtUpaL_U&list=UUqhvCiPTYv5op5Nzybvprtw&index=2&feature=plcp

お時間宜しければ、ご覧くださいませ。

映像は、2012年8月22日(水)静岡市川根本町、日詰明男さん宅にて。

音は、その後、2012年8月24日(金)静岡市美術館「旧暦七夕コンサート」での音源から。

日詰明男さんのサイトで、2012年8月24日(金)静岡市美術館「旧暦七夕コンサート」の全編を聴くことが出来ます。是非ご覧くださいませ。

以下のアドレスから、アクセスできます。

http://www.starcage.org/tanabata/concert.html

夢美路丈旁

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PAT METHENY

「OFFRAMP」

を聴きながら。

ギターシンセに、息使いを感じさせるって凄いですよね。

これ聴くと、つい、FREY FAUSTを思い出します。

大好きなアルバムです。

たけぼう

七夕コンサート(2)

僕から観て、右前方の奏者がフィボナッチ・ケチャックを叩いている。

僕から、丁度、左あたり日詰明男さんが、基本のケチャックを叩いている音。

右前方の奏者への距離は、4から5メートルくらい。

聴こえる音は、館内天井に反響する残響音の方が先。

左手の、日詰さんからの音は、残響よりも打点の方が僅かに早い。

「客席はどうか?」

流れを聴いているはず。

まず、遠い音に合わせていく。

「客席に合わせるのが良い。」

遠いところに、音量を合わせる。

結果的に、日詰さんの打点とシンクロする。

「DUOは、始まる。」

もし、違っていたら、新しいことを紡ぎ出せば良い。

「対応したくは無い。」

僅かで聴こえないくらい小さな音であったとしても、自発的でいたいし、いるべきだ。

日詰さんとのDUOになだれ込む少し前。

時間にしてみれば、きっと3秒にも、満たないかもしれません。

僅かなところの奥には、沢山のことがありました。

「そう思うのは、何時以来だろう。」

刹那を揺ぎ無い事象として捉えるのは。

京都毎日新聞社支局ビル7階。

「スター☆フェスティバル」。

最後のところ。

北西角。

アコーステッィク・ギター。

赤。

青。

ベルの音。





静岡市美術館

七夕コンサートが始まる前。

日詰さんの「辻講釈」。

「4次元の話。」

「ここと、ここの面は絶対に合いませんよね。合ったとしたら、それは、4次元の話です。」

機材のセッティング。

最終確認をしていたときに、耳に入った言葉。

「あわせてみよう。」

そう思った。



ギターを調弦しているとき。

チューニングが施されたギター。

ワークショップルームに向かう廊下は、スタートライン。

「開場まで、あと2時間。」







夢美路丈旁

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七夕コンサートのこと(1)

静岡市美術館エントランスホール。
2012年8月24日(金)。
「旧暦七夕コンサート」。

開演して、演奏は進み最後のセクションになだれ込みました。

その、ほんの少し前のところ。

A-クイックと奏者の間では呼ばれる終わり方です。
舞台演出家なら、その終わり方を「カットアウト」というかもしれません。
今回のそれは完全に一線を画します。


「ダン ダン ダン ダン ダン!!!」
(た た け た け)

2秒あるかないかの静寂。

すぐさま、観客の拍手が、会場を包みます。

リハの時には、当然、その拍手は無い状態で、演奏していました。

段取り上は、その後、僕のギターソロです。

かなり、高音域でトレモロピッキングをするつもりで、フレイズを用意していました。
21日から、参加していたリハーサル。
2日目に、そのフレイズを用意しました。

拍手を聞いた瞬間。

「用意してきたフレイズをここで、弾くのは違う。」
と判断。
フレイズをあっさり全て、捨ててしまいました。

そうさせてくれる、本当に素敵な拍手でした。
今、終わっても良いのではないかと思うくらいでした。

「その拍手に答える演奏をすべき。」

まず、そう思いました。

「では、何を弾くか?」
「高音域での大きな音の演奏ではなく、深めで、浸透させるフレイズを。ゆっくり しずかに。」

「OK。」
問いかけ。
答え。
そして、了解しました。



ギターソロは、もう既に、静かに始まっています。
弾いている音よりも、会場の響きを最優先にします。

響きに良いも悪いも無いと考えます。
そこに、その響きがあると。
そのことが大切です。

パリの地下鉄の中だろうと、黒人街のクラブだろうと、劇場だろうとその姿勢は全くぶれません。

全ての場所は同じではないが、響きがそこにあることが共通していると思います。


ソロが始まって、1分30秒ほど、経ったくらい。

左側から、「カラン」という音が鳴りました。

日詰明男さんが、スティックを落とした音。
意図的か、無意識かは、僕の位置からは、確認出来ません。
それよりも、本当に綺麗なタイミングと音でした。

もし、用意していたフレイズを弾いていれば、スティックが落ちた音は、相対的に僅かなものですし、演奏に与える影響は違ってきます。

もし、用意していた大きな音で高音域の演奏をしていれば、そのスティックは落ちなかったかもしれません。

必然と偶然、出逢いの概念をそのスティックの音は鮮やかに吹き飛ばします。

起こった出来事を全て肯定的に捉えるポジティブな姿勢こそが即興演奏の醍醐味だと思います。



A−クイック手前の演奏は、リハよりも長めです。
長くなった部分は、その場でフレイズを紡ぎだしていました。


即興に入るための必要な身体と意識。

準備は既に完了。

弾いた音を聴く、それが次の音を呼ぶ状態。

理想的だけど、危うい状況。
一度、意識をとばした経験があります。
2008年11月でした。

制御不能と隣り合わせ。

前と違うことが、一つだけありました。

身体の技術を3年間、学び続けた。

「どこまで、意識が深いところまでいっても、身体が客観視すれば、制御は可能なのではないだろうか。」
その思いつきに着いていった3年がありました。
それで、良かったのだと思いました。




演奏はエンディングに向かっていきます。

京都芸術センターで、日詰明男さんがフィボナッチケチャックのワークショップを行っている2008年の記憶が頭をかすめます。

長い髪。鎖を巻きつけた重い服。

「はじめましょうか。たたけたけ。」





用意していた、フレイズはもう既に、全く無くなっていました。

リハの時とは違い、何故か、力強く突き進む演奏ではありません。
そのことが、何より素敵でした。

音が消えきるまで、静かで、深めで、どこまでも、浸透していくようなフィボナッチ・ケチャックの演奏でした。

ギターの音が消え、竹の音だけが、残ります。

静寂にもう一度向かっていきます。

小さなカケラが散りばめられ、だが、確かな位置を揺ぎ無く持っているオトの中で、僕は、「キレイだな。」と思いました。
夢美路丈旁
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2012年8月26日(日)