やしお

ふつうの会社員の日記です。

大江健三郎『新しい文学のために』

http://book.akahoshitakuya.com/cmt/10781477

「読むことを、できうるかぎり多面的なものとする必要がある」(p.110)ということで色々な読み方/書き方が本書では紹介されている中で、多義的、ポリフォニックである事については、あまりそういう視点で意識的に小説を読んではいなかったので少し目が開かれました。(無意識にはそこで面白い/面白くないを感じていた気はしますが。)出版された88年の時点でも目新しくはないはずのあれこれを敢えてこの人が書かざるを得なかった危機感、というのはもっと考えた方がいいのかもしれない。

新しい文学のために (岩波新書)

新しい文学のために (岩波新書)

阿部和重『ミステリアスセッティング』

http://book.akahoshitakuya.com/cmt/10781456

なんかもう、びっくりしちゃった。前半で中二病みたいになってたときは笑って読んでたのに、最後は変な感動が。スズキくんの言う「別の何か」もノゾミも、そうした超越的な力を使わず、ひたすら聖なる愚者として無償の受け入れを完遂させるシオリ。子供たち→公園のジジイ→シオリと二重の入れ子構造になっているのは、フィクションのレベルにおいてもシオリの生涯を不確定な状態にして神話化させるためなのだろう。

ミステリアスセッティング

ミステリアスセッティング