新々組織論

昨日のコメント欄は座位様のコメントが発火点になったのか「立つ」が焦点となっていました。今日はそれを受けてエントリーしたいと思います。

「立つ」にはやはり組織が欲しいところです。組織論を書くのはもう何回目か忘れそうですが、これまでは基本的に不発でした。不発の原因を反省してみるとあまりに政治的に傾きすぎたのではないかと考えています。団体に政治的色彩が強くなれば、大勢では足並みがそろっているネット医師でも、個々の利害が微妙に相違し話がまとまりません。また政治的色彩の強い団体は本格的な医療崩壊の中でスケープゴートに仕立て上げられる懸念も間違い無くあります。

そこで発想を変えます。もっと現実的な医師の欲求の実現をサポートする組織を作る方向性を摸索してみたいと思います。組織の目的を列挙してみると、

  1. 今の医師が切実に望むもの
  2. 崩壊焼野原になっても変わらず望むもの
  3. 崩壊焼野原路線を阻害しないもの
この程度の条件を満たす組織なら設立可能ではないかと考えます。

具体的な方向性は遵法闘争路線です。これもBugsy様以下から寄せられたコメントから思いついたのですが、良くも悪くも医局の傘から離れて、まったくの個人になった医師の立場は案外弱い事実を支える組織です。ぶっちゃけた話、労働組合そのものなんですが、回りまわってそれこそが一番有用な気がします。

これまで医師は病院に就職するときの契約について無頓着でした。下手すると給与額ですら、最初の給与明細を見て「これだけか」なんて話は幾らでも転がっています。労働条件も働いてみて「こういうところか」とやっとわかるような話も珍しくありません。しかし医師の労働条件を改善するためには就職時の労働契約を明確にする事がもっとも基本的な闘争ではないかと考えます。労働環境の劣悪さに泣いても契約内容がそうであるなら、そこを覆すのは容易ではありません。劣悪なら逃散するのも良いですが、逃散だけでは全体の改善になかなかつながりません。

もちろん逃散戦術が無効という訳ではなく、医師確保に戦々恐々としはじめた病院は見た目の条件は吊り上げるようにはなってきています。しかし皆様がご指摘のようにいったん就職してしまえば、旧来の医師管理の発想で無限労働をなし崩しで押し付けてきます。発想的には年収条件を良くした分だけモトをとる発想です。そういう病院は情報社会で淘汰整理されていくのを待つのも一法ですが、情報を入手しない善良な医師が食い物にされるという犠牲を払ってもいるのです。

それを正していくには契約を明確にして労働環境を確保し、医師もその契約内容を熟知して、あくまでも契約に従った労働を行なうようにするべきです。これは不法行為でもありませんし、労働者でもあり個人事業主にも近い医師が身を守る方法と言えるかと考えます。具体的な契約時の要求項目は、

  1. 労働基準法に則った労働内容になっているか。
  2. 宿日直は厚生労働省通達を厳守した内容になっているか。
  3. 救急当番は当然勤務であり、また救急病院等を定める省令の能力が無い医師なら、奈良救急事件の判例に基づきこれを当然拒否する事。
  4. 在宅医療が必要とされる病院なら、患家での輸液監視不十分事件の判例に基づき、判例の示す医療行為を保障する体制を厳守する事。
とりあえずこれぐらいを明確に契約内容に盛り込むべきかと考えます。盛り込んだだけならなし崩しがありますから、なし崩しがあった時のサポート組織を作ろうというわけです。組織の仕事としては医師の契約時の交渉のサポート、契約違反時の労働基準監督局への通報などの法的支援です。また上記要求項目は契約がどうであろうと遵守されて当然のものであり、遵守されていないところへの法的支援を行うというものです。

そのためには組織加入医師は会費を払い、組織は会費を元に弁護士、社会保険労務士などを雇い、加入医師の労働環境の確立に努めていくというものです。この組織は医師が手にして当然の労働環境の実現だけに従事し、表立っての政治的発言は行ないません。あくまでも法に定められている労働環境が整備されるように動くだけです。

これならば勤務医の利害はほぼ一致するはずです。また崩壊の早期実現に十分すぎるほど寄与しますし、焼野原後に医師が望む労働環境の実現そのものの運動です。要求している項目に法に反している行動は一切ありませんし、慎重に政治的行動を慎めば、スケープゴートにされる事も回避できるのではないかと考えます。

協力していただく弁護士や労務士もそんなに難しい仕事を要求しているわけではないと考えます。明確に法に定められている条件の要求だけですから、法曹的解釈でもそれこそ「正義は我にあり」です。不法や不当な要求は一切ありませんし、むしろ法に従って適正化するのですからやりやすい仕事ではないかと考えます。

法にはあまり詳しくないので弁護士と労務士をあげましたが、他にもこういう事にふさわしい専門家がいれば、協力を仰ぎたいと思います。今朝は草案だけですので、運営資金がどれほど必要か、それにともなう必要会員数や会費までは概算できていません。ただ出来上がれば最初は小規模な運動であっても効果はかなりあると思いますし、速やかに運動は広がると考えます。

どんなものでしょうか。