BlackBerryと日本のケータイと広告


日本ではドコモから発売されているスマートフォン、"BlackBerry"ご存知ですか?
最近購入したので、いろいろと考えていることを書いてみます。

このデバイスのバタ臭い顔から想像できると思いますが、海外製品です。
カナダのResearch In Motion社で開発されました。発売当初は、キーボード付のポケベル程度のものでしたが、PDA化していわゆる「小さなPC」と言えるデバイスになり、人気が爆発、今では欧米ビジネスパーソンの御用達グッズとなっています。
私は使い始めて2週間程度ですが、このデバイスが日本のモバイルマーケティング市場に登場するにはまだまだ時間がかかると感じました。
理由は「日本のケータイサイトが閲覧できない」こと。

ケータイサイトでは、アクセスに使われた機器を自動で認識し、解像度を最適化したり、使えない機能をオフにしたり(たとえばFlashが表示できない機種でアクセスされたら、それを切る)しています。
また、ユーザーにとってURLは少ないほうがメリットが大きいですから、PCとモバイルが同じURLでアクセス出来るように、PCとケータイで表示させるサイトを振り分けるのが普通です。携帯でしか使えない機能を使っていたり、携帯での表示に合わせてグラフィックを落としたりしているので、通常はPCからケータイサイトを見る理由がありません。
しかし、BlackBerryでアクセスするとケータイであるにも関わらずPCサイトに飛ばされてしまいます。それは何故か。
モバイルサイト制作の現場で、BlackBerryからのアクセスを想定していないので、ケータイだと認識しないのです。日本でキャンペーンをするのであれば、ケータイからのアクセスはホストが限られています。docomoKDDISoftbankWillcomE-mobileだけですね。これらからのアクセスは、ケータイサイトへ、それ以外をPCサイトへ飛ばすようにシステム構築をしているのです。
当然ですよね。普及数がまだまだ小さいBlackBerryのためにシステム開発工数を増やすのは合理的ではありません。ユーザーである私が開発担当者でも、BlackBerryからのアクセスは除外して考えると思います。

では、BlackBerryからたとえばmixiにアクセスするとどうなるか。私の実機でのスクリーンショットをご覧ください。

このように、PCサイトが表示されます。当然、広告もPC用、その先にあるキャンペーンサイトもPC用です。リッチなコンテンツを使ったキャンペーンサイトなど閲覧できませんし、申し込みフォームの動作にも問題が出るかも知れません。
つまり、実質的に、BlackBerryはモバイルを使ったキャンペーンに参加できない訳です。

モバイル広告のスターであるSNSがこれでは困ってしまいます。しかし、海外ではどうでしょう。
たとえばFacebook。大人気のSNSサイトですね。BlackBerryでは次のように表示されます。

非常に見やすいですね。これは何かと言えば、BlackBerry用のfacebookアプリです。アプリ化することで、表示問題をクリアし、使いやすいUIを実現しています。同じように、twitterMySpaceもアプリが提供されています。すばらしいソリューションですね。
これは、ただ現地で人気があるから、だけではありません。もともと欧米のケータイではウェブ閲覧が一般的ではないために、このように進化したのです。つまり、もともとケータイサイトが発達する土壌がなかったわけです。
iPhoneが熱烈に歓迎されたのも、BlackBerryが非常に普及しているのも、この点がポイントです。ウェブ閲覧ができるケータイ自体が貴重であり、価値があったのです。

日本でBlackBerryが広まらない理由は、それを裏返せば分かります。日本では、ウェブ閲覧ができるケータイが当たり前で、最初からPCとケータイのウェブサイトが住み分けて進化したからに他なりません。要するに、わざわざBlackBerryでウェブを閲覧するのは、かえって不便な訳です。(当然、私はそれ以上のメリットを感じているから購入したわけですが)

日本のケータイはよく「ガラパゴス」と例えられます。特殊な進化を遂げてしまって、外界に適応できないという意味です。しかしそうではなく、日本のケータイは生活者に寄り添って、非常に使いやすく、洗練された進化を遂げていると私は思います。
そのような進化をしたからこそ、ケータイでのプロモーション・マーケティングは日本市場で力を持ち、今や広告業界で数少ない成長媒体となっているわけです。
ちょっとした動作(短いメールを送る、ウェブで乗り換え案内を調べる、電話帳に登録するなど)は、BlackBerryなんかよりもずっと使いやすく出来ていると感じます。
モバイルマーケティング業界の第一人者、日本コカコーラの江端氏はこう仰っていました。
「日本のケータイはガラパゴスではない。トゥモローランドだ」

私はこのエントリの冒頭で、

このデバイスが日本のモバイルマーケティング市場に登場するにはまだまだ時間がかかる

と書きましたが、それはつまり、海外製のケータイが日本のトゥモローランドに追いつくのには時間がかかるだろうな、ということです。日本のモバイルマーケティング業界は、かなり特殊な状況下にあります。先行事例もまだまだ多くありません。
しかし、生活者に寄り添って進化した日本のケータイは、マーケティング上、非常に有利な消費者接点ではないでしょうか。