C86 お品書き&試し読み

遂に9/3にぽにきゃんBOOKSから発売される「漆黒のリグレット」にてライトノベルデビューの夢を果たすことができました!!

と、そちらの宣伝ではなく、コミックマーケット86に参加が決定しました!
三日目西る-11bにてサークル参加しております。新刊はラブライブの穂乃果絵里のんたぬ小説です!

pixivでも告知をしております。
こちらでは小説の冒頭部分が読めますので、そちらも是非どうぞ!

http://www.pixiv.net/member_illust.php?mode=medium&illust_id=44730635

どうぞよろしくお願いします!

3/30 「僕らのラブライブ!3」に参加します!

2014年3月30日(日)ラブライブ!オンリーイベント『僕らのラブライブ!3』に参加します!
『ノ07』にて、サークル『リリラバ』です!

pixivでも告知をしております。
こちらでは小説の冒頭部分が読めますので、そちらも是非どうぞ!

http://www.pixiv.net/member_illust.php?mode=medium&illust_id=42286213

今回もへいろーさんに素敵なイラストを仕上げていただきました。

そして今回のオンリーでは、前回の冬コミで完売してしまったへいろーさんの本を委託販売いたします!

内容はこーんな感じです。

http://www.pixiv.net/member_illust.php?mode=medium&illust_id=40273173


冬コミにて完売して購入できなかった、という方は是非この最後の機会をお見逃しなく!

3/30、どうぞよろしくお願いします!

Final Fantasy Tactics Love Live!

ラブライブ!に登場するμ’sの九人がFFTの世界にいったらどんなジョブでどんなアビリティを付けているんだろう、なんて楽しくもうそ……想像してたらなんか固まってきたので、制限ルールみたいなのを設けてやってみようかなっていう構想。
どう考えてもアビリティ無駄にしてんだろ、ってのも多々ありますが、あくまでキャラのイメージ重視です。


高坂穂乃果

ジョブ:話術士
アクションA:引き出す
リアクションA:竜の魂
サポートA:防御力UP
ムーブA:移動距離地形無視


絢瀬絵里

ジョブ:召喚士
アクションA:踊る
リアクションA:瀕死クイック
サポートA:消費MP半減
ムーブA:アイテム発見移動orjp獲得移動


南ことり

ジョブ:アイテム士
アクションA:時魔法
リアクションA:潜伏
サポートA:メンテナンス
ムーブA:Move+2


園田海未

ジョブ:侍
アクションA:風水術or戦技
リアクションA:装備武器ガード
サポートA:自動弓装備可能
ムーブA:水上移動


星空凛

ジョブ:シーフ
アクションA:拳術
リアクションA:見切る
サポートA:調教or密猟
ムーブA:移動距離天候無視


西木野真姫

ジョブ:黒魔道士
アクションA:チャージ
リアクションA:警戒
サポートA:ショートチャージ
ムーブA:飛行移動


東條希

ジョブ:風水師
アクションA:陰陽術
リアクションA:ダメージ分配
サポートA:魔法防御力UP
ムーブA:テレポ


小泉花陽

ジョブ:白魔道士
アクションA:アイテム
リアクションA:反撃タックル
サポートA:まじゅう使い
ムーブA:exp獲得移動orアイテム発見移動


矢澤にこ

ジョブ:ものまね士
アクションA:なし
リアクションA:なし
サポートA:なし
ムーブA:なし


出撃条件等々

1 ラムザがダメージを与えるのは禁止。魔法、盗むなどのサポートのみに徹する
2 固定キャラの使用は強制出撃マップ以外は禁止。
3 μ’sキャラは連続出撃禁止。
4 μ’sキャラは三ステージに一度は必ず出撃させなければならない。
5 三章からの城、オーボンヌ修道院のような連続出撃マップでは、突撃前に条件4、5が一旦リセットされる。(ボスに合わせて編成を考えないと詰みかねないため
6 ディープタンジョン禁止。ただ、それ以外の寄り道によるレアアイテム取得は制限を付けない


勿論キャラのアビリティやジョブは固定なので変えるの禁止です。

FFTが好きでラブライブも大好きで、なんか久しぶりにゲームやってみたくなったけど縛り付けてやりてーなー、なんて方はこれで遊んでみるのもいいのではないでしょうか。

おい詰んだぞ! なんて苦情は一切受け付けませんので自己責任でお楽しみください(ぇ

『僕らのラブライブ!2』にサークル参加します!

2013年10月14日(月・祝)ラブライブ!オンリーイベント『僕らのラブライブ!2』に受かりました!
『ノ24』にて、サークル『リリラバ』で参加致します!

お品書きはこんな感じ!

あらすじはこーんな感じ!


pixivでも告知をしております。
こちらでは小説が少しだけ読めますので、そちらも是非どうぞ!

http://www.pixiv.net/member_illust.php?illust_id=38877591&mode=medium


ラブライブの小説を書くのは初めてですが、自分なりにμ’s九人のみんなの魅力を最大限引き出せるように頑張って書きました。
今回絵師を担当してくださったへいろー様のイラストも本当に素晴らしいので、是非是非お手に取って見てみてください!

それでは当日お待ちしております!

ラブライブ×クルくるSS クルくるside

※ こちらのSSは連載の続きとなります。
興味がある方はこちらの記事から読んでいただけると内容をより分かっていただけるかと思います。


http://d.hatena.ne.jp/ai_kanata/20130506/1367838697


それでは続きをどうぞ



「聖沙に怒られなきゃいいけど……」
 先生から注意を受けないよう、シンは適度な早足で流星学園生徒会室へと移動していた。授業が終わってから既に二十分以上が経過しており、既に生徒会室にはナナカ、ロロット、聖沙、リアの四人がシンの到着を待っているだろう。さっちんのスウィーツに対する独自の見解に付き合っている場合ではなかった、という後悔の気持ちが更にシンの足を速める。
「スイートコーンはそもそもスウィーツじゃない気がするんだけどなー……」
 といいつつ、さっちんの脱力を誘うような声での主張を頭の中に思い出しながらシンは一人呟く。『甘みスイートコーンはスウィーツか否か』という今回の議題は、焼きとうもろこしを勢い被りつくと歯の間に皮が挟まってしまい居心地の悪さが持続してしまう、という妙な結論で終わったのだが、そもそもとうもろこしは果物ではないためスウィーツと分類するのはおかしいのではないだろうか。
 と、そもそもの議題の矛盾に気付いた時、シンは生徒会室の扉の前に到着していた。遅刻した事を聖沙に咎められてしまうのだろうな、と先の展開を予想しつつ頭の中で弁解の論を急いで固めながら生徒会室の扉を開いた。
「すいません、遅くなりました」
 謝罪と共にシンが入室する。だが、いつもならばリアが挨拶を返してくれるところなのだが、室内に響いていたのはアップテンポの音楽と澄んだ女の子の歌声だった。既に生徒会活動の準備を終えていた四人は生徒会専用のノートパソコンから目を離すことなくずっと何かの動画を眺めている。
「あ、シン君。こんにちは」
「遅れてすいません……。あの、何見てるんですか?」
 顔だけこちらに向けたリアが短く挨拶すると、すぐにパソコンに目を戻してしまう。彼女達は何を熱心に見ているのだろう、とシンも後ろに回って画面を覗き込んだ。
 再生されている動画では、九人の女の子達がどこかの講堂で歌い、踊っている映像が映し出されていた。学校の制服を着ているのを見るとシン達と同じ学生のようだが、どこの学校かは分からなかった。
 何かの部活の演目だろうか。それとも今巷で流行しているアーティストグループなのだろうか。世間の風俗に人一倍疎いシンには、彼女達が何者なのか分からなかった。
 だが彼女達の歌が、曲が、降り注ぐ柔らかな日差しのような笑顔が、滑らかに踊りから、シンは目が離せなくなった。画面を通した映像にも関わらず、心が自然と弾んでいく。歌詞の一つ一つのフレーズが、まるで活力を呼び起こしたかのように体が熱くなっていった。煌びやかな照明のせいではなく、彼女達の笑顔がキラキラしていて、シンは思わず見惚れていた。
「す、すごい……」
 そして曲が終わり、色鮮やかなサイリウムを持った人々の歓喜の拍手で講堂が包まれた。しばらく止む事のなかった拍手の間に九人の少女達は舞台に一列に並び、手を繋いで一礼する。パフォーマンスの熱気に包まれた観客達が――九人の少女達と同じ制服から考えて同じ学校の生徒だろうか――歓声と幾多の指笛で祝福する。思わずシンも、自然と手を叩きそうになる衝動に駆られた。
「やっぱり何度見てもいいね……! 復活してくれて本当によかったよね!」
「そうね、ナナカさん……。本当に、本当に素晴らしい歌と踊りだったわ……!」
「初めて見ましたけど、すごいんですね! これがスクールライバルですね!」
「スクールアイドル、ね」
「スクール……アイドル?」
 動画が停止し、ナナカ達はやや興奮気味に感想を話す。だがシンだけは、聞き慣れないスクールアイドルという単語に首を傾げた。
「咲良君、スクールアイドルも知らないの?」
「うん。何それ? 今有名な歌手の人?」
「あー……そっか、シンはあんまりインターネットとか使わないもんね」
「僕の家にはパソコンがないからね……」
「今、色んな学校でスクールアイドルっていうのを結成して、今の人達みたいに歌ったり踊ったりするの」
「聖沙が所属している聖歌隊みたいなものですか?」
「それとはちょっと違うわね……。何て言ったらいいのかしら……」
「自分達の学校を盛り上げたい、っていうのが目的なのかな……? 多分スクールアイドルによって結成の動機や理由は違うと思うんだけど」
「学校を盛り上げたい、ですか……」
「それでね、今の動画のスクールアイドルは自分達の学校の廃校を阻止するために自分達でスクールアイドルを結成したの。入学希望者が年々減り続けてて、学校を無くすことになりそうだったんだって」
「でも学校がなくならずに済んだんですよね!」
「そうそう! 学校を盛り上げて入学希望者が増えたんだって!」
「そ、それはすごいね……」
 まるで自分達の学校の問題であるかのように、ナナカとロロットが嬉しそうに説明を補足した。
 入学希望者の減少による廃校。シン達が通う流星学園には縁遠い問題ではあったが、廃校阻止まで辿り着くまでの彼女達の苦難が、大変の一言で片付けられるようなものではなかったことくらいは想像が付く。練習と活動の多忙さだけではなく、常に廃校の重圧と戦ってきたのだろう。
 シンは停止した動画のタイトル画面に目をやる。彼女達はどこの学校の生徒なのだろうか、と情報を探したのだが、そこには学校名はなく曲名だけがぽつんと記されているだけだった。
「ナナカ。この人達はどこの学校の人なの?」
「音ノ木坂学園ってとこだよ」
「うーん……僕は聞いたことがないや」
「流星学園から電車を使えば一時間くらいで行けるよ。けど、流星町に住んでて音ノ木坂学園に通うっていう人はあんまりいないみたいだね」
「流星学園に通わないとしても、隣駅に見星坂学園がありますもんね」
「会長さん! 私達もスクールアイドルを結成しましょう!」
「と、唐突な提案だねロロット……」
「私もこんなキラキラした場所でお歌を唄いたいです!」
「ロロットさん、私達は流星学園の生徒会役員なんだからスクールアイドルなんてできないわよ」
「それにアタシ達は魔族退治もしなきゃいけない流星クルセイダースでもあるんだかんね」
「それじゃあ歌って踊って魔族を退治するスクールアイドルになればいいんですよっ!」
「そ、そんな簡単に魔族退治ができるとは思えないんだけど……」
 自分達がミュージカルの演者になって変身し、霊術を行使して魔族を退治する光景を思い浮かべ、シンは嘆息した。流麗なダンスを披露したとしても、その隙に魔法で攻撃されるだけだろう。
「ま、アタシ達じゃなくても流星学園の生徒の誰かがスクールアイドルをやろう、っていつか結成するんじゃない?」
「それじゃあさっちんさんや巫女さんやエミリナにやってもらいましょう!」
「絶対紫央はやらないと思うわ……」
「さあ、みんな。そろそろ生徒会活動を始めよう。時間、なくなっちゃうよ」
「じゃ、アタシはパソコンを戻しておくよ」
 普段のように長々と雑談が長引きそうなタイミングを見計らい、リアがスクールアイドルの話題を止めてシン達を生徒会活動へと戻した。聖沙、ロロットが席に着き、リアは日本茶の準備を始める傍らで、ナナカが今まで使っていたノートパソコンの電源を落とし、隅のテーブルへ移動させた。
「そういえば、どうしてみんなでスクールアイドルの映像を見てたの?」
「アタシ達がずっとファンだったスクールアイドルが、最近になって活動を始めたの。なんかちょっとトラブルがあったらしくて、ラブライブ出場も辞退しちゃったんだよね」
「ラブ……ライブ?」
「スクールアイドルの大会みたいなやつなんだってさ。けど、復活して久しぶりに学校の講堂でライブやってさ、その映像がやっと見れたんだよね」
「へー……そうだったんだ」
 ナナカの説明を聞いていてもいまいち事情が掴めなかったが、生徒会の皆が応援しているスクールアイドルが復活したという簡単な結論で納得しておくことにした。
「それじゃあ、生徒会活動を始めるわ」
 ナナカも席に着き、リアが全員にお茶を用意してから、シンよりも先に生徒会副会長である聖沙が音頭を取った。ふふん、と勝ち誇った微笑を浮かべた聖沙がこちらを一瞥したが、今回シンは唯一の遅刻者だったため、あえて口を開かずに聖沙に譲る形にしたのだった。
「それじゃあ……」
 だが、聖沙が主導して生徒会の議論が始まろうとした時だった。
『おはよう、生徒会の諸君』
 ガチャリ、という重厚なスイッチが押される音と共に、テープが巻き取られる音と共に厳かな雰囲気を漂わせた女性の音声が流れてきた。いつの間にか生徒会室の隅に設置された古いテープレコーダが、どういう仕掛けがあったのかは知らないが再生を始めていたのだった。
「ひ、久しぶりにこの仕掛けが……」
「もう、お姉ちゃんったら!」
「びっくりしました……」
 突然大きな音声が流れ、生徒会室にいた全員の肩が一度だけ小さく震えた。だがすぐにナナカ達の表情が苦笑へと変わる。最近ご無沙汰の悪戯ではあったが、その人物が流星学園理事長であるヘレナということは全員が分かっていたからだ。
「またアタシ達に仕事かな?」
「大変な指示じゃなければいいんだけどね……」
「きっと美味しい物が食べられるチケットが用意してあるんですよ!」
「でも、最近私達は特別な活動をしてるわけじゃないわよ……?」
「お姉ちゃんのことだから、また厄介な問題を私達に押し付けてくるんじゃ……」
 豪快であり、かつ破天荒な性格のヘレナが今回は何の指示を下してくるのだろう。五人は各々あれこれと内容を想像しながら音声の続きが再生されるのを待つ。テープレコーダーの再生が始まった時は、ヘレナの挨拶→指示の内容→自動的に消滅する→本人登場、というのが恒例になっているため、基本的にシン達はじっとテープの続きに耳を傾けることしかできないのである。
 だが、しばらく待ってみてもヘレナの声は聞こえてこなかった。再生が止まったのだろうか、とシンが立ち上がって様子を確認しようとした、その時だった。
「どっかーん!」
「うわああああぁ!」
「きゃあっ!」
 気配を感じさせることなく、突然ヘレナが大声を出して姿を現した。完全に意表を突かれたシン達の口から思わず絶叫が漏れた。
「び、びびびび、びっくりしました!」
「お姉ちゃん! 驚かせないでよ!」
「先入観に捉われているようじゃ、まだまだ甘いぜお前達……」
 クールに言い放ったヘレナは、人差し指と中指で何かを挟んでいるようなジェスチャーをして口元へと近付ける。どうやら葉巻を吸っているという設定のようだった。
 理事長であり、自分の姉であるヘレナが登場し、リアは距離を取るようにして胸元に手を添えながら一歩下がった。妹であるリアの豊満な胸を弄ることが趣味となっているヘレナが、悪戯をしようと飛びかかってくるのを警戒しているようだ。
 だが、普段ならばその警戒を掻い潜って背後に回り好き勝手リアの胸を揉みしだくヘレナだったが、今日はすぐに理事長としての凛々しさを感じさせる表情を浮かべた。
「あれ、ヘレナさん……?」
「ちょっと今日は忙しいから、手短に用件を伝えるわ。ちょっとシンちゃん達にお願いしたいことがあるのよ」
 生徒会室の窓際まで移動すると、ヘレナは腕を組んで真剣な口調で言う。忙しいのならばテープレコーダーの仕掛けを用意せず直接生徒会室の扉から入ってくればよかったのではないか、と口にしそうになったが、余計な発言で話を脱線させるのも嫌だったのでシンは黙っておくことにした。
「アタシ達にお願い……?」
「そう。シンちゃん達に頼みたいのよ。ちょっと申し訳ないんだけど、ね」
「は、はぁ……」
 両手を胸元で合わせると、ヘレナは珍しく謝るような素振りで話し始めた。
「実はね、四日後に急遽流星学園でちょっとしたイベントを行うことになったの。その準備をシンちゃん達にも手伝って欲しいのよ」
「四日後……? 流星学園で何か行事があったかしら?」
「キラフェス、じゃないよね? 聖夜祭にはまだ早いし……」
「きっと焼き芋大会ですよ!」
「そんな行事はないよ、ロロットちゃん……」
「えーっと……」
 シンは制服の胸ポケットから生徒手帳を出し、行事カレンダーを確認する。だがヘレナが言った四日後の日はただの土曜日であり、欄は空白になっていた。
「何もないみたいですけど……」
「実はその日、音ノ木坂学園のスクールアイドル、μ’sを招待してライブをやってもらおうって思ってるのよ」
「μ’s!」
 その時、ナナカと聖沙が驚いて勢いよく立ち上がった。
「みゅー……ず? 薬用石鹸? 僕の家に確か試供品が……」
「そそそそ、そうじゃないよシン! μ’sだよ、μ’s!」
「さっき咲良君も映像を見てたでしょう! あの人達が音ノ木坂学園のスクールアイドル、μ’sなのよ!」
「そ、そうだったんだ……」
 鋭い剣幕でナナカと聖沙に怒られ、シンは思わずたじろいだ。
「本当なの、お姉ちゃん?」
「み、聖沙聖沙! μ’sだって! μ’sがうちの学校にくるんだって!」
「嘘……じゃないわよね……ほ、本当なんですね、ヘレナさん!」
「さすがに私も生徒に余計な期待をさせて突き落とすなんて真似はしないわ」
「アタシ達、すっごい近くでライブを見れたりするのかな!」
「楽しみですね! 私もリノリウムを振ってみたいです!」
サイリウム、ね……」
「μ’sのライブが間近で見られるなんて……」
 熱心なμ’sファンである聖沙達の傍で、スクールアイドルに関して丸っきり無知なシンは一人疎外感を覚えていた。感覚としては、有名人を学校に招く、というのが近いのだろうか。漠然と、きっと嬉しいことに違いないのだろう、というのは分かるのだが、歓喜と興奮を共有する、という段階には至れなかった。
「……で、でもどうして流星学園にμ’sを招待するんですか?」
 憧れのヒーローに会えることを楽しみにする子どものように目を輝かせていた聖沙だったが、ヘレナが用意したサプライズイベントにようやく疑問を抱いた。
「個人的に私がμ’sのファンっていうのも勿論あるんだけど、音ノ木坂学園の理事長とはちょっとした知り合いなのよ。昔の恩師、ってところかしらね」
「ってことは、向こうの理事長さんも流星学園出身なんですか?」
「大学みたいなところでお世話になった、ってところかしらね」
「は、はぁ……」
 ヘレナの要領を得ない話にシンは大雑把にしか理解できなかった。曖昧に説明をぼやかせているところから考えると、ヘレナが大学時代に講義を受けた、という単純なことではないのだろう。だが、謎多き理事長へレナのことを今更詮索する気にもならず、シンはとりあえず話の続きに耳を傾けた。
「音ノ木坂学園が廃校になりかけた、って話は知ってるわね?」
「それで生徒達がスクールアイドル、μ’sを結成して学校を盛り上げて廃校を阻止したんですよね! 最初は三人だったけど、七人とメンバーが増えて、最終的には今の九人になって」
「随分と詳しいわね、聖沙ちゃん」
「聖沙ってば、月刊スクールアイドルを買ってるもんね。毎月二十日に」
「な、なな、なんでナナカさんが知ってるのよ!」
「だって毎月買ってるじゃん。その日だけはいつもより早く生徒会活動を切り上げて本屋さんに直行してるしさ」
「み、見られてたなんて……」
 秘密が暴かれて聖沙がよろよろとくずおれた。恥ずべきことではないような気がするが、シンが余計な事を口走ると火に油を注ぐことになりかねないので、じっと黙っておくことにした。
「一応廃校は阻止できて来年度の新入生募集は行われることになったわ。そして、そのままラブライブに出場して、更に音ノ木坂の名前を全国に知ってもらおうっていう風になりかけていたみたいなんだけど、ね」
「出場を辞退しちゃったんだよね。ラブライブの出場はアタシも楽しみにしてたんだけどな……」
「そうね。ちょっとトラブルがあったみたいなのよ。メンバー間の問題っていうのかしら」
「……そういえばさっき、トラブルがあったから出場できなかったってナナカも言ってましたけど、ヘレナさんは理由を知ってるんですか?」
「知ってるわよ。向こうの理事長から話は一通り聞いてるもの」
「どうして出場しなかったのですか?」
「それはちょっと言えないわ。というよりも、本人達にもあまり触れないであげて。誰にだって人には言いたくないことってあるでしょ?」
 ヘレナはやんわりとはぐらかすと、何故かシンに軽いウインクを送った。
 話したくないこと。明かせないこと。それは魔王であったことを長く仲間達に隠していたシンにとって、少しばかり耳が痛い話だった。結果的にはただの杞憂に終わった問題ではあったけれど、今までの関係が一瞬で瓦解してしまうのではないかという怯えは今尚忘れることはできていなかった。
 μ’sの皆の事情を詳しく知らないが、ラブライブへの参加辞退の理由は興味本位で尋ねるような話題ではないようだ。シン達も、そしてヘレナに訊いたロロットも、それ以上疑問を掘り下げるような発言はしなかった。
「ま、色々あったけどμ’sは無事に復活して冬のラブライブ出場を目指してるみたいよ。でも、ちょっと困ったことになってるみたいで、ちょっと手を貸してあげようって思ってね」
「困ったこと?」
「復活したのはいいけど、ライブができるタイミングがないのよ。もう音ノ木坂学園は文化祭も終わっちゃったみたいだし、復活を印象付けるイベントがないってわけ」
「だから、流星学園に招待してライブをお願いするってことなんですね!」
「そういうことね。うちの学園にはスクールアイドルもいないし、結構ファンも多いみたいだからね。ここで一発、どかーんと派手なライブをすれば全国に復活を印象付けられて一気に順位も上がるんじゃないかってわけなのよ」
「あ、あのへレナさん、ちょっといいですか……?」
 板書していたわけではないが、ヘレナが熱のこもった企画説明を終えてシンが一つの質問を挟む。大々的にライブを行うことで全国にμ’s復活を知らせるというのはいいのだが、無視できない一つの問題が目の前に立ち塞がっていた。
「四日後にライブをやるっていうのはいいと思うんですけど……どこでやるんですか?」
「流星町の人達も入れるようにしたいから、フィーニスの塔の前の広場に仮設ステージを用意しようって考えてるわ。やっぱりライブっていったら野外ライブよ! どこかにテントを作って、そこでビールの販売もやったら最高よね!」
「お姉ちゃん、学校で飲酒の販売なんてダメだからね」
「いいじゃない、フェスよフェス!」
「そ、そうじゃなくて……仮設ステージを作るにしても、四日で組み上げるってちょっと厳しくないですか?」
「四日後って土曜日だけど、それまではずっと授業があるわけだからちょっと厳しいわ」
 生徒会室の壁に貼ってるカレンダーを見ながら、聖沙も不安を漏らした。
 キラフェスの時と違い、生徒会が主導するイベントとなると生徒会役員だけでは人手と時間が圧倒的に足りない。それにステージを一から組み上げるとなると、設営のノウハウを調べるところから始めなければならない。少なくとも、専門的な知識と技術を持つ人間が数名必要になってくるはずだ。
「大丈夫よ、シンちゃん。設営の技術者はちゃんと流星町の人に協力を得てるわ。人手に関してもちゃんとクリアしてるわよ」
「どこかの会社に依頼してるんですか?」
「流星学園が誇る屈強な運動部員達が手伝ってくれるそうよ。ステージ前列を約束したら、喜んで手伝うって百人規模で希望者が集まったわ」
「百人って……そんなに希望者が集まったっての……?」
「で、でもヘレナさん。運動部だって放課後は部活があるんじゃ……」
「μ’sの熱心なファンが多くてね。部活なんて後回しにするみたいよ」
 それでいいのだろうか、流星学園の運動部員達は。
「というわけだから設営に関しては問題ないわ。シンちゃん達に頼みたいのは、全体的な指揮を取って欲しいのと、明後日にうちを下見に来るμ’sの人達に学園の案内してあげて欲しいのよね」
「μ’sの人達をアタシ達が案内していいんですか!」
「やります! やらせてください、ヘレナさん!」
 再度立ち上がって身を乗り出したナナカと聖沙が二つ返事で快諾する。
「ちょっと待ちなさい。生徒会長はシンちゃんなんだから、ちゃんと話し合って意見をまとめなさい」
「咲良君! 断ったりしないわよね!」
「シン! 絶対やった方がいいんだかんね!」
「あ、うん……えーっと……」
 半ば脅迫に近い形でナナカと聖沙が迫る。シンは苦笑いを浮かべながら、先程ノートパソコンで見ていた映像を思い出していた。
 名前も知らない女の子達が歌い、色とりどりのサイリウムを振る音ノ木坂学園の生徒達は笑みに包まれ、講堂は一体感に包まれ輝かしいステージとなっていた。スクールアイドル、μ’sの九人も最高の笑顔で、自分達が研鑽を積み上げた歌と踊りを披露していた。その姿に目を奪われ、シンは言葉を失い歌声に聞き惚れていた。
 だが聖沙達からμ’s結成の事情を理解し、シンの中で少しだけ見方が変わっていた。
 廃校という方向性が出てきたということは、音ノ木坂学園の入学希望者はほぼ絶望的といってよかったはずだ。それなのに、彼女達は自分達の力でスクールアイドルを立ち上げ、そして母校のために活動を続け、望んだ未来を勝ち取ることができた。
 しかし、望んだ未来を勝ち取るための努力と熱意は並大抵のものではなかっただろう。日々の練習の厳しさまでは分からないけれど、あの講堂でのライブ映像を見ているだけでも遊び半分の活動ではなかったはずだ。
 それでも、彼女達は笑顔だった。分かりやすく言うなら、μ’sの九人は人々の心を魅了するくらいにキラキラしていた。学校は違えど、それはシンが生徒会発足時に立ち上げた公約の一つの形のように思えた。
 だからこそ、そんな彼女達に会いたいと思った。キラキラのステージを間近で見たいと思った。自然とシンの心が弾み、ワクワクする高揚を抑えられなかった。
「……うん。僕達でμ’sのお手伝いをしよう。キラキラのライブにしてあげよう!」
「おー!」
 こうして流星生徒会は、他校のスクールアイドルの窮地を救うための一歩を踏み出したのだった。

ラブライブ×クルくるSS 

「おっはよー!」
 長い長い階段を駆け上がりながら、穂乃果は音ノ木坂学園の生徒達に挨拶を交わしていく。クラスメイトだけでなく、大勢の上級生、下級生からも声をかけられるようになったのは、一週間前の講堂でのライブによる影響だろう。あの日以来、穂乃果達に声を掛ける生徒が劇的に多くなっていた。
 という嬉しさを抱えつつも、今日も寝坊をしたせいで先に登校した海未に後で怒られるんだろうなぁ、という少々の陰鬱さを感じざるを得なかった。けれど、きっとことりが上手くフォローを入れてくれるに違いない、とそんないつもの教室での風景を思い出し、穂乃果は最後の階段を昇った。
 音ノ木坂学園の正門前。信号を待ちながら、正門に入っていく生徒達の後ろ姿を眺めながら、穂乃果は不意に先週までの大変な騒動を思い出していた。
 自分の無茶が原因で大失敗に終わってしまった学園祭でのライブ。それが原因で引き起こされた、ラブライブの出場辞退とことりの留学問題。そして、責任と自己への呵責によるμ’s解散の危機は、何か一つでも間違っていたら現実になっていただろう。もしそうなってしまったら、と考えると、こうして笑顔で挨拶をして登校する日常はなくなっていたのかもしれない。
「本当に、反省しなきゃね……」
 自分を戒める言葉は、目の前を通り過ぎたスポーツカーのエンジン音によって掻き消された。
 ことりを引き止めた日に行われた講堂でのライブ後、穂乃果達九人はすぐにその足で理事長室へと向かい、全員で頭を下げに行った。服飾の勉強をするために海外留学を決めていたことりを引き止めたことへの謝罪をしたのだ。
 荷物も郵送し、異国の地で世話になる下宿先の準備も完了していたにも関わらず、その直前になって全てを取り下げたというのは、女子高生には想像もできないような多大な迷惑を広げることになった。それは金銭的な問題だけではなく、ことりの母親である音ノ木坂学園の理事長の信頼をも傷付けることになっただろう。
 普段温厚な理事長も、今回の一件には厳しい叱責に加えてμ’sの活動を長期間停止する措置を取るかもしれない、と思っていた穂乃果だったが、理事長は苦笑混じりにやんわりと叱るだけで音ノ木坂学園アイドル研究部が謹慎処分を受けることはなかった。
 あまりにも軽すぎるこの処罰に関して、生徒会副会長である希が後日こんなことを教えてくれた。
「理事長も、音ノ木坂学園が存続することが決まったのを、うちらに感謝してるみたいなんよ。だから今回の一件を許してくれたんわ、きっとそのことに対する温情も含まれてるんやろね」
 勿論希も理事長から直接話を聞いたわけではなく、それが本当かどうかは穂乃果達には分からない。ただ、謝罪をした時に見せた理事長の苦笑には、そんな意味が込められていたのかもしれない。
「……頑張らないと!」
 信号が青に変わったのを確認して、穂乃果は正門へと歩く。静止していた夢に向かってもう一度進んでいくために、九人が手を携えて進んでいかなければならないのだから。
 校舎に入って上履きに履き替えた後、穂乃果は二階の自分の教室を目指す。すれ違う友人達に挨拶をしながら、一度は手放してしまった新たな夢について考える。
 ラブライブ出場。穂乃果が無理を貫いて倒れてしまったことが原因で消えてしまった夢は、可能性までもが完全に消滅したわけではない。全国のスクールアイドルが集う一大イベントは年に二回開催されるため、夏の出場機会を逃したμ’sには冬の参加に最後の望みが残されているのだ。そのために、再びアイドル活動を始めてランクを上げていかなければならない。
「うーん……」
 だが、穂乃果の頭を悩ませる大きな問題がある。それが、ライブを行う機会と時期である。失敗に終わった学園祭でのライブの埋め合わせも兼ねてμ’sの復活を印象付けるために大きなライブを行いたいのだが、何時どこで開催するのか、という明確な方向を未だに決められずにいた。
 講堂でのライブで復活したμ’sのランキングは、音ノ木坂学園の生徒達が全国のファンのおかげで一気に上位へと浮上した。だが、まだまだラブライブ出場の条件を満たす順位には到達できていない。
 どーんとやって、ぱーっと派手にやって、みんながわーってなれるようなそんなライブを行うためには、擬音混じりに抽象的な案が頭の中でぐるぐると回り始める。うーん、と小さく唸りながら視線を足元に落とし、そして踊り場に到着した時、唐突に頭に何かがぶつかり、後ろに倒れそうになったのを抱き留められた。
「うわっ!」
「ちょっと穂乃果。ぼーっとしてちゃだめじゃない」
 音ノ木坂学園の生徒会長であり、μ’sのメンバーである絢瀬絵里が目の前に立っていて、穂乃果は目をパチクリさせる。
「え、絵里ちゃんが瞬間移動してきたっ!」
「何言ってるのよ。ずっと穂乃果の名前を呼んでたのに全然気付かなかったじゃない」
「あ、あれ……そうだっけ……?」
 どうやらライブの事に傾注しすぎて周りの声が聞こえなくなってしまったらしい。学園祭でのライブで倒れてしまった時、もう少し周りを見るように、と教えられたはずなのに、悪い癖がまだ無意識の内に顔を出してしまったようだ。
「ご、ごめんごめん……ちょっとライブのことを考えてて」
「そのことなんだけど、ちょっと穂乃果に話したいことがあって探してたのよ。今ちょっと時間あるかしら?」
「話って……もしかして、いい案があるの!」
「それも含めて全部話すから、生徒会室まで付いてきて」
 意図的にこの場で全てを明かすことなく、少しだけ小悪魔的な笑顔を見せて絵里は階段を昇って三階にある生徒会室へと向かう。その後を、穂乃果は胸にいっぱいの期待を詰め込んで追いかける。今日の絵里の雰囲気から見て、穂乃果達にとって何か素晴らしい案が出てきたに違いない。
 掲示板にある様々な張り紙を横目に、今度はどんな告知のポスターを飾ろうかと頭の中で空想を走らせながら、絵里と穂乃果は生徒会室に到着し、入室する。以前までは生徒会室なんて入りにくい場所だと思っていたのに、μ’sとしての活動を続け、絵里と希が加入してからは何の抵抗も入れるようになったなー、と勝手知ったる私室に入るような気分で中へ進んでいくと。
「あれ、海未ちゃん?」
「きたみたいやね」
「……また寝坊ですか?」
 タロットカードを手にした希の隣に、やや眉間に皺を刻んだ海未の姿があった。あはは、と穂乃果が曖昧な笑みを作ると、海未は諦め半分のため息をついた。
「あれ、ことりちゃんは?」
「一時間目の物理の授業で使う資料を取りにいっていたので、私だけ来たんです」
「希ちゃん。私達だけの秘密のお話?」
「昼休みにみんなにちゃんと話すつもりよ」
「穂乃果と海未をたまたま見かけたから、先に話そうって思っただけなの」
 絵里が生徒会長の低位置である中央奥の椅子へ座り、穂乃果は海未の隣の椅子へ腰掛ける。そして、机の上に丁寧に詰まれた資料の一番上、淡いピンク色の封筒を手に取ると、絵里は穂乃果に手渡した。
「これは……?」
「理事長に届いた、昔の知り合いからの手紙らしいの。ちょっと読んでみて」
「私達がそんな大事な手紙を読んで構わないのですか?」
「勿論理事長は目を通しているし、読んでいいって許可ももらっているわ。それに、読んでもらえれば分かると思うけど、内容は私達に関係してるものだからね」
 ふふっ、と絵里は楽しそうに微笑む。中身を知らない穂乃果がちらりと隣を一瞥すると、目が合った海未は小さく首を傾げていた。どうやら海未もまた手紙に目を通してはいないようだった。
「穂乃果、開けてみましょう」
「そうだね。何が書いてあるんだろう……?」
 可愛らしいキリンのシールを丁寧に剥がし、中に入っていた手紙を広げる。細いボールペンで記された手紙には、書道有段者が書いたのか思わず見惚れてしまうような達筆で記された字が並んでいた。
「うわぁ……すごいキレイな字だね」
「これは見事ですね……」
 小さい頃から書道を習っている海未も感嘆の声を上げる。海未が手放しに賞賛するということは、この手紙を書いた人物はかなりの腕前の持ち主なのだろう。
「ですが、なんだか内容は随分と対照的ですね……」
 ただ、読書は漫画が基本な穂乃果は一瞬眩暈を起こしそうになるような活字なのだが、よくよく読んでみると文面は書体に似合わずかなりフランクなものだった。文頭の理事長の名前の後に続く言葉が、時候の挨拶などではなく『はぁい、元気してる?』なのである。
 アンバランスな字の質と内容を可笑しく思いながら、穂乃果は海未と共に読み進めていく。そして、最も重要な一文は手紙の末尾に書かれていた。
『そういうわけだから、うちの学園でμ’sにライブをしてもらいたいんだけど、どうかしら? 舞台のセットや宣伝、その他の雑事は勿論うちの方から人手は出すわよん』
「絵里ちゃん、これって……」
 穂乃果が顔を上げると、絵里と希は小さく首肯して微笑んだ。
 階段の踊り場で絵里が覗かせた、少しだけ嬉しそうな表情。
 それは手紙の最後に書かれていた一文、それはμ’sへの依頼の内容だった。
「すごい! 私達、他の学校からオファーがきたよ!」
「ほ、本当に……私達の……」
 今までランキング十九位まで上り詰めた実績はあったけれど、こうしてライブのオファーが来るのは初めてだ。思わずその場で飛び跳ねてしまいそうな穂乃果とは対照的に、海未は手紙の内容が信じられないといった様子で茫然としていた。
「で、ですが……何かの悪戯だというようなことではないのですか……?」
「真実か疑ってしまうような文章やけど、依頼は本当みたいなんよ。うち達も最初は信じられなくて、理事長に何度も確認したからね」
「というわけなのよ。どう、穂乃果? μ’s復活ライブの舞台としてはいいんじゃないかしら?」
「うん! うん! そうだね、是非受けようよ!」
 穂乃果は迷わず頷く。ライブの機会を探していた穂乃果達にとっては、まさに渡りに舟のオファーだ。昼休みにメンバー全員に話すと言っていたが、おそらく反対する人はいないだろう。
 一瞬にしてやる気が体の底から湧き上がり、今からでもライブのために動き出したいという衝動に駆られる。だが、海未は穂乃果が机に置いた手紙に再度視線を落としてじっと黙り込んでいた。
「どうしたの、海未ちゃん? ライブができるんだよ?」
「それはそうですが、どこの学校からの依頼かと思って……」
「一番下に書いてあるわ。理事長さんの名前の隣を見て」
 立ち上がった穂乃果は海未が手にしている手紙を覗き込む。最後の行の端に、有名人のサインを意識したような筆記体のような文字がある。その隣に、見たことのない学園の名前が記されていた。
「えーっと……ながれぼし学園?」
「りゅうせい、と読むんです」
「海未ちゃん、知ってるの? この近くにある学園なの?」
「ここから電車で一時間弱といったところでしょうか。弓道の大会で一度行ったことがあります」
「へー……」
 流星学園。穂乃果にとって未知な学校であり、そもそも共学か女子校なのかも分からない未知のステージでライブを行う、μ’sの初の遠征である。
 不安はあった。馴染みの地を離れるという遠征の地でのライブは大きな重圧を背負うことになるかもしれない。だがそれ以上にワクワクする心の躍動を穂乃果は抑えることができなかった。
「やろう! 私達の復活ライブを、流星学園で!」

大図書館の羊飼いSS 「図書部と魔法の妖精」

 一月。正月休みも終わり、徐々に汐見学園の授業も学期末試験に向けての内容に変化しつつあった。この時期になると、普段授業に出席しない生徒達がノートの貸し借りに動き出し始める。実際、図書部一年生の鈴木佳奈と御園千莉は部室にてお互いのノートを真剣に書き写していた。
「まったく、一年生コンビは不真面目ですこと」
「高峰先輩、邪魔しないでください。気が散ります」
「私達、今は高峰先輩に構ってる余裕はないんです。鬼気迫ってるんです、うら若き一年生コンビは」
「分かった分かった。俺が悪かったですよ」
 軽い茶々を入れたつもりだったらしいが、佳奈と千莉に軽くあしらわれてしまい、少し寂しそうな表情を浮かべて缶コーヒーに口を付けた。
「授業に真面目に出ていない二人を咎めたいところではあるが、去年からのパンジービオラの世話を考えると怒ることはできないな」
 玉藻は広げていた扇子を閉じ、先端を口元へ当てる。不真面目な生徒には厳しい態度を取る玉藻も、さすがに去年からの図書部の活動を考えると一概に叱ることはできなかったようだ。
「うぅ……ごめんね、二人とも……。私ができることならなんでもするからね」
 そして図書部の中心人物である白崎つぐみが責任を感じ、申し訳なさそうに謝る。
「それじゃあ鈴木、白崎先輩の手作りクッキーが食べたいです。やっぱ頭を使う時は甘いもので栄養補給が大事だと思うんですよ」
「ただ白崎のクッキーが食べたいがために、この状況を利用しているだけだろう」
「てへっ、やっぱりばれちゃいます?」
「ほら佳奈。早く書き写すのを進めないと今日中に終わらないよ。まだ近代日本史と経済学が残ってるんだから」
「あ、ごめんごめん。次のページいって大丈夫だよ」
「ふふ、それじゃあ佳奈ちゃん達のために明日クッキー作ってきてあげるね」
「よし! そうと決まったら鈴木は頑張りますよ、えぇ!」
 つぐみとの約束を取り付けると、佳奈は瞳の奥に炎を燃え滾らせたかのように目を鋭くして一心不乱にシャーペンを走らせ始めた。人参を目の前にぶら下げられた馬、というのはこういうことを言うのかもしれない。
「で、筧は相変わらず勉強はしない主義ですか」
「いや、さすがに今回はちょっとそういうわけにもいかない。教科書を一通り読み直してノートも足りない部分を埋めないと成績を落としかねない」
「たったそれだけで成績上位を維持できる、ってのは逆に考えればすごいことだけどな」
「ああ……試験が近付く度に、筧に対して言葉にできない感情が沸いてくる……」
「理不尽だ……」
 口を尖らせる玉藻に、京太郎は肩を竦める。定期試験が近付くと、普段居心地がいい図書部の空気が途端に張り詰めるのはどうにかならないものだろうか。
 玉藻の視線から逃げるように、京太郎は文庫本に視線を落とす。久しぶりに推理小説を読みたいと思い、江戸川乱歩の本を探して読んでみているが、意外にこのチョイスは正解だったかもしれない。古きよき推理小説に戻ってみるというのもなかなかにいいものだ。
 緩やかに流れる時間に身を委ねながら、京太郎は一度窓の外に目をやり少し前までの激動の日々を思い出していた。
 昨年九月、沢山のパンジービオラを使って新入生を歓迎しよう、という一大プロジェクトが動き始め、それ以来図書部は目が回るような忙しい日々を過ごしてきた。必要な予算、道具、そして交渉と宣伝活動。部の皆がプライベートの時間を削り、各所に奔走してヘトヘトになった日は数え切れない程だった。
 だが、皆の士気が落ちることはなく、企画は軌道に乗った。一人一鉢プロジェクトという、多くの花の栽培に必要な土地と人材が一気に解決したためだ。初めは花の育て方についての問い合わせに答えるためにしばらく多忙を極める日々が続いたが、その疑問の解決すると一気に図書部の活動に余裕が生まれるようになった。花の栽培が難しいわけでもなく、ほぼルーチンワークとなったため、三の本格的な花の装飾、配列作業が始まるまでは緩やかな部の時間を確保することができている。
 ただ、少々だらけ始めた図書部の空気をつぐみと玉藻が放置するはずもなく、できる範囲で以前の活動を始めないか、という提案が昨日なされたのだ。定期試験も近いということを考慮して、なるべく時間を取られない要望に絞る、という前提で再びホームページでの募集が始まっている。
「玉藻ちゃん、どう? 何か相談事はある?」
「ああ、いくつかきているな」
「前までは相談掲示板は一時閉鎖してあったのに、こうやって書き込みがあるってことは豆に更新をチェックしてる生徒もいるってことだよな」
「興味を持ってここに来てくれる人が多くいるというのは喜ばしいことだな」
「けど、俺達がやらなくても問題ないだろ、って相談が多かったりしないか?」
 一景がうんざりしたように言う。重要案件が重なって断ったものもあるが、野球の球拾いや代打要員としてチームに参加して欲しい、という要望もあったな、と京太郎はぼんやり思い出していた。
「……ん? マンホールの数を数えるお手伝いをしてください、というのがあるな」
「なんだそりゃ? 重度のマンホール好きなんているのか?」
「珍しい人もいるんだねー……」
「多分それはアルバイトの一つだ。以前何かで読んだことがある」
 妙な掲示板の書き込みに疑問の声が上がる中で、京太郎は短く指摘した。
「そんなアルバイトが存在するのか?」
「雑誌か何かで読んだことがあるだけだ。設置されている感覚や、決められた区画に何個マンホールが存在するか、っていうのを調べるんだよ」
「ってことは、この依頼はアルバイトの手伝いをしてくれ、ってことになるよな?」
「却下だな、却下。私達の活動はアルバイトの手伝いをするものではない」
 図書部の活動は、基本的に無償でありお金を受け取らない、というのが基本的な方針のため、それに反する書き込みは玉藻はばっさりと切り捨てる。後回しにせず、玉藻は即座にメールソフトを立ち上げて返信作業を行った。
「こういう相談は大分減ってきたと思ったけど、まだいるんだな、こういう依頼を書き込む奴ってのは」
「どちらにしても、桜庭フィルターを突破できないんだから気にしても仕方ない」
「こういうのは容赦なく切っていくさ。まったく、図書部を何だと思ってるんだ……」
「おー……姫が久しぶりに立腹されておる……」
「高峰、その呼び方はやめてくれと言っているだろう……」
 一景の茶々に玉藻はうんざりしながらキーボードを叩く。それからすぐにマウスを左クリックする音が聞こえる。どうやら返信は完了したようだ。
「他にはどんな相談があるのかな?」
「これ以外にもう二つ……どれどれ、第一食堂アプリオから来ているな。これは依頼というよりはお誘いといったものだが……」
「え、アプリオからですか?」
 ここで反応したのは、無言でノートを書き写している佳奈だった。佳奈は朝にアプリオでホールとしてアルバイトをしているのだ。
「新作スイーツの開発にあたって、試食会を開くそうだ。お世話になっている図書部の皆さんの意見も聞きたいので興味がある方は是非参加してください、と書いてある」
「あ、これ嬉野さんが書いてくれたんだね」
「新作スイーツと聞いたら黙っていられないですね」
「桜庭先輩、何人までっていうのは指定はあるんですか?」
 時々怠ける佳奈を叱る役だった千莉も、この時だけは試食会の話題に食いついた。
「特にないが、あまり大所帯で行っても迷惑だろうな」
「なら、俺はパス。甘いものばっかり食べていると胸焼けを起こしそうだ……」
「俺もだ。こういうのは女子に任せる」
「では謹んでお受けすることにしよう。日時は明後日の金曜日、午後四時からだそうだ」
「よかった、私は授業ないから参加できそう」
「私も大丈夫そうです。千莉は?」
「平気。それまでに試験勉強を終わらせないとね」
 一年生コンビは明後日のスイーツ試食会を自分への御褒美と設定し、互いに頷き合って再びノートに向き合った。女の子って簡単だな、とぽろりと口から漏れそうになったが、余計な非難の視線をもらいそうだったので京太郎は言葉を飲み込んだ。
「で、最後の一つだが…………ん?」
「どうしたの、玉藻ちゃん?」
 その時、画面をスクロールさせていた玉藻の表情が曇った。隣に座っていたつぐみが画面を覗き込む。
 またアルバイトの手伝いといった、図書部の活動にそぐわない相談だったのだろう。京太郎は玉藻が内容を読み上げるのを待ちながら、千莉が書き写しているノートに視線をやる。この教科は去年、京太郎も取っていた授業だ。ならば勉強くらい見てやってもいいかもしれない、とぼんやり考えていた。
 だが、これから玉藻が口にした掲示板の書き込みが、ちょっと不思議な日々に図書部を誘う内容だとはこの時誰一人予想していなかった。
 静かに、やや厳かな雰囲気を漂わせながら、玉藻が言った。
「魔法の妖精を一緒に探してください、と書いてあるんだが……」