2010-07-25
キラキラ
「私じゃだめですか?」と、透き通ったキラキラ全力な彼女の視線に、おれはもう、どうにかなってしまいそうになった。くらくらする。だめじゃない、まったくだめじゃない。けど、おれでいいのかしら。おれ、君にふさわしいって全然思えないよ。君をしあわせにできる自信もないよ。どうしたらいいのおれ。おれを見つめる彼女の瞳は、うるうるさを増してきていて、ああ、もうおれはおれはおれは。おれは彼女を抱きしめた。
なんてことが起きたら良いのになあ、と思っていたら本当に起きたのでおれはびっくりした。
「お姉様、私じゃだめですか?」
おれは彼女を抱きしめた。
2010-07-11
魔法使い
彼女、わたしの同僚の霧島彩さんは、ちょっとだけ変わっていると思う。もちろん、これはいい意味でなんだけれど、変わっているっていう表現を使ったのは、わたしがごく普通の女性に分類されていて、わたしが出来ないことを彼女が平気で出来ちゃうからだ。こんな風に、自分と違うことをする人を変わっている人扱いするのは、良くないことだと知っているけれど、ついしてしまうのは、本当に困ったこと。
彼女は、普通は嫌がって当たり前の、男性社員からのお茶汲み依頼を、とてもやさしい笑顔と共に、引き受けたりもする。わたしには到底出来ない。わたしだったら、一時間くらい文句を言う。たぶんきっと間違いなく。たぶんこれが当たり前のことだって思うけど、そうしない彼女が、何となく羨ましいって感じる。なんだか変だけど、彼女のことを、わたしがいい意味で変だって、思っている理由はそういうことだろう。
たまに、普段はおっとりしている彼女が、きりっとしている時がある。それは、花を生ける時だ。社内にある花瓶の花を生け変えたり、追加の水を差したり、入れ替えたり。そういったとき、社内にはとても新鮮な、いい香りが広がって、みんなの視線は彼女に向かう。彼女が行う一つ一つの行動に、何となくうっとりしてしまうのだ。もちろん、わたしも。
彼女が花を生け終わったとき、みんなはふと我に返ったみたいな顔をする。その日はなんだかみんな、魔法にかかったみたいになって、仕事がとってもはかどるみたい。わたしの仕事もはかどるから、なんだかとっても変。
ある時、わたしは酔っぱらって彼女に聞いた。「あなたは魔法使いですか?」って。そうしたら、彼女はうふふと意味ありげに微笑みながら答えた。
「誰しも、自分の唱えた魔法が何なのか、まったく気づけない。ただ、それだけのこと。人は誰しも、魔法使いです。なんてね」
2010-06-19
お知らせ
山田相子 |
ただいまサイトの全面改装作業を行っていますー。今月中(6月)には作業を完了させる予定です(もしかすると7月上旬まで延びてしまうかもしれないです。その時はごめんなさいです)。
定期的にサイトが表示されないことや、表示に問題が生じる場合もあるかと思います。その際には、大変ご迷惑をおかけしますが、改装作業中だということで、ご了承いただければ幸いですー(ぺこり)。
iPad/iPhoneのアプリiBookでの閲覧を想定した、実験的なePub形式ファイルです。たぶん、他のアプリとかでも見れるとは思うのですけれど、まだまだ勉強中なので自信がないです。
http://www.watakushi.info/murata.epub
現時点では、iTunes上にファイルをドラッグなどしてiTunesのブックに追加してもらい、ブックの同期をしていただき追加することで見ることができますー。とっても面倒なので、手軽に追加ができ、読むことができるようにしたいと考えていますっ。
また、今のところ本を読む感覚を味わえる以外に、サイト上でテキストを読むのとなんら違いがないので、もっとプラスアルファ(縦書きにしたりなど)ができるようにしたいと思います。がんばるです。
2010-04-29
イラストレーター募集
こんにちはー。お久しぶりですっ。山田相子です。
早速なのですが、このたび、サイトの全面改装ならびにiPhoneやiPad向けにePub形式でのサイトの更新データ配布のため、サイト上のイラストや挿絵などを描いていただけるイラストレーターの方を募集させていただくことにいたしました。
応募方法については、お名前、作品とともにメールを送っていただく形になります(メールの送り先は、この記事の最後に記載しているメールアドレス先です)。
作品については、作品のポートフォリオ、もしくは過去に関わった仕事が分かるもの、ウェブ上で作品を公開している場合でしたら、サイトアドレスなどです。送っていただいた作品を拝見させていただいて、サイトカラーや私の好みに合うかどうかで判断させていただく形になります。とても主観的な判断になりますので、仮に採用されなかったとしてもまったく気にされないでください(どの場合であれ、必ず返信いたします。1週間以上返信がない場合は、メールが届いてない場合などがありますので、その際はmelody@watakushi.infoに再度送っていただければ幸いです)。
主なコミュニケーション手段は、基本的にはメールになります。必要に応じて、柔軟に対応させていただきます。
ギャランティにつきましては、内容やスケジュールに応じて相談させていただきたいと思います。私は相場についての知識が無いので、もしも過去に商業的にイラストを描かれた経験などがありましたら、相談時に教えていただければ幸いです。
以上になります。また、ご不明な点などありましたら、ご気軽にメールにてご質問していただければ幸いです。よろしくお願いいたします(ぺこり)。
*
メールの応募先:「watakushi@watakushi.info」
件名は「イラストレーター募集について」でよろしくお願いいたします。
2010-04-11
魔法の砂
「魔法の砂なんだって、これ」
塩谷が持ってきた小さな瓶の中には、砂と言ってもトゲトゲしているものが入っていた。これって、星の砂じゃあ……。あたしはすぐさま、こいつ騙されたんじゃないの? と思ったけれど、言わないことにした。ひとまず、この人の話を聞いてからでもいいと思ったから。
「どうしたの? それ」
「なんかさ、さっき本屋からの帰り道にぶらぶら道を歩いていたら、露店を見つけて売ってあったのよ。美人のお姉さんが売ってた」
それはどう考えても怪しい。あたしもついさっき、本屋の向こうの喫茶店から帰ってきたばかりなのに、帰り道にそんな露店なんて見かけなかった。この人はまったく、どこをどうぶらぶらしてきたんだろう。それに、そもそも、露店を見つけたからって、砂を売っているような、そんな怪しい露店に寄ることなんて、普通しない。ましてや、美人ならなおさらだ。
そんな風にあたしが思っていることに気がついたのか
「いやー、お姉さんがさ、『そこのかっこいいバトラーさん、寄ってかない?』って、言うもんだから。おれ、ホント心底びっくりしてさ。いくらおれが執事服を着ているっていってもさ、バトラーって、普通言わねえよ、ほんと。びっくりした」
それはびっくりするけど、それで店に近寄るあんたにあたしもびっくりだよ! 頭の中ですごく思ったけど、我慢がまん。
「へ、へえええ。そ、それで寄ったの?」
「寄った。近づいたらやっぱりすごい美人さんで、そりゃもう。なんか生きててよかったなあ、本屋で『モテる歩き方』って本、立ち読みした甲斐があったかもなあ、うははは、とか思ったよ」
だめだこいつ。「そ、そう」
「で、お姉さんは、魔法の砂を売っててさ。まあ、そんなこんなで、お姉さんとお話しながら、これを買うに至ったわけなんだけれど、ともかく、これをみいちゃんにあげよう」
どうして買うに至ったのか、まったくわからない。それにあげようと思っている理由もまったくわからない。
「え、ど、どうして? よくわからないんだけれど」
「魔法の砂を持っているといいことがあるんだってさ。だから」
あたしはよくわからないけれど動揺した。だからつい口を挟んで
「だったらあんたが持ってたらいいじゃない。あたしはいらない」
「まー、えーと、その、なんというか。おれが持っててもなあ。おれは毎日いいことばかりだからなあ。うはは。みいちゃんに相ちゃん、二人と一緒に毎日楽しく仕事できてるし。うん。これは日ごろのお礼みたいなものなのよ。うん。いつもありがとう」
なんかよくわかんないけど、負けた気がした。
「う、相子のもあるんでしょうね。ちゃんと」
「もちろん」
「ちゃんとあげてよね」
「もちろん」
「……ありがと」
あたしは砂が入った小瓶を受け取りながら、何となく魔法を感じた気がした。








